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続きそうで続かない短編倉庫  作者: あかね


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これは復讐にあらず

間違えたほうをあげていたので直しました。

最初のほう、奥さんいない話に直したのになんでいるの……。



 それはある夫婦がすったもんだの末の結婚式を挙げてから二か月ほどあとのことだった。





「私は決意しましたよ。商会長」


 俺に正式に会談の予約をし、正装をしてやってきた元支部長、現支部長統括がにこやかに話し始めた。


「お、おう。なにをする気だ?」


 戦争か? と続けそうになった気持ちを誰か分かち合ってほしい。しかし、残念ながら現在この場にいるのは俺お一人様。奥さんは別件でお仕事中。

 さらに人払いと言わんばかりに飲み物を持ってきた執事からティーセットを奪い取って追い出していた。あれ、逃げ場ない?


「あまねく地域に我が商会の支店を置きます」


「……世界征服すんの?」


 俺の正直な感想。冷ややかに見られてなんかぞわぞわした。あ、やばいやつね、と肌で感じるやつーと内心絶叫する。


「なにがあってどうしてそうなった」


「大したことはありませんよ。

 ええ、久しぶりに帰省したら地元の支店がやばい状態になっててなんで? って思ったら商売敵にパクられまくりの安く販売され、専売の話をしたら貴族の後ろ盾で脅されたって話はたいした話ではありませんよね!」


 一息で言い切ってぜはぜはしているのを笑ってはいけない。なにやってんのという気分にはなるけど。


 なお、これが大した話であるかというと場合による。

 よぉ、売れてますなぁ、うちも真似して出させていただきますわ、ああ、代わりにうちのアレを真似しても構わへんで、まあ、うちのが売れるでしょうがね。ぷくくく。

 というようなえせ商売人くさい音声つけたくなるようなやり取りがあるのが普通だったりする。持ちつ持たれつという、事前通告と見返りはそれなりにセット。一方的にやってくるか、それなりにすり合わせていくかは別として、揉めるけど、黙ってやるよりは揉めない。


 黙ってやる? そりゃあ戦争だね! というのが商人の常識。

 といっても例外もあるにはある。専売権は五年ほどというのが暗黙の了解である。


「専売権が切れてないやつだった?」


「ええ。それで、真似したなんてとんでもない、うちも別に開発したんですよとへらへらと言いやがって、で、うちはお貴族様の後ろ盾があるんですよぉって」


「そこまで言われて支店からの情報来てなかったんだ?」


「奥様の件でバタバタしているからもうちょい様子見としたら、ぎゃーっと悲鳴を上げる間もなくやられて、しかも、相手の出してきた名前が奥様の家と同じとなると手出しも……ということらしいですよ。で、悪化しすぎて私に報告が出来なかった」


「気が利くのが悪い方向に出たな。あと、おまえ怖すぎ。報告できないとか最悪」


「あらぁ、誰のせいだとお思いで?」


「全面的に俺のせいですね。ごめんなさい。

 まあ、とりあえず、その地域のは潰す、で済まないのはなんで?」


「あっちこっちで同じような荒稼ぎしてました。

 裏では悪評が出回っているみたいです。以前はそれほどでもなかった、この一年ひどいと」


「こっちに情報がこないのは?」


「奥様のご実家ということで、警戒された結果らしいです。商会長、奥様に骨抜きにされてるの有名なので」


「な、なんで!?」


「あれだけ、バタバタやって目端の利く商人が見逃すとお思いで?」


 ぐうの音も出なかった。


「で、うちもやられたので、あらま、と他の商会から実は実はとご注進がやってきましてね。

 頭が痛いんですよ。ほら、うち、貴族の当主が商会長やってる商会だから、対抗できるよね!?という期待と奥様のご実家なので、忠告して商会をたたむなら勘弁してやらぁという警告して来いというやつで」


「……知らない間に戦争に巻き込まれてた」


「お花畑で遊んでいたツケですね!」


 いい笑顔で言い切られた。そのつもりはなかったんだけどと言ったところで無意味かもしれない。

 振り返ると頭を抱えたくなる。だから、出来れば振り返らないことにしていた。


 まあ、なんだ。うちの奥さんが可愛いのが悪いんだ。


「で、販路拡大と本気の商品開発をしたいんです。

 各地に草案を出させる指令書を出したので、来た順に確認してください」


「そんな急がなきゃいけないやつ?」


「あちこちの商会が腹を立ててるんですよ。

 それってどういうことか知ってます?」


「……あー、流通が死ぬ」


「奥様のご実家が詰むのは仕方ないのですが、領民も道連れです。

 売れればよいというような海千山千が、そこまでガチギレです」


「なにしたの」


 頭が痛いというレベルを超えるなんかなんだけど。


「長年育てた商品の模造品で評判落とされたら我慢ならないってのと産業潰しの気配があるから、貴族だと圧をかけてくるのが反骨精神に直撃、あたりだと思いますね。

 噂レベルですが、職人の引き抜きもしてるらしいですよ」


「おお、フルコース……」


 地雷原の中でタップダンス、というより、火薬庫で花火って感じ。

 おお、全部燃えるぜ。


「いつからそんなんになってんの?」


「一年位前かららしいですね。ちょうど、奥様がこちらにお越しになってしばらくたってから」


「……心当たりはあるのが嫌だなぁ」


「ですよね……」


 揃ってため息をついてしまった。

 心当たり。

 彼女の実家からの金の無心を断った。

 脅してきたので断った。

 彼女を使って搾り取ろうとしたので、返り討ちにした。


 ついでに、罪状を法務官にチクった。財務官に不正利用あるみたいですけどぉと垂れこんだ。


 なお、これらのあれこれ、悪いことばかりでもなかったので最後の止めは刺さなかった。


「息の根をとめておくべきだった」


「ですね。半端な温情が事態を悪化させました」


「まあ、優しい勧告くらいはするよ。その次は戦争な」


「おや、腹をくくるのが早いですね」


「次にな、あいつが面談予約なんだよ。

 どうせ、同じ話だ」


「あららら。私も一月は会ってませんから、ついに行き倒れたかとおもってたんですが」


「おまえら、仲がいいのか悪いのかわからんのだが」


「仕事上のお付き合いしかしておりませんよ」


 そのわりにお互いに詳しすぎるのだが、と突っ込むのは野暮だろう。この二人に結託されたら商会を乗っ取られ、ポイ捨てされる。今も崖っぷちっぽい。


「一応聞いておくけど、向こうの実家擁護したらどうしてた?」


「あらぁ、骨抜きされているので、性根を叩きなおすか、私が全部仕切ります」


 ……こぇえと口にしなかったのはいったらもっと怖いことになるからだ。

 微笑むでもなく、真顔なのが怖い。


 それからほどなく、扉が叩かれ、商会長、戦争しましょうと切り出されることになる。

気遣いが複雑骨折したすったもんだの話は、また別に。

なお、流通管理の人は俺の前に立ちはばかるものは潰す派です。

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