三話「バルフの世界へ」
「で、今回の転移者はどこの世界にいるんだ?」
「今回は、『第8世界線』の『バルフの世界』だ」
「えぇ......また『第8世界線』かよ.......今年入って何回目だよ........」
「まあ、数十回は行ってるだろうな」
「昨日助けた工藤なんとかって奴も同じ世界線だったし、世の中には第8世界線しかないのかよ!?」
そんなことを話しているうちに俺達の職場である『下等世界転移対者策本部』へと着いた。
俺は作業着を着て本部内の『世界線転移室』へと行き、シルトはこちらから俺をサポートするため『通信補助室』へと向かった。
たまには変わってくれないかな。
「それじゃあ、いつも通りに頼むぞ」
「三分で終わらせてやる。」
そう言い終えると、視界がグニャリと曲がり、体が伸びるような感覚に襲われた。
最初は気分が悪くなり嘔吐することもあったが、慣れた物だ。
視界が明るくなるとそこには、柔らかな緑色の草原が広がっていた。
俺はズボンの左ポケットから特殊なイヤホンを左耳に付けた。
「こちら新助。転移が完了した。世界線異常はあるか?」
「こちらシルト、異常なし。」
「よし、転移者の捜索へと向かう。地図の転送を頼む。」
「了解」
俺の目の前にこの『バルフの世界』の地図が写された。
地図の真ん中あたりに赤い円がある。どうやらこの円の範囲内に転移者がいるらしい。
「なぁシルト。」
「何だ。」
「この円の範囲、10kmくらいないか?」
「20kmあるぞ。」
「範囲広すぎるだろ!もっと縮められねぇのかよ!」
「無いよりマシだろ。」
「ま、まぁ確かにそうだけどよ....」
「はぁ....それじゃあ行きますか。」
俺は中心へと向かって行った。