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予期せぬ事態は、笑って吹っ飛ばそう

今日は一軍と二軍を分ける日。各々、今までの成果が試されるとあってかなにやら騒がしい。しかし、私には関係のないこと。


出番のない補欠か、応援席は決まったも同然だからな。ふはははっ!!傍観者最高っ!!と、浮かれていたら監督がやってきた。


「今日は選抜メンバーを決める。夏の甲子園に向けて頑張ってくれよな」


挨拶が軽すぎるんじゃない?なんて、私の心配をよそに監督はゼッケンを手に取る。


ーーー相変わらず行動がはやいな。


「まずは一軍のメンバーを紹介する。名前を呼ばれたらゼッケンをとりに来い」


一軍メンバー


【1番】ピッチャー、二年、相馬太陽(ソウマタイヨウ)


【2番】キャッチャー、二年、雨野真一(アマノシンイチ)


【3番】ファースト、二年、横山光一(ヨコヤマコウイチ)


【4番】セカンド、三年、堤海琥(ツツミカイク)


【5番】サード、三年、坂口琉依(サカグチルイ)


【6番】ショート、二年、進藤湊(シンドウミナト)


【7番】レフト、三年、武藤達也(ムトウタツヤ)


【8番】センター、二年、日和知忠(ヒヨリトモタダ)


【9番】ライト、一年、月宮香(ツキミヤカオル)


最後のメンバーを紹介し終えた途端、グラウンドにどよめきがおきる。それはモチロン、私も同じだ。


「おい、月宮、はやく取りに来い」

「え?間違いじゃなくて?」

「間違いではない、はやく取りに来い」


なーんて急かされるもんだから、ついついゼッケンを受け取ってしまう。だけど、これはなにかの罰ゲームなのだろうか?そんな放心状態の私をよそに監督は「今挙げた一軍のメンバーは、勝つに相応しい選手を選んだ。却下は認めん」強くいい放つ。


ーーー・・・おいおい、マジかよ。


「続いて二軍のメンバーを紹介する」


【10番】ピッチャー、二年、大島田(オオシマダ)てる


【11番】キャッチャー、三年、古谷春季(フルヤハルキ)


【12番】ファースト、三年、山崎虎伯(ヤマザキコハク)


【13番】セカンド、三年、戸高尚人(トダカナオヒト)


【14番】サード、三年、星宮慶次(ホシミヤケイジ)


【15番】ショート、三年、真野矢純一(マノヤジュンイチ)


【16番】レフト、二年、小川淳海(オガワアツミ)


【17番】センター、二年、塚本一聖(ツカモトイッセイ)


【18番】ライト、二年、高梨豪(タカナシゴウ)


「以上だ。試合も近くなってきている、各々練習を(オコタ)るなよ」


笑顔を向けた監督は「練習再開」手をパンッと叩く。いや、パンッ!じゃなくて!嘘でしょ?!と、ゼッケンを握りしめれば「一年でメンバーに選ばれたの、オマエだけだな」ゲラゲラと下品な笑いかたで近付いてくる雨野先輩。


「先輩、俺、どうしよう?ベンチ希望だったんだど?」

「なに言ってんだ、そのセンスをもっててベンチはねーだろ」

「いやいや、本当に無理だよー足引っ張るよー」

「大丈夫だ、オマエには才能がある」

「いや、ほんと、駄目だって・・・」

「ただこねるな、観念しろ」


そうは言われたって心の準備ができていない。ましてや、他の部員が絶対ケンカ吹っ掛けてくるよ。


「まあ、あれだ、慶応は実力主義だからな」

「全然、嬉しくない」


監督は拒否は認めないと言っていた。だから、本当に腹をくくるしかない。だけどさ、一軍だよ?試合もいっぱいあるんだよ?負けられないんだよ?どーしてこうなった?!大きな溜め息を吐けば、近くに居たキャプテンが「一緒に頑張ろうな!!」親指を立ててはにかむ。


ーーーその指、折っていいですか?


「はぁ、マジかぁ、テンション、下げ下げ」

「そう言わずに頑張ろうや」

「うるさいです、雨野先輩」

「決まったもんはしょうがない。やるぞ、雨野。成績出して文句言ってた奴ら、見返そうぜ」

「なーに、一人で熱くなってんすか?」

「そりゃあ、熱くなるさ」

「この人キライだー」


先輩の肩に肩パンすれば「また、泣きまちゅか?」ふざけた事を抜かすので腹に一発お見舞いしてやった。くたばれ、クソが。と、外野仲間の先輩を見つけたので「日和(ヒヨリ)先輩、お隣同士宜しくお願いしますね」握手を求める。


「香クンだね、宜しく。ってか、初めて話すね」

「そういえば、そうですね」

「けど、こうやって見ると、香クン」

「ん?俺がなんですか?」

「可愛い顔してるね、今度一緒にお昼食べようよ」


なんとっ!!


イケメンな日和(ヒヨリ)先輩にナンパされました。


「何をおっしゃいますか、日和先輩はめっちゃっ!!!イケメンっすよね!!羨ましい!!お昼ですか?モチロン、是非とも!」

「ははは、うん、ありがとう。でも、そんな事ないよ?」

「いやいや、マジで。カッコよすぎて鼻血出そうです」

「なんか、そう言われると照れるね?」


と、困った顔をするのだけどイケメンは何をしても画になる。目の保養二人目ゲット。無論、一番目はマネージャーの桃川チャンだ。そんな桃川チャンの笑顔を思いだしながら練習を終え、自室にて葛藤。それは「一軍」についてだ。


日和先輩に宜しくと言ったはいいものーーー・・・本音は「補欠が良い」それだけ。ベッドに項垂れると「試合、頑張ろうな」相馬先輩が輝いていた。それはもう、キラキラと。


「相馬先輩、それは嫌がらせですか?」

「何を言っている、月宮クンのお祝いだ」

「だからって、身体中にツリー用のライト巻かなくても良いのでは?」

「いや、こう、目立った方が良いと思って」


ハハハ!!と、笑う先輩につられたのかキャプテンまでもがライトを巻き付けて高々と笑い声をあげる。


ーーー・・・二人してなにやってんっすか?


「いやー、月宮、キャプテンとして俺は嬉しいぞ」

「はい?なにが?」

「オマエなら、やると思っていた!!」


と、笑っているのだが古谷先輩は二軍だ。悔しくはないのだろうか?


「それよりキャプテン、そろそろライト取らないと火傷しますよ」

「あ、そうだな。火傷はいかん、火傷は」


いそいそと、身体からライトを取り外す。すると、相馬先輩までもが慌ててライトを外し始めた。いや、火傷にならないとか思ってたのか?だとしたらかなりの阿呆だ。


「よし、じゃあ俺は部屋に戻るよ」

「はい、キャプテン!!お疲れ様です!!」


相馬先輩、イチイチ声デカイよ。


「じゃあな、月宮」

「うっす」


それじゃあ。と、キャプテンは部屋を後にする。けど、その背中はどこか寂しそうだった。

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