少ない学友
〇〇県立咲見高等学校
ゆるい校風でありながら決して偏差値が低いわけでもないその高校が2人の今通う高校である
今日はそんな高校の終業式である
「おい、今日は終わったら速攻帰ってあれやろうぜ」
「お、お前もやっぱり手に入れてたか、いいぜ、チュートリアル飛ばしてで歩こうぜ」
「おいおい、なにがあるかわかんねぇからさすがにチュートリアルはやろうぜ」
「いいなぁ帰宅部は、俺なんて部活帰りよったら既に売り切れだぜ。もうすげぇがっかりだよ」
高校が近づくにつれ人が増えてきたその通学路でわ終業というのも相まってみな楽しそうに語り合っていた
あの2人もその口で夏休みのことを楽しそうに話していた
「夏休みどうするかなぁ、昨日読んでたのは読みきっちゃったし、葵はまた、ゲーム三昧で相手してくれないだろうし、帰り書店寄ってくかなぁ」
「ねぇちゃんも久しぶりにやるか?ちょうど昨日やばいハードでたし」
「ん?周りが結構口にしてるあれってやつ?そんなすごいのでたの?」
「どうもVRゲームらしいぜ?多分父さんから送られてきたやつに混じってるだろうし、噂が本当なら初のVRゲームになるしやって損はしないって」
「え、なにそれ、初耳なんだけど」
「だろうよ、ねぇちゃんネット見ないし、調べようともしないからゲーム買うとしたらいつも一月は遅れて買ってくるし」
「だってその調べる時間に本とか読んでた方が楽しいじゃん」
「そんれなら俺のゲーム画面見ながら羨ましがらないでくれ。あれ結構やりづらいんだからな」
「いつ見ても暑いわねあなたたち」
「妹よ、ならば私たちも見せつけてやろうでブワハ」
鈍い音がした方を見れば同じ制服を着た男が路上に突っ伏していた
それをやったであろう少女はカバンを肩に掛けながらこちらにジト目を送ってきている
「あ、おはよう、凛ちゃん。今日も30度超えるみたいだし早く夏終わって欲しいよね」
「おはよう凛、うちのねぇちゃんにその手のことは通じないってそろそろ気づけ」
「くっ、なんでそういうことには頭が回らないのよ」
「少しくらい欠陥があった方が女の子は可愛いものなのだよ。なぁ葵くん」
「いえ、そこで同意を求めないでください龍治先輩」
いつのまに復活したのか龍治は葵に手を置きながら同意を求めるがその手を払わた
「話は変わるが葵くんたちもあれをやるのだな。私たちも根を詰めてやりこむので出会えた時は一緒に楽しもうではないか」
「勝手に私もガンガンやるって感じに言いふらさないでくれないかしら」
「おや?妹もあの手のゲームは寝る間も惜しんでやると思っていたが私の勘違いだったか」
「いや、勘違いじゃないけど、ってそうじゃなくて…」
隣でなにやら楽しそうに兄妹の絆を深めている2人は置いておき
隣で微笑ましそうにそれを眺めている姉を急かして高校に急ぐ葵
あぁなった2人は放置が一番楽だとこの4ヶ月程で学んだからである
時は流れて放課後
「んじゃ俺はこのまま帰って昼飯作っておくから気兼ねなく行ってこい」
「えぇ、先生に呼び出されただけなんだし少しくらい待っててくれてもいいじゃん」
「俺は早くあれをやりたくてウズウズしてるんだ。今回はねぇちゃんよりもゲームが優先だね」
そう言うなり葵は荷物を手早くまとめると早足で帰宅していくのだった
仕方なしに彼女は荷物をそのままに職員室に気怠そうに向かうのだった
「お、日向姉早かったな、ん?あぁ弟に逃げられたからか」
「まるで弟といつも一緒みたいに言わないでください。たまには1人の時もありますよ」
「そこで友達と一緒って出ないのが先生は悲しいよ」
目の前でハンカチを目元にあて鳴き真似をする男性教諭
筋肉質の体の彼がそれをする姿ははっきり言って気持ち悪い
「先生、100人の友人よりも1人の心友の方が何倍も価値があるという話もありますから大丈夫ですよ」
「これを親御さんに渡せれば渡しておいてくれ」
「あの、教室で渡してもらえれば早かった気がしますが」
「…ぁ、そうだったな」
この後盲点だったと言わんばかりの表情を作る先生をおいて彼女が早々に立ち去ったのは言うまでもない