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同年同日 23時14分

 薄暗い店内に、女が二人。


 若い方の女は、そのキャバクラで働くホステスだった。身体に張り付くような滑らかでツヤのあるドレスに身を包みながらも、その表情は暗い。


 隣に座る着物姿の妙齢の女もまた、物憂げな顔をしている。


「もう、潮時かしらね……」


 着物姿の女が言った。それなりに歳はとっているだろうが、その年齢は読めない。五十か、四十か……三十ほどに若くも見えるが、実は六十代なのかもしれない。そう思わせるほどに、その仕草は落ち着き、洗練されている。かつてはその美貌で、何もかも手に入れ自由自在だったろう。そう思わせるほどの、綺麗な顔をしている。


「そんな……そんなこと言わないで、ママ」


 若い女は甘えるように言った。この女もまた、見目麗みめうるわしい外見をしていた。


「かつてはここも、それはもう賑わった店だったけどね……。時代なんだわ」


 そう言って、着物の女は慣れた手付きで酒を作る。マドラーを二回回かいまわし、若い女に差し出した。


「あなたも仕事辞めて、男見つけなさい」


「そんな……そんな……」


 若い女は涙を溜めて泣き出した。


「ママ、私が子ども産めない身体だって、知っているでしょう!?」


 着物の女は思わず若い女から目を逸らした。「誰が私なんて貰ってくれるのよ……!」


「あなたは良いコよ。子ども作るのだって、今は色々な方法があるじゃない」


「私……学歴も資格も何もない……できる仕事がないわ……」


 「甘えるんじゃないよ!」。着物の女は言った。


「やる前から諦めてて何が出来るっていうのよ!」


「お願い、ママ……。私、なんでもするわ。頼れる人がいないの。料理を覚えるわ。だから私を置いて。このお店をレストランに改装したらいいじゃない。ねぇ、ママ……」


 若い女は着物の女に取りすがった。


 静かな店内に、すすり泣く声が響く。


 着物の女は思わず若い女の手を握ってやるも、また顔を背け、唇を噛んだ。

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