Ep.1
「眠っ…」
6限目、今日の最後の授業。
冷房の効いた教室で、いつものように窓の外を眺めていると、睡魔が襲ってきた。
思いまぶたと必死に戦いながら黒板に向かう。が、
「だめだ…眠い。」
結局睡魔に負けて机に突っ伏してしまった。
*
「はあっ!」
チャイ厶の音とともに一斉に引かれる椅子の音に叩き起こされた。
僕は急いで立ち上がり、目も開ききってないまま礼をした。
「ありがとうございました。」
号令とともに授業の終わりの挨拶が響く。
その声で本格的に叩き起こされた僕は椅子に座って。
「やべー…寝てたー。」
と呟いた。
隣の席の友達に寝ていたところのノートを写させてもらっていたら、すぐにホームルー厶の時間がきた。
先生が入ってくる。
どうやら午前中に近所のコンビニで強盗があったらしい、先生は真面目な顔でその旨を伝え注意を促していた。
が、僕はなぜか、少し「面白そう」と感じてしまった。
そんな自分に罪悪感を感じながら、ホームルームの終わりを待った。
ホームルームが終わり、帰りの挨拶をすると僕は急いで駐輪場に向かった。
途中で男友達にカラオケに誘われたがすぐに断った。
自転車にまたがると、近くの小高い山まで自転車をとばした。
古民家と町工場のような建物、比較的新しい家がごちゃごちゃに建っている通り、舗装れた川に物足りなさを感じながらいつものように、ある山を目指した。
山と言っても頂上付近まで道路が舗装されている山だ。
僕は自転車で行けるぎりぎりで自転車を止め、見晴らしのいい頂上から少し外れた展望スポットを目指した。
そこからは付近の街を一目で見渡せる。
「はぁ…はぁ…」
展望スポットについた。
と、言っても観光でもなんでもないので人は僕以外には誰もいない。
街を一望しながら風を感じる。
僕のお気に入りの場所だ。
でも、物足りない。
「なんかないかな、楽しいこと。」
なんてつぶやきながら、頭の中では今日のコンビニ強盗のことを考えられていた。
「何かこう、ワクワクするような、他の何かが始まるような…。」
ため息が漏れた。
最近はずっとこんな感じだ。
物語のような日常に恋をしているような。
好きな人がほしいような。
そんな感覚。
しばらく風にあたっていたが、飽きてきた僕は自転車に向かった。
自転車に向かう道の途中で不意に風が吹いた。
何かを語りかけてくるような、そんな風に僕は足を止め、辺りを見回した。
「なんだ…?あれ。」
赤い柱のようなものが茂みの奥の木々の間に見えた。
僕はその柱が気になって茂みへ入った。
茂に入って少し進むと、外からは見えなかった獣道のような細い道があった。
獣道ような道というだけであって獣道ではない、そう呼ぶにはきれいすぎるのだ。
踏み倒されたのではない、もとから草も石も何もなかったかのような、どこか不気味な道が続いていた。
なぜかその道に踏み入ることができず、足を止めた。
でも、この道の先には何かがある。
そんな気がして、僕は再び歩き始めた。
歩き進むと赤い柱の正体が少しずつ見えてきた。
「鳥居…?こんなところになんで…」
赤い柱、鳥居の前まで来た僕は足を止めた。
その鳥居が放つ異様な雰囲気に、僕は釘付けになってしまっていた。
なんのへんてつもないただの鳥居のはずだ、なのになぜ目が話せないのだろう。
風が吹いた。
「よし…」
僕は鳥居をくぐった。