浮雲の小物店での一時
その後順調に敵を殲滅した彼女らはまた見回りゴブリンが降りてこないうちに町に戻るのであった
道中葵があっちにいったりこっちにいったりしたためくる時よりも帰りに時間がかかってしまったが何事もなく門をくぐることができた
「そんじゃアイテム売るとこでも探しますか」
「そうね、さすがにこんな端金じゃろくな装備買えないだろうしね」
「んじゃまた狩りに行く時読んでくれよ。それまでに装備整えてくるからさ」
「葵、双盾っなんてひねりのない装備で出てこないでよ?」
「…さぁって俺は奥から見てこようかなぁ」
「あ、こら逃げるんじゃないって全く」
あからさまに視線を反らした葵は駆ける様に人混みの中に入っていきその姿を消すのだった
それに彼の次の装備が確定した彼女はため息をつきながら手近な露店を覗くのだった
一通り見てわかったことだがこのゲーム1つの町に嫌という程同じ類のアイテムを売っている露店が数多く存在していた
さすがに隣同士で張り合っている店はないがどこも似たり寄ったりの値段で取引されており無駄の一言に尽きる
メインストレートではあまり代わり映えしなそうなそんな状況を見て浬恵はものは試しと左右の路地を出歩いてみることにした
どうせどこも同じならば裏路地で店を構えている様な偏屈さんを探してみることにしたのだ
本来ならメインストリートてわことを済ませてしまうかもしれないがこれはゲームなのである
少しくらいロマンを求めてもバチは当たらないと思うのだ
だがだからと言ってそういった店を簡単に探し出せるはずもなくさまようこと十数分
彼女は絶賛迷子になっていた
多分地図を開けばメインには辿り着けるかもしれないが当初の目的から離れてしまうのでそのまま歩き回っているがその気がしれない
だが常人にはわからないことをやってのけるのが彼女であり元に見つけてしまうのである
もう幾つの道を曲がっただろうか
もうそろそろメインに戻ろうかなと思っていた矢先それが視界に入ってきた
「探してみるものだねぇこりゃ」
石造りの街並みからは異質さが混じる所々に木材が使われている少し古めかしい建物
木製の扉にはOpenと張り紙が貼ってあるが最近使われているのかわからないが所々が破けている
声をかけながら扉を押し開ければ金属の軋む音と共に開くその扉の奥には棚やショウケースに並べられた商品の数々が出迎えてくれた
建物の外見からは想像し難かったが中は掃除が行き届いておりチリ1つ見受けられない
未だ誰も出てこないが商品を見ることは自由だろうと物色していくと露店では見受けなかった物珍しいアイテムが並んでいた
それにテンションが高まった彼女は触らないながらに商品を見回しながら時間を過ごしていく
どれくらいそうしていただろうか
不意に後ろから床の軋む音がしたため振り返ればそこには彼女の腹くらいしかない小柄な顎髭を生やしたおじいさんが驚いた表情をして立っていた
「あ、お邪魔してます。もしかして入っちゃまずかったですか」
おじいさんが驚いた表情をしていたために少し申し訳なくなってきた浬恵は頬をかくとこの場を出ようと一歩踏み出す
その時なった軋む音で正気に戻ったのかおじいさんははっとした表情を一瞬見せると首を横に振った
「久方ぶりの客人で驚いただけですのでどうぞ見ていってください」
「小娘が冷やかしにくるんじゃねぇって怒られるかと思いましたよ?」
「この様に綺麗なご麗人を捕まえて小娘などとても言えませんよ」
「お世辞を言われても買えるかわかりませんよ」
「さっきのように見ているだけでも構いませんよ。見られるだけでもその子達は喜びます」
その言葉に疑問を持った彼女はちょうど近場にあった道具をはたっと見つめてみるが喜ぶとはどういうことだろうか
それに首を傾げると隣でおじいさんが笑っている声が聞こえてきた
「老人の戯言を本気にしてはなりませんよ娘さん。喜んで見える私が異常なんですから」
「そうですか。でもそれだけこの子達を愛してるんですね」
「愛して…なるほど、いい言い回しですね」
そう返してみるとおじいさんは目を見開き驚くと次は大声で笑いながらそんなことを言ってくる
なんだか馬鹿にされた様な気がした彼女は口を尖らせながらふてくされてみた
「そうムクれないでください。私は久方ぶりにいい人に会えて気分がすこぶる良いのですよ。そうだ、友好の証におひとつお譲りいたしますがどうですかね?」
「え、悪いですよそんなの受け取れません」
「老人の戯れにお付き合いすると思ってここはひとつ」
そう言い押しつける様にひとつのアクセサリーを押し付けてくるおじいさん
そうなるととことん弱くなるのが浬恵という少女である
結局断ることができずに受け取ってしまっそそれは首飾りの様である
白と黒の糸で編みこまれた紐に通っているのは直径10センチ程の円盤が2つ
円環の虹をモチーフにしているのか1センチ幅の円が7色連なるそれは綺麗の一言に尽きる
「本当にこんな綺麗なものもらっていいんですか」
「アイテムも店に飾られているよりもあなたの様なご麗人につけてもらった方が喜びます。どうぞ受け取ってやってください」
そうやって少し話をした後お礼を告げてステップをせんばかりに歩き出した彼女だたがどうせならアイテムを安値で売ればまだ良かったのではないかと思い至り慌てて来た道を逆走する
だがそこには更地があるだけであの石と木で作られた建物は見る影もなく静寂がその場を支配していた
呆然と立ち尽くす彼女の首元であの時間が嘘でないと証明する様に首飾りが七色に輝いた