初めての戦闘
賑やかな大通りを通り抜け開け放たれている大門を通り抜ける
今更だが始まりの町は高い城壁により囲まれており町というよりも要塞に近いかもしれない
だが今は町よりもフィールドに興味を惹かれてしまう
地面が見えないほどに背の低い草からなる草原が町を出た2人を向かい入れた
見渡せばツノの生えた膝下くらいの大きさをしたウサギ、角兎と戦う同じプレーヤーであろう人たちがそこかしこで武器をふるっている
角兎は群れる習性でもあるのか少なくとも3、4匹からなる小さな群れを作って行動している様だ
その群れに剣なり槍なりを持ったプレーヤーが3、4人掛かりでひっきりなしに戦い回っている
さすがに門前ということもあり結構な人数が集まっており手持ちぶたさにしている組みが何組かいたりもする
「さすがにここじゃ効率悪そうだな。」
「待つのも退屈だし奥いくしかないかな」
「ポーションの数もあんまないしオススメできないんだけど仕方ないか」
全く考えていなかったわけではないが想像よりも多いプレーヤーが自分達のテリトリーがあるかの様な狩りを町周りでされていては割り込むのも大変そうと判断し2人は戦いの邪魔にならない様に草原の奥へ足を運んでいった
しかし行けども行けどもリポップ待ちのプレーヤー軍は消えそうもない
逆に狩場を探すプレーヤーが増えていく始末である
「これここの草原で狩るの無理そうじゃない?」
「それは思ってたとこだけどさすがに横道流れて死に戻りとか嫌だぞ俺」
「でも見た感じみんな平気で狩ってるからワンランク上くらいなら平気なんじゃない」
「…みたいだな。そんじゃ右にでも行きますか」
見回す限りみな無理なく兎を狩っているところを見て考えを改めた葵は姉を引き連れ林の中に入っていった
ものの数分林の中を歩いていると丘のような少し開けた場所にやってきた
地図で確認したところ『ゴブリンの丘』と言うところらしい
出てきた場所はまだ平地のようだが奥に行くにつれて盛り上がっていくここはなるほど丘のようである
「ゴブリンの丘だってさ」
「丘の割にはさっきの草原と大差ない高さだぞ?」
「んー、向こうに登るにつれて敵が強くなるってことじゃない?」
「あーなるほど、んじゃここいらのやつは雑魚ってことかな」
「あの兎よりは強いだろうし慢心してやられないでよ?」
「俺は守らせたら上から数えた方が早いんだからな?」
「それは別のゲームででしょ」
「これは手厳しいこって」
そう悪ふざけをしながらも手で合図をしながら一匹のゴブリンに狙いを定めていく2人
目前のゴブリンは体長100センチ程度と小さく、細い手足とぽっこりと太った体というアンバランスな体型をしている
顔は言い方が悪いが少し気持ち悪く潰れたようなその顔はあまり見ていたいものではない
下っ端だからか特に武装が見られないゴブリンの背後からゆっくり近づきながら距離を詰めていく
そしてもう5メートルもないかの距離になると葵が盾を構えながらゴブリンに突っ込んでいった
別段叫んでいったわけではないが突撃してくる葵に気づいたゴブリンは合わせたかのように拳をふるってきた
どれほどの威力かわからないそれをブレーキをかけながら盾で受け流し右足を膨らみのあるお腹に差し込む
鈍い音がなるとゴブリンの頭上に緑色のゲージが表示され五分もいかないほどの空白を作る
再度ゴブリンが拳をふるってきたのを横目に葵はバックステップにより距離を取った
「おいおい、あれでそれしか削れないのかよ」
「あんたが攻撃スキルとってないからでしょっ」
その空いた距離を詰めようとゴブリンが一歩踏み出したところに見つからないように回り込んでいた浬恵が顎を蹴り上げた
そのまま片足で跳ね上がると身をひねり無防備な後頭部へ追撃を叩き込む
その勢いに負け前にたたらを踏んだゴブリンが顔を上げるのに合わせて再び距離を詰めた葵が顔面に盾で強打を食らわせた
怒ったゴブリンが拳をふるう前に体制を立て直した浬恵がお腹に刺さるような蹴りを入れればゴブリンは光の粒子となって消えていった
「…めっちゃ弱いな」
「もうちょっとまともなAI積んでほしいわね」
そんな拍子抜けの戦いにため息をこぼすが初めはこんなものと割り切りゴブリン狩りを決行するのだった