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運命の不在証明

「何をしに来たの?」


 アネモネが訊ねるが、僕はその問いには答えず、彼女の後ろを見た。

 フォーカスが眠る場所を。


 そこには、花束が置かれていた。

 種類にもばらつきがあり、そのあたりに生えている花が多い。


「その花はアネモネが?」

「……ええ。フォーカスさん、地上の花を近くで見たことがないって言ってたから」

「お前、やっぱりフォーカスのことが……」


 好きだったんだな。

 悲しそうな顔をするアネモネを見て、僕はそれを言えなかった。


「5年の間に、お父さんは病気で死んでいました。多くの村人はアルモニーを恐れて逃げました。でも、お母さんが待っててくれた。残った村の人も私を迎え入れてくれた。私はきっと――過去をやり直すことができるとしても、同じことをしてしまいます」


 フォーカスを殺すため、アネモネを利用したアルモニー。

 その時にアネモネは村人全員を人質に取られていた。

 だから、彼女を愛したフォーカスを裏切った。いや、フォーカスはきっと裏切られたなんて思ってないんだろう。

 だって、全部わかってた上で死んだのだから。


 むしろ、裏切るのは僕の方だ。


「アネモネ。僕はいまから、フォーカスの墓を掘り返し、その肉を食べる」

「……理由を聞いてもいいですか?」


 彼女は僕を止めることはせずに、理由を聞いた。

 僕は説明をする。

 オークがエルフの村を襲ったこと、ノーチェが生贄になりそうになっていること、彼女を救うためには力がいること、そして捕食スキルによって、フォーカスの死体を食べ、経験値を入手すること。


 フォーカスの経験値は50000だった。僕が倒したことになった、彼の肉体を食べれば、経験値が一気に30万入手でき、次の進化先への扉が開く。


「そうですか……でも、ごめんなさい。彼はもう……ここにはいないの」

「え?」

「ヴィンデさんが去った翌日、私達は彼の遺体を海へと流したの。彼は死ぬなら海で死にたい、そう仰ってましたから」


 彼女は「もっとも、村人が手伝ったのは、私と彼のためなどではなく、彼の遺体がここにあったら不安だったんでしょうね」と悲しい笑みを浮かべた。


 フォーカスの遺体がここにはない。

 その言葉に、どこか安堵してしまった自分がいたことに気付き、腹が立った。ノーチェのためなら命を捨てる覚悟があるにもかかわらず、僕と約束を守るために、僕の頭を撫でてきたフォーカスのことを思い出し、彼を食べるのを躊躇っていた。

 すでに彼は死んでいるというのに。


「ちょっと待っていてください」


 アネモネはそう言うと、歩いてどこかに向かった。

 一人残された僕は、どうしたものかと悩む。

 フォーカスの遺体がここにない以上、エルフの森に戻り、一体でも多くのオークを捕食し、レベルを上げるしかない。

 だが、森の中のオークの数も限りがある。


 それなら、一度このあたりの魔物を集めて食べたほうが効率がいいかもしれない。


【魔道書:ヒールを入手しました。固定化するか破棄してください】


 場違いなメッセージが流れた。

 エルフへの手土産にしようと思っていた魔道書だ。アイテムBOXから紙を取り出し、固定化させた。

 と同時に、アネモネが帰ってきた。

 何かを持っている……あれは!?


「お待たせしました」

「アネモネ、それ……」

「はい、フォーカスさんの遺品です」


 彼女が持っていたのは、アザラシの毛皮だった。

 フォーカスが大事に持っていた。


「海に流す前に、これだけは私が貰いました。これをヴィンデさんに差し上げます」

「え?」

「フォーカスさん――セルキーという種族はこの毛皮もまた肉体の一部です。全ては無理でしょうが、これを食べたらヴィンデさんは成長できるのでは?」

「……いいのか? だって、これはフォーカスの」

「ヴィンデさん、私が最後に言ったこと覚えてます?」


 アネモネが訊ねた。

 忘れるわけがない。


『朝顔にもう一つ。そして、私の名前の由来であるアネモネと同じ花言葉があります――その花言葉は――儚い恋。人とそうでない者。私達の運命は、最初から決まっているんです』


「あの時、ヴィンデさん、こう言いましたよね。それなら、僕がそんな運命は存在しないってことを証明してやるって」


 その時の言葉を思い出したのか、アネモネは柔和な笑みを浮かべて言った。


「証明は終わりましたか?」

「……いや、まだだ」

「それなら、これが必要でしょう。きっと、あの人もそれを望んでいます」


 アネモネはそう言って、俺にアザラシの毛皮を渡し、去って行った。

 これを僕が食べるところは、やっぱり見たくないそうだ。


 ありがとうな、アネモネ。

 証明を今からしてやるよ。


 僕は決意を新たに、毛皮を口に入れた。

 とても硬くて、しかも毛ばっかりで本来は食べられたものではなかったが、それでも無理やり食べる。

 フォーカスに、アネモネに感謝しながら。


【スキル:“捕食”の効果により経験値78000取得】

【ヴィンデのレベルが上がった。各種ステータスがアップした。スキルポイントを手に入れた】

【ヴィンデのレベルが上がった。各種ステータスがアップした。スキルポイントを手に入れた】

     ・

     ・

     ・

【ヴィンデのレベルが上がった。各種ステータスがアップした。スキルポイントを手に入れた】

【スキル:捕食のレベルが6に上がった】

【スキル:経験値貯金のレベルが2に上がった】

【称号:大物食いを取得】

【スキル:胃拡張を取得した】

【称号:経験値積立人を取得した】

【スキル:経験値贈与を取得した】


 ……レベルが17まで上がった。

 一気に16レベル増えた計算になる。


 捕食レベルが上がったのもこれからのことを考えると大きい。でも、今の僕はまだまだ弱い。こんなんじゃ、まだオーク500体は倒せない。

……………………………………

名前:ヴィンデ

種族:G.F.サラマンダー(メラニスティック種)

レベル:17(+16)


HP 593/593(+92)

MP 435/435(+71)

状態:記憶喪失

スキルポイント 50(+32)


攻撃 391(+40)

防御 336(+36)

速度 447(+31)

魔力 296(+30)

幸運 32

経験値補正+30%


スキル:【捕食:Lv6】【言語理解:Lv2】【叡智:Lv3】【ステータス把握:Lv4】【スキル鑑定:Lv6】【索敵:Lv4】【泡:Lv3】【献身:Lv1】【硬い鱗:Lv2】【鋭い歯:Lv3】

【肺呼吸:Lv3】【土魔法:Lv4】【鮫肌:Lv2】【HP自動回復:Lv3】【忠義:Lv2】【毒攻撃:Lv2】【回復魔法:Lv3】【マッピング:Lv3】【嗅覚強化:Lv3】【変身:Lv4】

【擬態:Lv2】【良眠:Lv3】【テイム:Lv2】【君主:Lv3】【称号鑑定:Lv6】【挟力UP:Lv1】【悪食:Lv2】【アイテムBOX:Lv5】【尻尾攻撃:Lv2】【MP自動回復:Lv2】

【水魔法:Lv2】【風魔法:Lv1】【火魔法:Lv1】【美味しそうな香り:Lv2】【火の息:Lv3】【麻痺攻撃:Lv3】【感覚強化:Lv1】【軟着陸:Lv3】 【暗闇攻撃:Lv1】【鑑定:Lv2】

【脱兎:Lv3】【スケープゴート:Lv2】【経験値貯金:Lv2】【毒針:Lv1】【舌攻撃:Lv1】【蜜採取:Lv1】【殻篭り:Lv1】【吸着:Lv1】【体当たり:Lv2】【孤独耐性:Lv1】

【称号変換:Lv1】【消化促進:Lv1】【沈黙攻撃:Lv1】【猛毒攻撃:Lv1】【酸攻撃:Lv1】【錬金術:Lv1】【魔導書記:Lv2】【記憶固定:Lv3】【罠作成:Lv1】【スキル変換:Lv1】

【消臭:Lv1】【火炎の息:Lv1】【猪突猛進:Lv5】【胃拡張:Lv1】【経験値贈与:Lv1】



称号:【転生者】【異世界魚】【記憶喪失】【捕食者】【蟹の天敵】【子持ち】【子沢山】【スキル収集家見習い】【魔術師】【出世魚】

【称号収集家見習い】【ハートブレイク】【ネームドモンスター】【毒持ち】【癒し手】【迷宮ウォーカー】【魔王を討伐せし者】【スキル収集家】【共生】【支配者】

【称号収集家】【貝の天敵】【レアアイテムイーター】【異世界有尾類】【レアモンスター】【スキルマニア】【小金持ち】【四大元素魔術師】【レアハンター】【怪人10面相】

【称号マニア】【木登り手習い】【暗闇持ち】【スキル辞書編纂者】【蜂の天敵】【蛙の天敵】【スキル編纂室長】【麻痺持ち】【沈黙持ち】【猛毒持ち】

【称号辞書編纂者】【蟻の天敵】【巣窟破壊】【蒼の守護者】【アルケミスト】【勉強家】【信者】【逃亡者】【大逃亡者】【罠師】

【称号辞書編纂室長】【成長期】【大物食い】【経験値積立人】

……………………………………

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