麗しのディアナの謎。~家政本の作者の謎に迫るとなぜか国家機密と言われた件~
有能な家政婦というと出てくる名前がある。
ディアナ。
ある日、突然現れた彼女は優しく穏やかで、時に厳しく世の女性を導いた。一番重要なのは、しなやかに自由にあるということを教えたこと。
女性の自立に一役買ったと言われるほどの人物である。
ただ、その姿は謎のままである。
信者と言われるほどの熱烈読者を持つ彼女は、その原稿を渡す編集長以外に会ったことがない。
どれほど懇願されても人前に姿を現すことはなかった。王の呼び出しさえ断ったという逸話もあるくらいに、徹底していた。
最初の契約で、正体を明かさない約束をしており、反故にした場合、今後一切原稿を渡さず、本も断裁処分することになっていると出版社は言っている。
実際、彼女がコラムを寄せていた雑誌には何号かに一度はその文が掲載されていた。よほど会わせろの圧があるのだろうと察せられるほどだ。
その雑誌も創刊40年を迎え、廃刊が決まっている。その役割を終えたというのと編集長兼ディアナの代理人を務めていたものが引退するからだ。
ディアナの代理人は代変わりしている。一度目は、20年前。その時も廃刊の話があったらしいが、新しい代理人を立てることで免れた。
今回の雑誌の廃刊にあたり、ディアナも文筆業を廃業する。皆様へのお知らせという形で、大々的な広告をしていたので間違いない。
出版社へは多くの問い合わせと嘆願が届いたらしいが、ディアナ本人が望んだことと撤回されることもなさそうである。
さて、前置きが長くなったが、私、クリスタはこの謎の人物を追うことを任命されてしまった。
当事者がすでに老齢であり、すべての事実を語れる人がいなくなる直前である。今なら、弱っていて判断力も落ちていてうっかり話をしてしまうかもしれないと関係者にインタビューにいくことになった。
そこで選ばれてしまったのが私である。
新入社員の初々しさ、相手にとって孫ほどの年の差でも油断を誘うつもりとうちの編集長はあざとい。
生まれる前よりそこにいたディアナの偉大さというのは私にはわからない。ただ、母にだけその件をこぼしたら、本を片手に、サインしてもらってきてと言ったのでちょっと驚いた。そこからくどくどと失礼なことはしないようにと言い聞かされることになる。
女の子らしさというものは押し付けられるものでもないのよとおっとりと語っていた母がである。女性として恥ずかしくないふるまいをしなさいと言われるのは、ちょっとなんか変に思えた。
はいはいと返答はしたけど、母の言う女性らしさというのは、男を立てろとか従えとかいうものではなさそうである。
マナーや立ち振る舞いに気をつけなさいに近い。相手に媚びないで、でも、ちゃんとマナーも守りなさい、人として信用されるように、と。
信用されなければ、誰も話してくれないからという忠告は正しく、そのせいで王家のお姫様のお茶会に呼ばれてしまうのである。
というところから始まる、ディアナ様の謎の話が書きたいと思いながら死蔵しそうです。
ディアナ様に明確なモデルはいないですが、雑誌のほうは複数のモデルがあります。ごった煮ですが、レディースダイアリーの影響は強いです。あとオレンジページ。連載小説の掲載とかもあるのかなーと思うと読んでみたいような気がします。




