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続きそうで続かない短編倉庫  作者: あかね


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43/67

あたし天草、ベンチの上にずっと座っているの。人のいない海って静かね。

草魔法、旅先でのなにか。

 もうずっとだれもいないの。人のいない海って静かね。


「ちょっとぉ。迷子じゃなぁい」


「地図ではこっちのはずなんだけどな。町」


「海よ! 絶景だけど海よ! あたし海に漬かると枯れるの早く離れてお水につかりたい」


「でしょうね……。潮風でべたべたに……なんでベンチ」


「あら。ほんと。

 あ、灯台よね。あれ。壊れてるけど」


「半壊。廃墟感マシマシ」


 とてもうるさいのが来た。

 金色のもじゃもじゃと緑のもじゃもじゃ。触覚で歩くタイプの同類。


「え、じゃあ、お化け灯台?」


「なにそれ」


「ほら、前の町で、灯台が壊れて、船が大沈没。海が真っ赤に、って話。

 それからこの地では紫色のもじゃもじゃが」


「あるわね」


「はいっ!?」


「見た感じ海藻。藻類は、あまりお友達じゃないのよね。海の生物だし」


「え、話せる?」


「お静かにしていただけますか?」


「しゃべったっ! もじゃもじゃしゃべるよっ」


「あなた、葉っぱの固まりがしゃべっても動揺しないのに」


「あれは生首っぽくてきもいから」


「大概失礼よね?」


「ごめんなさい」


「べつに、よく言われたので」


 誰に言われたのだっけ? 今日も気持ちよさそうだねと隣に座ったのは誰だっけ?

 あの帽子は。

 あれは帽子だったかしら……?


「あの、町ってどっちかご存じですか?」


「人は、あっちからよく来ていたわよ。

 もうずいぶん、みていないから、あるかどうかはわからないけど」


「ありがとうございますっ!」


「あ、これ、地図逆に見てるじゃないっ!」


「あっれー?」


「これだから方向音痴は」


「人のこと言えないでしょ。山の中の引きこもり」


「うっさいわねぇ」


「あの、お静かに」


「すみません」


 すぐに2つ分の謝罪がやってきた。


「ずっと静かだったの。もう、うるさくしないで」


「ええ、わかりました。

 その、海に戻ります? 戻せると思いますけど」


「いいえ。わたしはここにいるの」


「それなら、ご長寿を願って、栄養剤を一つ」


「良く効くよ。ぴっちぴちに」


「……ありがとうございます」


「どういたしまして」


 騒がしいもじゃもじゃたちはそうやって去っていった。


「栄養剤、か」


 ちょっと舐めてみても……!? ひとなめで体が大きくなった。触手も元気になったし、増えた。一瓶使ったら?

 わたしは小さく笑って、残りは近くに撒いた。

 小さい花があちこちから生えてくる。長く時間をかければ土が見えないくらいに、花を咲かせるだろう。

 いつか、壊れてしまった灯台も覆い隠してしまうかもしれない。

 それまで、ここは静かに。

「で、もじゃもじゃがどうしたってのよ?」

「あー、あのね、灯台は壊れたんじゃなくて壊したんだって。

 海の向こうから敵の船がやってきてたから。でも、灯台壊されたら普通の人は困るじゃない? そこで行き違いがあって、灯台守は殺され灯台は壊れた。そして、ご近所の港町も衰退。自業自得」

「あのもじゃもじゃは?」

「衰退する前に再建の話が出たけど、紫のもじゃもじゃが必ず現れては再建の邪魔をし、呪いをかけるという話。よくわかんないけど、灯台守と親しかったんじゃない?」

「えー、そういう変態はあなただけでいいと思うけど」

「その変態の作った薬なんていらないわよねぇ」

「いります。ごめんなさい」

「ほんと懲りないんだから。

 ま、彼女か彼かはわからないけど、ずっとあそこで待ってるんじゃないかしら」

「待ってる?」

「転生ってのがある世界なんだから、灯台守が戻ってきてもいいじゃないかな」

「気の長い、期待薄な話ね」

「そういうの得意でしょ?」

「まぁねぇ。

 あ、あなたが死んでも待たないから」

「縁起でもない。というか先に死ぬと思うんだけど」

「……死なせてもらえるかしらぁ」

「今何か言った?」

「なんでもない」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 久しぶりに谷山浩子さんのアルバムを聞きたくなりました!
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