異世界なんだからいるでしょうぉ? 異形頭のイケてる使い魔とか!
映画館いってきました。
こんな世界と嘆く聖女が一人。私だ。
「一人くらいいてもいいじゃなぁい!」
「いてもお出ししません」
「いけずぅ」
なんやかやあって異世界に来た私、連れてきた世界の代理人に今日も今日とて正当な要求をしていた。
「異形頭一人くらい調達してよぉっ!」
私は真正の人外スキーなんじゃぁっ!
私の嘆きは、はぁ、やれやれポーズで流された。なんなの。無表情能面顔のくせにおまえには呆れたというのがものすっごく伝わってくる。
異世界からやってきた聖女の欲望がこの世界のタービン回して、発電して世界を回すんだからっ! いいじゃないっ! 世界のためなのにっ!
という主張をすると冷たいまなざしがやってくるのを知っている。から、言わない。
言わなくてもお前ろくでもないこと考えてんな? という目線は来たのであらぬ方法を向いておいた。
「まず、異形頭って言い方どうなんですか」
「業界での正式呼称」
「業界って、あ、いいです。めんどくさいので」
「聞いてよ」
「真顔で性癖を語られるのきついんで。近頃、選択を間違えたかとよく思うんですよね」
「こんな危険性のない欲望なのにすてられちゃうの? 人外しか食べないのに」
「喰うな。
……ほんと、なんで、こんなのが聖女」
「暴言はんたーい!
それで異形頭の素敵なイケてるお方はいらっしゃるのかしら。女性、むしろ、女性を希望!」
「……はい?」
「元の世界の推しは、ランタンのお方でした。ああ、あの優雅な立ち振る舞い。素敵」
うっとりとしていると大変気味悪く見られた。
「お嬢様、とかいわれてはわわして、ずきゅーんされたい」
「いつもの数倍、頭悪そうですね」
「うっせー」
そう返したら、やつの口がにっと笑った。三日月のように割けた、みたいな。
……うーん。なにかきゅんとするものがあるが、なんだろう。
異世界の代理人。
人の形の……。
「魔女をご紹介しましょう。
お友達が欲しいと言っていましたし」
「同じ性癖の?」
「違います。慈善活動家です。悪い魔女に変えられてしまった者を元に戻しています。
まあ、ただではと試練を与えてますが」
「……マッチポンプではない?」
「厳密には違いますね」
この世界、わりと欲望ありなイキモノいない? とちらっと思ったもののそれで送り返されてはたまらない。
「お友達作戦行かせていただきますっ!」
「自分が、異形になるかもと思わないんですか?」
「え? それもおいし」
こいつほんと駄目だという顔をされた。
お隣のものが自分の好みど真ん中ということに聖女が気がつくまでには数年。
他所の異形にきゃーっとする聖女になんかむっとするという世界の代理人が色々自覚するにも数年。




