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続きそうで続かない短編倉庫  作者: あかね


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13/67

高難易度のSRPGで英雄にならなきゃいけないらしいです。なお、元ゲームはR18です。

今後、日の目は見そうな気がしないのでこちらに。

ユニット系のSRPGを想定しています。


 ロンド。

 それは騒がしいこの物語に与えられた名。

 実態はカオスである。





 突然で申し訳ないですが、一つ、愚痴に付き合っていただきたいのです。

 異世界に転生しましたよ、と言う話は最近はありがちかも知れませんね。ゲームなんですってなんてテンプレかと私もはじめは思いました。

 それにしたって難易度が高い育成+シミュレーションロールプレイングゲーム(以下SRPG)とかひどい話だと思いませんか。さらに18禁です。

 2Dです。通常画面はミニキャラです。止め絵が華麗なので別口で恐ろしい展開があったのですが、それはあとでお話しします。


 時は戦乱の足音が響く新生歴349年。

 軍の学校の門を叩く少女ラプソディア、14歳。

 それは夏の終わりの頃だった。


 というオープニングで始まった物語は、初期の軍学校での育成帰還二年の後、国の端に小競り合いが発生しはじめます。ここまでで、真面目に育成しておかないと大変な目に合います。

 後々、戦場に送り込まれ死亡とか、捕虜とか奴隷とか中々大変なR18な展開です。

 主に男性向けなので結構えろい目に合うのが普通ですし、敵方も味方もなぜか女性が多いです。触手って……と遠い目になったのは仕方がないでしょう。


 ターゲットが大体男性だというのに、なぜか、イケメンが大量に発生してしまうのは男性ユニットが必要だったからに違いありません。それがこんな事態を私に起こすとは思っても見なかったんですけどね。うふふ。


 軍の学校であるから全く戦えないままであれば容赦なくたたき出されるので、鍛えないという選択肢はございません。

 ええ、実家もございませんしね。家族が離散して他に選択肢がなかったのです。衣食住は最低保障される上に多少の給金も出る境遇とは他になかったのです。

 いえ、娼婦にでもなれば良かったのかも知れませんが。それをするには多少の潔癖さがラプソディアの特徴とも言えます。


 色々紆余曲折ありますが、結局、英雄になる物語であり、他の人と関わり、その育成を助けないと生き残れないというひどい話でもあります。

 逆説的に言えば、その他の人々の手助けの果てに救国の英雄になると言うことです。


 ……大変重苦しい人生を背負わされております。何故、思い出したのが入学後なのだとどこかに実在する神に問いたい。設定上、いるんです。神様。

 知らなければ、本能のままに生きて行けた気がします。

 いえ、バックれるのも今更ながら有りだと思います。


 尚、ラプソディアが何もしないと国家崩壊します。

 戦争で死亡しても同様です。

 辛うじて生きているくらいだと双方壮絶な痛み分けだったりするんですよね。

 私に出来る事なんて有り余る原作知識で無双するか、全力で逃げるか、どちらかです。


 なにこのムリゲー。とぼやく気持ちがわかっていただけたでしょうか。

 平和ボケした日本人の過労死OLに何をお求めで?


 もちろん、ゲームに似た別の世界だと思います。是非ともそうであって欲しいのですが、万に一でも同じように歴史が進めば、そして、バッドエンドに突入となれば後悔しない自信はありません。


 だから、まあ、仕方のないことですが自分を鍛えるつもりです。


 ああ、自分が死ぬと万の人が死ぬのです。うつろな笑いが出てきそうです。知りたくなかったです、心底。死なないかも知れないけれど、それを信じる事出来るほど強い精神力は持ち合わせておりません。


 足りなかったそれが、誰かを殺すかと思えば恐くて発作的にお空からダイブしたい気持ちになります。

 しませんけど。


 そして、さらに言えば、敵を同じほど殺せとも言われていると同義です。どちらを殺すかという話で。


 この世は地獄です。

 異世界転生ってもっと楽しいものではないんですか? 神様。


 こんな風に私の覚悟のほどは決まってはいませんが、問題はやってきます。


 さて、私は今、問題に直面しているのです。


 先にイケメンがと申しました。私が知っているロンドという物語はまあ、PCゲームでした。その後、イケメンに食らいついた乙女たちをターゲットに難易度を落とし、恋愛色を強化したロンド-コン パッシオーネ-を発売しました。


 軍の学校に入学したラプソディアが勉強に恋に頑張るお話です。

 英雄なにそれ? くらいの難易度ですし、前線に送られるというよりマスコットやアイドル的扱いです。

 残念ながらエロい話はございません。乙女向けです。大人の淑女向けの追加ディスクの存在なんて知らないってばっ! ……いえ、取り乱しました。


 結構な数がいた女性キャラはどうなったかと言えば、ライバル的な味付けからやや悪役チックに鞍替えしたのでした。

 各スキルごとに得意キャラが決まっていて、そのスキルを伸ばすと登場し、あなたには負けないわっ! と宣言してくれます。

 一部は恋のライバルも兼ねておりまして中々な修羅場があったり、放置するとどっかのバカがハーレムを築いたりと中々にカオスです。


 これで、お分かりいただけたでしょうか。

 私はこの世界をシミュレーションゲーム準拠の世界と想定してます。最悪の方が対処しやすいからです。なにも恋愛に負けたところで、立派に独り立ちするエンディングなだけです。死にはしないんですから。

 むしろ、誰かに捕まってしまった方が大変ヤンデレな何かが襲ってきます。

 ですから、真面目に訓練に励み友好関係を築き、皆で強くなろう計画を練っていたんです。


 とんだ異分子さえ入ってこなければ、です。




 都合の良い人生はありません。

 他人というのは自分の都合では生きていませんから。

 ということは頭に入っていたはずなのですが、現在ショックが隠せません。



「……何故に、こんなことになってたんですか」


 こそりと同僚のアルフィーネに問えば、彼女は顔をしかめて三本の指を立てました。


「え、三日、じゃないですよね、三週間、ですか?」


 水面下で色々あったんでしょうか。アルフィーネは横に振りました。立派なポニーテイルが横にぶんぶん振れています。


「三日。そう、あなたが不在だった三日間の出来事だったわ。お見事なものよ」


「堕落してますね」


 アルフィーネは重々しく肯きます。


 ここは訓練場のはず、なんですが。訓練生の少年たちがある少女を囲んでちやほやしています。

 見たことのない少女、と言うわけではないんですが、現世ではお会いしたことはありませんでした。

 ライバルキャラの一人、とでも言いましょうか。逆ハーレム作る人ではなかったと思ってたんです。


 回復系のティリア。清楚な少女。今はちょっとあざといですね。初心な少年たちは騙されそうですが、訓練生の少女たちの敵認定されそうです。


「それで、どうします?」


 アルフィーネに問いかけてみます。答えはわかっているんですが。

 それはそれは良い笑顔で、やっぱり、答えてくれました。


「制裁」


 ええ、調和を乱す人間はいらないのです。

 我々は、死にたくないのです。

 役に立たないなら、出て行ってください。


「貴方が帰ってきて良かった。他の子がちょっと頭来ちゃってて手に負えない子もいたから」


「それはそれは」


 ため息しか出てきません。

 堕落の全貌を聞きたくもなくなってきました。まあ、聞かなくても知識として知ってますが。

 おおよそ想像通りならばコレ立て直すよりも新たに別の人たちと組んだ方がマシではあるのでしょうね。

 原作がどの程度影響するかわからない以上、捨てるのも得策ではないのがもどかしいです。


「では、詳細を聞かせてください」


 場所を変え、私の部屋に行くことになりました。

 こんな場所では訓練できませんし。



 私は魔法剣士、かつ、狙撃手として鍛錬を積んでいます。中途半端と言われそうな編成ですが、自力では育てるのが難しいものをチョイスした結果です。

 そんなわけで、常時同じ授業には混ざっていません。


 ちなみに取る授業は実は自分で申請すると自由に選べるシステムなのです。説明もされているにも関わらずあまり知られていません。


 三日ほど不在だった間に、基礎科の男どもが堕落しました。これは基礎体力や剣、銃など色々な武器のさわりだけを習うところで、物理で殴る系ならほとんど取る授業です。先生について色々習う時間もあるんですが、ほぼ、自習な時期もあります。


 毎日、学校のある日はずっとやっている授業なので、被害範囲は想像もつきません。


 私が不在だった三日間何をしていたのかといいますと射撃の訓練と言う名の狩猟イベントに拉致されました。

 別名肉祭り。なぜ、この学校の人たちは唐突に肉を食いたいと言い出すのでしょうね。教師もノリノリで拉致されました。


 数合わせで連れて行くのはやめてください。飯炊き女扱いもやめてください。家庭料理レベルで、女の子の手料理と号泣するのは……。


 うん。


 これで良いならお食べと餌付けしている気分にはなりました。


 何かしら協定を結んでいるのか貞操の危機がなかったのは良かったことでした。ある意味とても快適でした。


 そんな楽しい山ごもり三日のあとに、コレです。ゆっくり湯船につかって出てきてコレです。心が折れそうです。


 まあ、攻略キャラというのは何かしらの弱みがあります。人間ですもの。と言いたいところですが、付け入るスキと言うヤツです。コレで上手く落としていくのですよ。恋愛ゲーム的には。


 私は真っ当に進めたいので、逆ハーレムはお断りです。本命はいます。ですから、そんな手は使ってこなかったのです。

 今となってはそんなセキュリティホール潰しときゃ良かったと苦虫をかみしめますけど。


 最初の異変は、ティリアが授業に混じってきたことだったそうです。


 戦略系の授業はそこそこ女性がいる授業ではあったんです。しかし、彼女は治癒術に適正があるので出席するの? とちょっと疑問に思ったようです。どちらかと言えば後方支援なので、回復専門系の人は前線の事はあまり気にしない事が多いので。


 それでも真面目に聞いていたので不審とは思ったそうですが、ほっといたそうです。

 清楚系美少女の登場に浮き足立つ野郎どもに腹が立った方が強かったそうで。まあ、我々は常に女性扱いはされませんし。ちやほやしやがってと腹が立つのはわかる気がします。


 この授業、ピンポイントでまずいヤツでした。

 これ攻略対象が全ている唯一の授業なんです。そのために私も取ってました。

 拉致されなければ、出ていたはずです。


 そこを皮切りにそこそこ有能な男たち(という名の攻略キャラ)が出入りしている授業に顔を出しては、甘いことを言っていたそうです。


 その結果の基礎科の堕落です。ついでに女の嫉妬も妬みも買っています。一応、彼女たちは逆恨みに近いと自覚しているようで、実力行使には至らなかったようですが。

 そうなるのは時間の問題と。


 そんな事情説明をされます。

 私、山ごもりで疲れているので寝て良いですかとぶん投げたくなりました。


 ああ、お茶がおいしい。どこかにあるらしいニホンっぽい国で生産されている緑茶。そして、なぜかあったお饅頭を無言で口に放り込みます。


 部屋には私の他に三人います。

 狭い個人部屋に椅子もテーブルも置けなかったので、土足厳禁にして絨毯をひいていて、クッションをおしりにしいて座ってもらっています。

 同じくニホンっぽい国から輸出されていたちゃぶ台を真ん中に置いてお茶やお茶菓子を置いています。


「チョロすぎないか、あいつら」


 と言い出したりするのが、魔法使いのオフィーリア。キレイめな大人の女性ですが、口調が荒いのが玉に瑕。でも、ツンデレです。


「……うーん、でもですね。イケメンにその気があるように振る舞われたら、ちょっとぐらつく気持ちはわかるんですよね」


 微妙な顔でアルフィーネは言います。イケメン好きですものね。

 彼女は回復系なのですが、銃系シスターです。二丁拳銃のシスターって誰得なんでしょうか。


「それにしてもあれはちょっとね~」


 間延びしたような口調でふわふわ笑うのはサムライ系のモミジ。かわいい系でちみっとしてる癖に身長ほどの大太刀をぶんまわすファンタジーな存在です。

 育つと回避がやたらと上がって弓とか銃とか避けます。


 彼女だけは持参した湯飲みでお茶を慣れたように啜っています。遠くニホンっぽい国に遠縁がいるそうです。


「あの子のお家って確か貴族だったでしょ~? だから、喧嘩売っちゃうのはまずいよねぇって止めたけどぉ」


「だが、ぶった切ったほうが早い」


 オフィーリアは、そう言いますよね。わかります。遺恨さえ残らなければ、私も暗殺してなかったことにしたいです。

 過激といわれても、背後のプレッシャーがぐぐっと重くなった気がしてどこかに正気を放り投げたい気分です。


「ダメですよ」


 アルフィーネは困ったように笑っていましたけど。他の子が来るまでに呪詛を聞いた気がしますよ?


 今のところ関係が良好なライバルは彼女たち三人です。ライバルキャラは他、根暗系騎士の美少女と制裁などと言われている清楚系回復役のティリアの5人になります。


 根暗系の人はまだ遭遇していないというか、引きこもりが過ぎて退学の危機になってます。天才的な強さの実技で黙らせているようですが、何が彼女をそうさせるのでしょうか。


 彼女たちに対応するように五人の攻略対象と隠しキャラがいます。

 色気過剰の神父(現時点では候補生)、堅物の魔法使い、忍者系の謎の人、ちゃらい騎士(現時点では見習い)、回復系の犬っぽい少年。


 隠しキャラは、先生とかいるんですが戦場には連れて行けませんので、今のところ範囲外です。


 遠い目をしてた私に気がついたのかアルフィーネがにやりと笑いました。

 ……嫌な予感が。


「ああ、レネ様は白い目で見てましたよ。大丈夫ですっ!」


 ……え、どうしてみんな生ぬるい笑顔なんでしょう?

 レネ様というのは、その、推しです。近寄ることも出来ないくらい身分が隔絶してますが、遠くから見るだけでよいのです。

 ……とか言いたいんですが、ほっとくと彼もさくっと裏切って敵方に回って最後は死んじゃうんです。それだけは是非とも回避したく、接触したいんですが中々……。

 一回、落ちてるの拾ってもらったくらいですからね。あれもあり得ない事故みたいなもので。


 顔が赤くなるのは仕方ないです。はい。

 その話は恥ずかしいので記憶の底に沈めておきたいのですが、時々浮上してきて困ります。


「先生に報告していたぞ」


「背後にブリザードが吹き荒れていたかな~」


「安心しました?」


 聞き覚えのない声が隣から聞こえてきました。


 ぎぎぎと音がしそうな動きで全員それを見ました。


 前髪で目隠ししている少女がそこに座っていました。


「ヒルデガルド」


「呼ばれたので来ました。傍観している時点ではないと判断しましたので?」


 確かに呼んだと言えば呼びました。部屋の下にメモを挟むという手段で。

 誰も気がつかないで座っているとか意味がわかりません。騎士というより、隠密なんじゃないでしょうか。


「それにしても、レネ様、ですか?」


 彼女は微妙に語尾を上げて質問風な話し方が特徴なんです。でも、これはわかりますよ。純粋な質問です。


「はい。好きです」


 白状しておいたほうが、友好関係を築けるかと思ったのです。

 どよめきが起こったので顔を覆い隠します。恥ずかしい。みんなそうだろうとは思っていたんでしょうけど。


 ヒルデガルドに少し探るように見られた気がしたのですが、目線がそもそもあいません。分厚い前髪で周囲が見えてるんでしょうかね。


「じゃあ、協力する」


 ヒルデガルドはなにがしかの結論がでたようです。どこまで信用できるかなんてわかりませんが、わざわざ敵対しに来たわけではないと良いと思います。


「ティリア対策はどうする? あれは後ろ盾がやっかいだ」


「一つよろしいですか?」


 ヒルデガルドが手を挙げて発言の許可を求めました。


「私が尊敬申し上げる方が言っておりました」


 彼女はにやりを口だけで笑って。


「戦争を現場では、解決できない。

 それはもっと別のところで決まったことなのだ。

 だから、止めたければ、誰を殺せばいいのか、教えてやろう」


 ティリアをなんとかするのではなく、彼女の背後から洗っていくと。そうですね。端から見れば、攻略キャラを攻略しているのではなく、何か別の意図があるように見えます。


 有能な者を特定の派閥や部隊に誘うためのハニートラップのようなもの。


「ということで、彼女の後ろから叩きましょう? うきうきします?」


 ヒルデガルドは某不思議の国の猫のように笑っています。

 彼女に飲まれたように黙っていた他の3人はと言えば、笑ってますね。恐いです。マジですか。


 未だ見習い程度の我々が、貴族家に喧嘩を売るつもりであると。


 よっぽど、ティリアは恨みを買ったんでしょうね。一体、不在の時に何をしたのでしょう。


「でも、なぜですか?」


 アルフィーネは首をかしげながら尋ねます。


「私の将軍をおっさんていうなんて許せないと思いません?」


 ……ものすごく私情でした。

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― 新着の感想 ―
[一言] 推しを貶めたら戦争だ!は世の真理ですよね…。確かに。女子の戦いのきっかけは大抵それですよね… ライバルさんたちがとても楽しそうです。
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