一軍
まだまだ続く試合。
四回の表を終え点差は一軍が三点、二軍が一点。油断はできない。と、適当にライトで構えていたら、大きな当たりが此方に飛んでくる。
ーーーあ、ボールがワンバンした。
これは、レーザービームをやるしかないのでは?と、ダッシュしてボールを掴みホームに向けて勢いよくボールを放つ。
あ。キタ、これ。
「アウト!!スリーアウト!!」
おおおおお!!!!と、グラウンドに歓声が響き渡る。
ーーーマジで出来ちゃった。
香クンの肩、最強ですか?てか、転生して最強設定になったとか?なんて考えながらベンチに戻れば「なんだよ、あの球。ビックリしたんだけど?」若干、オコな雨野先輩が待ち構えていた。
「え?届くかなーって、思って?」
ポリポリと頭を掻きながら先輩を見れば「マジでキタわ」意味不明な返答をしてくる。そして「シビレた」興奮してるのだろうか?オマエ、サイコーだわ!やっぱ。と言って抱き付いくるのだ。
って、ええええええ?!コレはなんのイベントですか?!
「すげーよ、マジで!!」
ギュウギュウと、私を苦しめる先輩。正直、苦しすぎて死にそう。
「ホームに返すとか、初めて受けたわ!」
「って、先輩、くる、しっ」
「月宮ー、天才かよ!」
「わか、ったから、せ、んぱっ、くる、し」
「あ、ああ、わりー。つい興奮した」
と、ゆっくり身体を離してくれるがナゼ?!なんで肩を離してくれないの?
対応に困り果てていた時「近い、近い」日和先輩が雨野先輩をひっぺがしてくれる。ありがとー、イケメン。
「あー、ごめん、興奮収まらねーわ」
しかし、未だ彼の熱は下がらない模様。とりあえず面倒なので、輩を放っておく事にした。
そして、試合は続き一軍、三点。二軍、二点で九回の表を迎える。二軍も相変わらずだと思う。ほんと、みんなレベル高い。
バッター、日和知忠。
先輩ガンバ。と、念を送っていたらレフト前ヒットを放ち一塁を駆ける。おお、念が通じたよ。
「よーし、いいぞー知忠ー!いいヒットだった!」
コーチも嬉しそうに声を荒げる。続いて、堤先輩がバッターボックスへと向かう。一軍メンバーの声援を背負い、バットをスイング。そして、打たれた球はぐんぐん伸びてセンターにヒット。
現在ランナー、一、二塁。ここで横山先輩の登場。
「カッ飛ばすぜー!!」
強い思いを声に出してバットを降る。大きい当たりだ。
横山先輩は「しゃあっ!!」と声を上げ一、二塁を駆けてホームに戻ってくる。先輩のおかげで此方に三点が加算。そしてその後、九回の裏を終え試合は終了となった。
一軍、六点。二軍、二点で一軍の勝利だ。
「よし、今日は良い試合ができたな」
一軍メンバーを集め監督は「もっと、強気に打っていけよ。点を取って取って、取りまくるんだ」指示を促す。
「後は、今後の事についてだが。それは一軍メンバーだけで話し合いをしろ」
慶応は、生徒だけに任せるスタイルのようだ。それはある意味、部員のポテンシャルの高さ故だろう。
「よし、では、後は任せたぞ、横山」
「うっす」
監督は横山先輩の肩を叩き、その場を後にする。
「よーし、じゃあ今日は反省会をしよう」
と、横山先輩はやる気モードで「反省点あるヤツ、手を挙げろ」仕切り始めるが。
「なんで横山が仕切ろとしてんの?」
堤先輩が待ったを入れる。
「えー、だって、監督が「任す」って言うから」
「年下のくせに、横山のくせに、童貞のくせに」
「もう、堤先輩、童貞は関係ないっすよ」
と、ゲラゲラ笑う横山先輩に「下品な笑いかた」日和先輩が呆れたような目で彼を凝視。
そんな光景を見ていた進藤先輩が「てゆうか、話、進まないんだけど」最もな意見を述べれば「ほんと、まとまりないよな、お前ら」武藤先輩がため息を吐く。
なにがしたいんだろう、この人達。と、哀れみの目を向けたと同時に反省点はもう少し気を引き締めてプレーしてくれよな。見てるコッチはヒヤヒヤだよ。雨野先輩が彼らを睨む。
「ホームから見てると、みんな動きが固い。あと、横山は余所見が多い、坂口先輩はもう少し球を意識して下さい。堤先輩はもう少し自由に動いていいと思いますよ。進藤は無駄な動きが多い、あと、日和はボーッとし過ぎ」
早口で捲し立てる雨野先輩。よほど気になっていたんだろう。なんか、面白いなこの光景。と、眺めてたら「あ、あと、月宮は後半からヤル気無くしてたな。シバくぞ」黒いオーラを放ってくる。
あ、コレは笑えないないヤツだ。
私はソッと彼から視線を外したのであった。




