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阿用郷の鬼

作者: Serenus

私の祖父は俗にいうオカルトに詳しい人だと周りの人が言っていた。


私がそんなものがあるはずがないと思っていた頃、祖父は昔話をしてくれた。


「俺は鬼にあったことがあるぞ」


祖父が言うにはなんでも阿用郷とやらで鬼にあったらしい。


「昔、各地で伝承を調べていたことがあってな。」


そう語る祖父はいつもの祖父とは違い、おどろおどろしい気配を纏っていた。



祖父は一つ目鬼について調べていたと言っていた。


なんでも、鬼の伝承を調べるうちに面白いことを知ったと。


どうしても会ってみたいと思い伝承が色濃く残っているところにいったそうだ。


祖父が阿用郷と言われる場所にいったのもそのときだったらしい。




「山深く獣道を進んでいくと少し開けた場所があってな。」


「そこには数棟の廃屋があったんだわ。」


あぁ、こりゃ本当に鬼がいそうだなぁと笑いながら一番大きな廃屋に入っていったとき。


後ろで何かの動く気配がしてな。バッと振り返ったんだよ。


でもな、なんもいやしねぇ。


狐狸の類に馬鹿されたかって思いながら廃屋を調べていたらな。


中は存外綺麗で人が生活してる風な痕跡があるんだよ。


こんな廃屋に誰が住んでるんだ?って思ったんだがほんとに鬼がいそうだなぁと思って急いで山を降りたんだ。


麓の里まで降りて宿の店主に聞いたんだが、


「あそこにはほんとうに鬼がいるらしくてな。」


皆恐れて誰も近寄らないのにあんたよく行ったね。なんて言われたものさ。



そういいながら笑う祖父にさすがに私も肝が冷えてきて話の続きを促した。


私も怖い話は嫌いではない。


なかなかに面白い話を聞き興味をそそられる。



それでな。


と、祖父が続きを話始めた。


「翌朝、また廃屋までいったわけなんだわ。」


そしたらなんと、鬼がいてな・・・。寝てたんだわ。


いやー、鬼も寝るものなんだなって思って音を立てずに静かに観察してたらな、こいつはやけに煤まみれだなとおもってなぁ。


そこでこいつが目的の鬼だなって確信したわけよ。



「鬼さん鬼さん首切られたくなかったらお願い聞いてくれないかい?」


俺がそう言うと鬼は起き上がってな、身の丈2メートルはありそうな大鬼が立ち上がってな。


「何の用だ」と鎌首もたげて聞いてくるわけだな。


「あんた、阿用郷の鬼ってやつだろ?俺に小刀を打ってくれやしませんか?」


「もうすぐ孫が生まれるんで御守刀が欲しくてな。」


「そういうことなら昨晩打ったものがそこにあるからそれをもっていけ。」というんだわ。


「じゃあ、ありがたくもらっていきます。」と礼儀正しく礼してもらってきたわけよ。


俺の人生も奇天烈なもんだと思っているが。まさか鬼に頭下げる日が来るとは思わなかったなって笑っていた。



「どうだ、面白かっただろ?」と祖父は笑いながら言うと。


「あの御守刀は鬼が打った物なんだぞ。」と私に言ってくる。


私は反応に困りつつも、祖父の勇姿を称えるために笑うのであった。



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