おどおど聖女が二度死んだら、
とりあえず、その番をぶっ飛ばす、から話始めていいですかね? ~二度殺されたので三周目は先にやりにいきます~
の微妙な続きです。女神様、大いに嘆く。
「端的に申し上げて、やつらは有害ですわ」
麗しき微笑みのままに、口にしていい単語ではない。
「そもそもしつけが必要ではないかしら。
番を選ぶのが本能というなら、人以下ということでしょうし」
少し困りましたわぁと言いたげだが、違う。
あたくしは、よぉく、知っている。
……あたくしのかわいいフリルちゃんは死んでしまった。かわいぃ、フリルちゃんがっ!
「うっさい」
小さく吐き捨てられたのにもショックだ。
「わたし、フリオニールは、ここに獣人国への宣戦布告をすることを支持します。
もちろん、先鋒はわたしに」
言いたいことを言い終えたあたくしの加護を与えし愛娘は、慈愛の微笑みを浮かべている。
最高に聖女だ。
言ってることがダメすぎるが。
どこがダメか。
まず、明確な敵対、相手に対する差別、そして、その結果の蹂躙まで織り込み済み。隷属化まで見通しているだろう。
悪夢だ。
誰もこれを予想していなかったに違いない。
微笑みを絶やさず、やさしく穏やかな少女という評で、この場に呼ばれたのも宣戦布告という事態を避けるため。
だというのに、積極的に、打って出るといいだしたのだから場も静まりかえる。
「わたしは、治癒だけが得意ではございませんよ」
実力を疑われたのかと首をかしげて、追加で言うが、強弓の使い手であることは知れ渡っている。飛ぶ鳥を打ち落とす趣味は皆に三度聞かれることだ。
目指せ、竜殺し、ですわ、というと冗談と思われるが、本気だ。
フリオニール、愛称フリルは、同じ人生三周目である。その途中でやさぐれた。
一周目、よくわからないけど頑張って聖女として、皆の役に立つようにしていたところに番認定され獣人の国に嫁がされる。冷遇される。毒殺。
二周目、冷遇されないようにものすっごい頑張る。でも、番の相手は冷たいまま。諦めて山奥にこもろうとしたら、毒殺される。
そして、三周目があの男、殺していいですか、からはじまった。そこから、ちょ、ちょっとぉと止めたが、フリルはストイックに鍛えはじめ、謎の才能と他の神からの加護も受けすくすくと戦闘聖女に成長。今に至る。
ただ、人相手にはこれまでの人生で培った色んなものを駆使し、穏やかな聖女という印象を崩さずにいる。
外面の良さよ……。
この国は獣人のいる国と接しているため、微妙な緊張関係が続いていた。獣人たちからみれば、人など弱いと下に見ており、逆に人からは資源のある土地を持つ煙たい存在。
なので、定期的にいっそ戦争する?という話が持ち上がっている。毎回、本気ではない。ただ、弱腰ともみられたくもないという形式的なもの。
なのに、フリルがぶっぱなした。
嬉々として。
なにせ、相手の王はフリルの番で、二度もひどい目に合わせた男だ。
首狩りに行ける。合法的に!
ここで盛り上がらなくていつ盛り上がるんだということだ。わかってたけど。
「きちんと首級をあげてまいりますわ」
ああ、あたくし、頭が痛いわ。もう、この子、どうしたらいいの。
「……今日はお開きにしようか」
困り顔の大臣がそう切り出した。なかったことにしよう。そうしよう。その気持ちわかるわ。
「今度使節がやってくる。その時は穏便にな」
釘もさすだろうが、逆効果。
表面上は殊勝な態度だろうが、よぉし、と喜んでいる。
この使節がきたときに、見初められたということになっている。一国の王がそういう擬態するのよくない、と思うけど。
いきなり殴りかかってこないだろうなと思っていたが甘かった。
「あら、わたしが番なの?」
微笑みに殺意が搭載されるなんて知らなかったな。
「なら、わたしのために、死んでくださる?」
番から逃げます(物理で倒してでも。むしろヤル)
というのは、番ものではない気がしているのです。




