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続きそうで続かない短編倉庫  作者: あかね


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おまえなんか愛さないんだからなと宣言する夫(24歳)


「おまえなんか愛さないんだからな」


 そんなことを自棄のように言い放って、寝室から逃亡した夫。

 私はそれをあっけに取られて見送ってしまった。


「なにあれ」


 思わず、まだ室内にいた執事と夫の乳母である女性に尋ねた。


「その、なんとかします!」


 執事がはっと気を取り直してから猛ダッシュを決める。

 乳母は青白いを通り越して卒倒した。もちろん、放置することなく私が支えようとして、共倒れ。頭をぶつけた。


 痛みをこらえつつ見慣れぬ天井を見上げて、意味もなく叫びたくなった。


 どうしてこうなった!?



 我が家というのは貧乏で家柄だけは良かった。いや、なんていうかお人よしという鴨葱だった。それも筋金入りで、ご先祖さまの時代から常に貧乏、お金が入ると挙動不審になるのでバレバレ。そして騙されるという無限ループを繰り返している。


 そんな我が家は血筋だけで生きている。マジで現物支給される親戚や助けたらしい人たちからの贈り物で生存していた。

 しかも現物支給のみ。この二十一世紀になに言ってんのという感じだがマジである。

 

 端から端まで皆様の好意で生きております。

 貧乏なのに高級住宅街の一角に一軒家を借り、奨学金と言う名の援助で学校に行き、習い事まで手配されていた。

 どこからどう見てもお嬢様な私、貧乏ですのよ、と言っても誰も信じてはくれないだろう……。現金がね、持ってないのよ。欲しいものがあれば言ってねという親戚やら知り合いはいるのだけど。

 持っているのは交通系ICとスマホでの決済用にちょこっとくらいで、それも厳密には現金ではない。


 まあ、そんな家の三番目の娘である私。箱入りボディーガード付きで育ちまして、箱入りのまま出荷された今。

 夫におまえなんか愛さないといわれた。

 あの真っ赤になって挙動不審な結婚式を超え、限界を超えたんだろうなぁと乾いた笑いが込み上げてくる。

 冷酷と噂の社長様が、あんなになってる!? とあちこちでこそこそと聞こえてきましてね。あ、いつもはやっぱり違うんだとわかったわけで。薄々気がついてたんだけど。


「あの人、私のこと好きすぎだろ」


 間違いない。


 私の結婚はただの家の意向でしかなくて、至って冷淡に処理していたのだが。家を出たら現金使えるじゃない!? とうきうきしていたわけでは……。

 いや、その、駄菓子屋で豪遊したいのだが。あそこ現金じゃないとダメって言うから。


 ……。

 その野望は明日から叶えるとして、今は、乳母の人を起こさねば。面倒だな。


 寝るか。

 ものぐさというより、結婚式の疲労が。

 あ、ダメだ、やばい寝る。


 ……ぐー。


 大変散々な初夜は秘匿されることになった。

 なお、夫は、執事に正座させられ説教されたらしい。


普段は冷静を超えて冷酷と表現される夫氏。好意が限界を超えるとツンデレのツン全開になる。なお、本人を含め誰も知らなかった。

翌日小銭を握り締めて駄菓子屋にうきうきと向かう妻に夫氏はそれなら店を買うといい、楽しみがわかってないと説教されることになった。背後で真顔のボディーガードと執事が肩をふるふるさせたいたとか。

そして、月曜日、初出勤ですので、と妻に置いてきぼりを食らいしょんぼりする姿が見られたとか。

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