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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

留守番

作者: 千助

思いつきと勢いで書きました。

目を覚ますと、部屋には誰もいなかった。


気配もしない。


シィン、と静まり返った部屋の中、ひゅー、ひゅー、と喘鳴音のしだした胸を押さえ上半身を起こした。


あぁ、またか、という感情が芽生える。


途端、胸の中で切なさが疼く。


(そんな訳ない。確認しよう。)


電話まで這って行き、電話をかける。


プルルルルルルップルルルルルルッ


緊張で心臓がジーンとした。


息が詰まりそうだった。


プルルルルルルップルルルルルルッ


「ひゅー、ひゅー、」


(早く終わらないかな)


プルルルルルルップルルルルルルッ


絶望的な感情が心を支配し始める。


(きっともうだめなんだ。もう、出てくれないんだ。)


腕が疲れて、受話器を床におろす。


「ピーッという音に続いて、お名前と、ご用件をお話しください。ピーッ」


「ひゅー、…ゲホッゲホッ、ゲホゲホゲホゲホッ、ゼィィィ…ゲホッ」


ただの無言電話だ、これじゃあ。


そんなことが気になった。


カチャッ


『もしもし、どした?なんかあった?』


えもいわれぬ安心が心の隅々にまで染み渡る。


(よかった、勘違いだった。)


なんでもないよ、と言おうとした。


しかし出たのは、胸が焼けつくように痛む激しい咳だけだった。


「ゴンゴンゴンゴンッッッ!、ひゅぅぅぅっっ、げほっげほげほっごほっゴホッ」


何度も何度も何度も何度も


おかしいくらいの咳が出る。


『っおい!響矢!』


ブツッ…プーッ、プーッ、プーッ…


《重荷になってはならない》


呪いのように、響矢の頭から離れない言葉だ。


(仕事してるんだから、邪魔しちゃダメだ)


布団へ這って戻り、布団の中へ潜り込んだ。


「ゴンッゴンッゴンッゴンッ」


息が出来ない。


(本格的に、やばいなこれは)


薬を吸わなければ窒息死しそうだ。


棚に行き、手をかけた。


バタバタと色々なものが落ちてくる。


「ひゅぅぅぅっっ、げほげほっ」


籠に手をかけ、手前に引っ張る。


ガッシャーンッ


アルミの箱とか薬とか、救急セットがばらばらと落ちてきた。


その中に薬を見つける。


シュッと口で噴射し無理やり喉に吸い込んだ。


「……はぁ…はぁ…はぁ」


どうにか落ち着かせることに成功したようだ。


動けずに、しばらくその場で荒い呼吸を整えていると、


「響矢っ!?いるか!」


乱暴にドアが開く音がして、由彦が飛び込んで来る。


「…よしひこ…おかえりぃ」


良かった。帰ってきた。


捨てられたんじゃなかった。


「大丈夫かよ!病院いくか?」


ゆるゆると首を振る。


「…仕事…頑張って」


笑うと、由彦は怒りを孕んだ真顔で響矢を見下ろした。


「こんな状態のお前をほっとけるわけないだろ。」


響矢を横抱きに、布団へ寝かす。


「…ごめん…迷惑、かけた…」


まだ僅かにグルグルと音のする胸に由彦は顔をしかめて首を振った。


「迷惑だなんて思っちゃいねーよ。」


そして、由彦は響矢に甘い口づけをした。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 萌えといいますか…二人の関係がイイなって率直に思いました。あまり読まないジャンルなのですが読みやすく恋愛ってイイなって思えました(o´艸`) [一言] いつも感想頂いてうれしい気持ちでいっ…
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