表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
続きそうで続かない短編倉庫  作者: あかね


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/67

TSして男になった腐女子、BL喫茶を異世界で開店する(予定)

腐女子、異世界にTS転生する。

ある日女装させられて、前世女だったと覚醒し、教師役がいがみ合っているところに萌えを感じて腐女子だったことも思い出す。15才で店を持つ家訓に従い彼(彼女)は萌えるお店を作ることを決意する。(←今ここ) という話の最初の部分。


魔が差しました。


 オリヴィエは男である。15才の現在、女装の似合う男の娘とも言える。

 ただし、ややぽっちゃりである。なにか癒される系のマスコット的愛らしさが溢れている。

 その中身は某国の腐女子だった前世を持っていた。


 物心ついた頃から男の格好嫌だなと思っていたところ、ご近所のお姉様に玩具にされて開眼した。


 僕、女だった!


 そこから高熱を出してぶっ倒れた12才の秋。そこから13才になる春までベッドの住人と化した。


 その間に怠惰な生活を憶え、肉の貯蓄をしてしまう。ぽっちゃり、ぎりぽっちゃりと己を誤魔化す日々だった。


「ダイエットする。今日からする。動くんだ」


 絶望的な気分で14才のオリヴィエは決意した。一ヶ月前も同じ事言ってたとは使用人たちも言わない。

 オリヴィエは豪商の家に生まれ、母親似の可愛らしい顔立ちをしていた。丸くてもかわいい、むしろ、もっとかわいいという特異的な状況であった。

 そのため、家族は誰も痩せろとは言わないし、なにかにつけて食べさせようとする。


 かわいいが、健康には良くない。階段の上り下りで息切れするようになってようやくオリヴィエはやる気になった。

 そこで与えられたのが鬼教官であった。元々どこかの軍人だったのが、怪我が原因であれよあれよと転落し奴隷となったのを母がうっかり購入した人だという。

 うっかり? 奴隷って? とオリヴィエの困惑をよそに鬼教官ルーイはびしばしと鍛えてくれた。

 学問の方が元々、家庭教師がついていたので自由時間がなくなったに等しい。


 家庭教師のアルトはルーイを脳筋とバカにし、ルーイは学者先生ねと相手にしない。

 そのやりとりはオリヴィエの前でも変わらず、なにかもにょっとした。


 ……萌えるってなに? 喧嘩ラブとか良くない!? って?


 オリヴィエは時差で腐女子であったことを思い出した。二人の喧嘩を眺めて仲裁して、独りになるとぐふふともだえる日々はある意味平和だった。


 オリヴィエが生まれたエーデ家には15才で小さな店をもらう習わしがあった。食べ物にうるさい末っ子は食べ物の店を作るものばかりと皆が思っていた。

 なお、体重はまだぽっちゃりの範囲で、これはことあるごとに色々食べさせようとする家族のせいである。


 労力を無駄にさせるとオリヴィエが打ちのめされながらも迎えた15才。


「貸本と軽食のお店にする」


 と言いだしたときには、家族は驚いた。しかしルーイは顔をしかめ、アルトは遠い目をしていた。

 従業員は奴隷から選ぶと言い出したことには絶句される。


「ルーイ先生みたいにやむを得ず身を落とした人もいます。己を買い戻す機会を与えたいのです」


 建前である。

 本音はお気に入りの男を揃えてイチャイチャさせたいのである。オリヴィエはしおらしくお願いした。

 奴隷になら心置きなく命令出来るというゲスな発想は隠してである。


 オリヴィエの守備範囲はとても広いので、満遍なく揃えたいと野望を抱いていた。


「ついでに一人暮らしします」


 と言う爆弾発言が認められることもなく、ルーイとアルトも同居かつ週に二度は実家に顔を出すという事に決まった。

 本格的に痩せるのに家族の善意が妨害としか思えなくなってきたせいなのだが、家族に自覚はない。


 オリヴィエの趣味を押さえた絶妙なチョイスが拒めないという事情もある。

 頻度が下がればきっともっと痩せるはずとオリヴィエは信じている。


 それから女装趣味もきっとあれこれ言われない。やめろというのではなく、各自の好みの少女像を押しつけられるからである。


 長兄は清純派、次兄は小悪魔、弟はお姉さんっぽい感じを望んでいる。なお、母はお買い物につきあってくれるかわいい娘で、父はパパ大好きという無邪気な娘だそうだ。

 とんだ魔性の女である。


 オリヴィエの中の人は腐女子を隠していたが、やはり干物系だったので女子力と首をかしげるタイプだった。


 エーデ家所有の家の一つに住まいを移し、同居人2人と通いの料理人と家政婦がいるなかオリヴィエの新生活は始まった。




「ええと、ルールを説明しますっ!」


 強制的に同居人となった二人を集めて、オリヴィエは話し始めた。

 オフホワイトとオリーブグリーンでまとめられた落ち着いた部屋は居間として使う予定だ。用があるときも基本的にはお互いの部屋に入ったりはしないことを最初に取り決めた。


 オリヴィエの妄想の余地があるような出来事を見逃すまいという側面もある。しかし、第三者がいた方が仲裁しやすかろうということもある。


「オリヴィエ様、居間は教師と生徒ではなく、主としている時間でしょう?」


「若輩者ですので。はい、ルールですよ。

 清潔に保つ、食事はちゃんと食べる、朝は起きる。

 アルト先生は体力なさ過ぎなので、我々の運動の時間に少々つきあっていただきます。

 ルーイ師匠は文字の読み書きくらいそろそろ出来るようになってください。僭越ながら僕が教師役をしますので、アルト先生は至らない点は指摘してください。

 以上です!」


 オリヴィエは有無を言わせず言い切ったが、両名は不満そうな顔を隠さない。

 まずアルトは宵っ張りで朝は起きてこない。食事も疎かにしがちである。彼も階段でへばるほうである。

 ルーイは朝は起きてくるのだが、少々がさつに出来ている。彼に言わせれば、オリヴィエが神経質なのだというが。バカじゃないのに興味が無いと忘れるという大変困った性質がある。


「ルーイ師匠はせめてメニューと注文を書く程度はわからないと無給ですよ。

 アルト先生も約束の本、渡しませんからね?」


 弱みを握られている二人は不満ながらも反論しないには理由がある。


 アルトの欲しい本を前もって聞いておき、オリヴィエは父におねだりしておいた。物欲にはとことん弱い家庭教師はこれを安易に欲しがり、従業員として働く契約をしてしまったのだ。


 ルーイの支配権は母よりオリヴィエにうつっている。何をしようと構わないが、オリヴィエは彼に身柄を買い戻すチャンスを与えると餌を撒いた。ルーイは簡単に引っかかりすぎて、色々心配になった。

 脳みそまで筋肉と言うより反射神経で生きてそうという感想が出てきたが、安易に従業員契約を結んだ。


 オリヴィエはこれをちらつかせれば良いのである。


 ぐぬぬとでも言いそうな顔を見るのが大変心地良い。オリヴィエは機嫌良く、今後の計画について話すことにした。


 そうはいっても初期は新しい従業員は増やさない予定である。ひっそり、こっそりオープンしていこうという計画だ。

 慣れないうちから手広く始めるのは失敗が見えている。慎重派などと言われているが、オリヴィエは心配性なたちだった。

 ついでに言えば過ぎたことも考え込むほうでもある。


 憂いなくすすめるには堅実に確実にすすめた方が良いと思っている。

 立地は大通りを一本入ったところにした。長らく空き屋だったという場所は書店だったという。店主だった老婆が亡くなって以降、誰も住まず、誰の手にも渡らなかった。

 売ろうとすると何かにつけて祟りがあるとかなんとか。


 オリヴィエは何となく気になって、入って即決した。

 ここにするべき。

 急いで屋敷に戻り、お気に入りの本を数冊持参した。翌日、店に行けば権利書が落ちてきた。


 オリヴィエ以外は狐につままれたような顔をしていた。しかし、オリヴィエだけはご機嫌に追加の本を置いた。

 お気に召して幸いである。


 店内にひっそり、こっそりあったのはBL本である。過激なものから淡いものまで取りそろえられていた。

 老婆はきっと同士だったのだ。確信めいたものに突き動かされての行動だったが、良かったらしい。


 オリヴィエは定期的に新刊を貢ぐことで、店舗を手に入れた。

 ついでに計画書を忘れたふりをして置いていった翌日にはおすすめ本がひっそり積まれていた。

 こういう男の子が良いという主張だろうと心に留めることにした。

 やんちゃ系受けがいいのか。誘い受け、あ、子犬系攻めとかなかなか良いご趣味ですね。とぐふふと笑っていたことをアルトに目撃され気味悪そうにされたことには気がつかなかった。


 店の改装中は暇なので、蔵書の整理やメニューの決定などを行う予定だった。


 飲み物と軽食と決めてはいたが、客層にあうかどうかはわからない。

 相談相手がまず客層外である。


 オリヴィエはさっさと諦めて実家に顔を出した。家族に顔を合わせるのもそこそこに使用人たちを集めた。

 本好きの意見のほうが貴重である。


 商売の手伝いをしているものは文字が読めたり、どこかのお店で飲食出来るような余裕がある。

 メイドたちも簡単な読み物くらいは読むことはあった。こちらはどちらかというと玉の輿のような夢溢れる話が多い。ごくまれに冒険譚が流行していたりもするが、オリヴィエの同好の士というわけではなさそうだ。


 応接室を借り激論の末に初期メニューを決めたころには謎の一体感があった。

 なお、ルーイもアルトも居たがもはや空気だった。


 報酬として各人好みの本を送ることにしたので、秘密のメモを手にオリヴィエが頭を抱えるのは店に帰ってからのことだった。


 おまえらっ! なんでひどい趣味なんだっ! (褒めている)


 そんな絶叫がこだました某店内では、幽霊の美女が楽しげに見ていた。


 かくして、幽霊付き貸し本屋兼喫茶の開店が近づいてきていた。

オリヴィエ

 主人公。かつて腐女子だったことを思い出し、欲望のままにお店を作ろうとする。

 TS、女装、腐女子、ぽっちゃり系と属性てんこ盛りすぎないでしょうか。


ルーイ

 オリヴィエの中の人の性癖直撃だった。母の衝動買いでお家に来てダイエットの鬼教官のはずが、いつのまにかお付きの人に。

 考えるのが不得意。騙される程度には善良。むしろ心配されるほう。


アルト

 オリヴィエの家庭教師。ドSっぽいと思われている。体力なさ過ぎで良く階段でへばっている。知識欲に色々負けがち。給料より蔵書につられてオリヴィエのお付きに。

 色々むっつり。


家族

 かわいいオリヴィエを溺愛ぎみ。女装も似合っているなら良いじゃないと承認。女の子いなかったのでちょうど良いと思われている。妙なことを始めたなと思われているが、止めない。

 男女問わず縁談がきていることをオリヴィエだけは知らない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] これ凄い楽しそうなんですがジャンル何ー??ってなるやつですね。このままヤングアダルトジャンルで自立する女装男子でもいいし、本人無自覚のハーレムものにもなるし、二人のBLにもだもだしてもいい…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ