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その目が嫌いです

一つだけ言わせてもらっていいかな?


一応練習に参加したはいいけど、すこぶる鬼トレ。ハード過ぎて真面目に疲れたんですけど?


「やっば、息切れしてるしっ」


過去の身体だったらとっくに死んでるよ。ほんと、香クンの身体で良かった!!感謝!!香クン!!


「おーい、ヘバったか?」


息切れしてる最中、山元先輩は「まだまだ練習続くからな」と言って筋トレを再開。おーいマジかよ!!強豪ってこんなキツイの?


ヤバい、軽く眩暈がしてきた。


「ふぅ、山元先輩。腹筋終わりました、っ」

「おー、お疲れ」

「次は何するんですか?」

「そーだな、次はノック受けてこい」


と、先輩に背中を押されノック練習へと向かう羽目に。


「よーし、月宮ドンドン打ってくから受けろよー」


バットを構えた山下監督がニッコリと笑う。その笑顔が怖いです。


「よーし、月宮行くぞー」


と、地獄のノックが始まった。


最初は全く取れなかったけど身体がどんどん慣れてくる。ほんと、香クンのポテンシャルに感激。ガチでこの子、運動神経結構良いみたい。


「お、月宮、いい動きだなー。次は軽めにいくぞー」


監督は嬉しそうに笑いそして、強打ノックをかます。言ってる事とやってる事違いますよ。強打すぎて取るの大変なんだけどっ!!


「っ、でやっ!!」


ジャンプでギリギリ届いたボールをイライラしながら本気(マジ)で投げ飛ばす。と、ボールを受けてくれてた先輩が何故かぶっ飛んだ。


え?


飛んじゃった?!


「おい、大丈夫かっ!!」


と、側に居た人が駆け寄る。すると倒れていた先輩は「ビックリしたぁ」なーんて、冷や汗をかいていた。いやいや、ビックリしたのはこっちなんですけど?


「月宮、お前・・・」


なにか言いたげな監督は「いや、いい。月宮!ノック続けるぞ!!」何事もなかったかのようにノックを再開。それからとゆうもの、ノックが終われば走り込み。走り込みが終われば素振り。と、夕日が消えても尚、練習は続いたのだ。


ーーー・・・コンチキショーめ、疲れたぜ。


夕食を早々に済ませ、お風呂へダイブ。


「染みるー」


ババくさいけど、一番風呂に入りたくてマッハで支度。誰かの裸見るとかクソゲーだ。


「うし、そろそろ上がるか」


誰も来ない事を確認して着替えを済ます。ほんとはもっと長く入っておきたかったんだけどなー。自販機を探してジュースを購入。


風呂上がりにはウマイな。と、空を見上げれば満天の星。


「あー、満月思い出したわぁ、最悪」


星は綺麗なのだけど、転生する前の記憶がモヤモヤ・・・私の中でモヤモヤ。忘れようとしてもあの強打した痛み消えてゆく記憶がチラチラと脳内を邪魔する。


「こんな事、いつまで続くのかなー」


ハードな練習に折れかけるハート。そこまでメンタルは弱くないと思うんだけどあんな汗まみれになる事がどーしても無理。今まで夜型だった事もあるし、太陽の光が精神的ダメージを喰らっている。


親には「甲子園」とか言っていたけど、ほんとはベンチでも応援席が良いんだよね。ってのが今日練習を終えた一日目の感想。だって、他の部員みたくそんな・・・熱くなれない。


とゆうか、テキトーに三年間過ごそうかな。なーんて出来ることならそーしたい。まあ、無理なんだろうけど。


「ははっ、萎えるー」


ボソリと漏らせば「どーした?」風呂上がりだろうか?タオルを頭に乗せた雨野先輩が隣に腰掛ける。


「ちょ、先輩、風邪気味でしょ?ちゃんと髪、乾かした?」

「ん?いや」

「はあー、ほら貸して」

「は?・・・ちょっ!」


先輩の頭から無理矢理タオルを奪い、豪快に拭いてやる。


「おい、大丈夫だって」

「文句受け付けません。拭かない先輩が悪いんです」


ある程度拭いた所で手を止めれば「どーも」素直にお礼を言われた。さっきまで嫌がってたくせに。


「風邪、(コジ)らせると面倒ですからね」

「ん、そーだな」

「今度からはちゃんと乾かして下さいね」

「ん」


小さく返事した先輩はタオルを肩に掛け、自販機へと向かう。そして、暫くしてまた隣に腰掛けてきた。おいおい部屋戻れよ、仮にも病人でしょ?


横目で先輩を追えば「夜風に当たりたいんだ」そー言ってジュースを飲み始める。あれ?私の言いたい事が通じてた?


「それにしても月宮、お前、案外センスあんのな」

「え?突然なに?」

「いや、ノックの時とかも凄かったぜ」

「えー?マジで?」

「おう、他の部員も驚いてたよ」

「へ?それは初耳だ」


センス、か。


なんか、そー言われると恥ずかしくなってくるわ。なんて照れてたら「月宮、中学はどこ中?」またしても突然過ぎる質問。正直、中学時代の記憶がないのであまりツッコんで欲しくなかったな。


「え?中学は、田舎だよ、田舎」

「ふーん、中学では結構試合出てたん?」

「あー、うーん、そーだね」


テキトーに返せば「ポジションどこだったん?」まだ話は続くみたい。終わったと思ったのに!!


「ポジションはー、外野が多かったかな?」


またしてもテキトーをかますと「へぇ、で?どうなの?」意味不明な返答をしてくる。どうなの?って、なにが?


「ん?どうって?」

「いや、一軍目指す?」


そう言われてーーーああ、と思った。先輩の目はヤル気に満ち溢れていたから。


「うーん、まぁ、えーっと」


ーーー・・・どーしよう。


なんて言えばいいのか分からない。どーにかなるでしょ!!ってなテンションで来たから正直、今は真面目に応える事が出来ない。ましてやココで「ヤル気満々です!!一軍目指します!!」そんな事を口走ってみろ、この先が不安だ。


さて、さて、どーしたものか。なんと返答しよう?


「どーした?」

「え?!あ、いえ、なんでもないです」


ヤバい、口ごもってしまった。


ほんと、こんな話は嫌いだ。


ジュースのカンをギュッと握れば「月宮」先輩のトーンが少し下がる。


「俺は、一軍いくぞ。んで、先輩達や監督を甲子園に連れていく」


小さく言葉を紡ぐ先輩。


「俺たちは去年、甲子園に行けなかった。すげー悔しかった。だから今年は必ず行く」


両手でカンを握る先輩。


「もう、あんな思いはしたくない」


目を伏せる先輩。


「だから、俺はぜってー強くなる。そして、皆を連れて行く。それが、今できる唯一の恩返しだ」


ああ、もう・・・


聞かなければ良かった、そう思って後悔。


そんな顔でそんな声で言われても今の私には何も響かない。ただ、冷めた目で見る事しか出来ない。だから、言わないで欲しかった。希望、夢、そんなどれもが今の私には欠落している。


だから、ホントにーーー・・・うんざりだ。


「先輩、もういいですか?」


酷く冷めてたと、思う。だから先輩は「は?」間抜けな顔をしていた。


「少し冷えてきたので、先に部屋、戻りますね」


やってしまった。と、思っても心はどこか落ち着いていて先輩を軽視していた。だから、かな?


その日から雨野先輩と口を効く事はなかった。

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