一話「時空のおっさんはつらいよ」
__時空の、おっさん?俺の協力者か?いや、俺を殴ったのはおそらく奴だ。協力者ではないだろう。
無関係の人間を巻き込むのは心が痛むが、ここに居られては戦いの邪魔だ。悪いが消えて貰おう。
「お前がここに居ると邪魔だ。悪いが消えて貰う。」
「食らえ!ライトニングブレード!!!!」
俺の手から、眩い光とともに、稲妻が放たれた。これで奴は死んだはずだ。
目の前に男の姿は無かった。威力が強すぎて消滅してしまったか。
「さぁ魔王、再び戦いを初めよう。」
そう言い放ち、俺は魔王の方へ向いた。
だが、目の前に居たのは魔王ではなく、さっき消滅させたはずの男だった。
「な、何故だ!?消滅させたはずじゃ!?」
「どうでもいいけど、ライトニングブレードって名前、ダサくね?」
そう言い放つと、男は俺の股関を蹴った。
痛みのあまり、俺は地面にうずくまった。
俺は男に担がれて、そして気絶した。
___気が付くと俺は、家の中に居た。元の世界の家だ。
情けないが、俺は泣き出した。家に帰れた嬉しさと、魔王を倒せなかった悲しさの両方の意味で、
一人の男が、その様子を見守っていた。
「ラーブラの世界に転移した、工藤竜希。無事に帰ったぞ。」
「そうか、ならもう帰還していいぞ。」
「全く。最近は転移者が多すぎるんだよ。こっちの気持ちもわかってほしいもんだけどな。」
「まあ、転移者を野放しにしておいたら、より危険な事態を引き起こすかもしれねーし、これが一番安全なんだよ。」
「ま、そうかもな。」
「それじゃ、これからも世界を守り続けてくれよ!時空のおっさん!」
「お兄さんだけどな。」
いつの間にか、男の姿は消えていた。