僕はちょろい男かもしれない
どこかのオークと飼い主がいちゃついているだけのなにか。
「トール」
「なに?」
「呼んだだけ」
という繰り返し。本日、10回目。数える僕もどうかしてる。
可愛がっていた豚が獣人と判明して、一年とちょっと、進化して僕よりも背の高いイケメンになった。何ということでしょう。僕のかわいいトンコツが、と嘆いたところで仕方ない。なんで、進化先に姫も女王もいるのに、なぜか、王になったのかについては疑問があるけどね。
ほんと、どうかしてる。
トールは私が守るからとニコッと笑うのがイケメン過ぎる。きゅんとするとかこれかと思っている場合ではない。
僕の好みは可愛いもの。
「トール」
「だからなに?」
「ん。呼べるのが嬉しいからごめんね?」
……可愛いじゃねぇか。
いやいやいや、僕よりトンコツのほうが大きいし、力強いし、なんなら、モテるしっ!
でもなぁ。豚のときでも僕より体積は多い気がしたし、強かったし、イケメンオーラ出てたからな……。
僕はなんか目つきの悪い人扱いだし。眼光鋭すぎて暗殺者かと思ったとか言われたことが何度か……。
「好きなだけ呼べば?」
「うん」
僕も別にトンコツが嫌いなんじゃないんだ。
ただ、こう、戸惑うだけで。
「トール」
「ん」
「好き」
……。
「さ、散歩いってくるっ!」
理性をかき集めて逃亡した。僕も好きだよと返しそうになった。その好き、方向性が違う。期待させるの良くない。
可愛いにサイズは関係ないというのは、のちに僕が理解した事実である。




