初めては不安で一杯
その後誰かと話すでもなく自宅に到着する
弟が片付けたのか玄関にあった大きな段ボールはその姿を消し普段と変わらぬなにもない玄関が出迎えてくれた
食卓まで足を運べばそこにはまだ湯気が上がるチャーハンに網を被せて置いてあった
その横には見慣れぬ少し大きな黒い箱とそれに貼られたピンク色の付箋
おおかたあれが朝話題に上がったゲームであろう
『昼は簡単に炒飯にしておきました。後これが噂のハードだから興味があれば使ってくれ』
殴り書かれた文字は汚いがまぁ読めなくはない
ご飯よりもそちらの方が気になってしまい先に黒い箱に手をかけてしまう少女
席につきながら外装から取り出すとそこから出てくるのは黒いメタリック調のフルフェイスメットと数枚の紙切れ
くるくるとメットを見回すが外見はバイクに乗るときのヘルメットとなんら変わりそうにない
内側を覗くも一緒で肌触りのいい材質のフワフワしたもので覆われているだけだった
強いて違いを言うならば首の後ろ側がやたら長めに設計されているくらいだろうか
「え?まさか葵に騙された?ただのヘルメットじゃん」
その後紙切れの方に目を向けてくれればまだよかったかもしれないが彼女は何の気なしにそれを被ってしまった
自分で買いに行ったわけではないのにやけにしっくりくることに少しの疑問はあったが完全に被ってしまうと変化が起こった
まず首回りにひやっとした感覚が伝わってきた
どうやら何かで固定されたようだ
ついで首の後ろ側に埋め込まれたチップに何かが触れる感覚が伝わったと思うとそこから激痛が走った
このチップ神経に直接つながっているのか少しぶつけただけでかなりの痛みが走るのだが今までの比にはならない激痛が全身を駆け巡る
そうして次第に五感の感覚が消えていくのがうっすらとわかる
薄れゆく視界に辛うじて映ったのは黒い背景に血のように赤い文字で『loading』と映し出された眼前のでいすぷれいだった