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エルフの森への侵入

 走り続けること10時間、草原を南下し、夜になって見慣れた川が見えた。

 飛び越えるには広い川、かつて僕が下って行った川だ。


 僕はその川に向かって盛大にジャンプし、


「変身!」


 兵隊蜂――ソルジャービーに変身して空を飛ぶ。

 ついでに、経験値貯金でたまっていた僅かなポイントをレベルアップのために使う。


【ヴィンデのレベルが上がった。各種ステータスがアップした。スキルポイントを手に入れた】

【ヴィンデのレベルが上がった。各種ステータスがアップした。スキルポイントを手に入れた】

【ヴィンデのレベルが上がった。各種ステータスがアップした。スキルポイントを手に入れた】


 レベル4か……まぁ、ちょっと前に使い切ったばかりだからな。スキルポイント6増えたのは助かる。

 背中の羽を動かしながら、力の限り飛び続け、向こう岸に到着して元の姿に戻った。


 変身の後遺症とでもいうか、MPとHPが大幅に下がってしまったが、それでも150くらいは残っている。とりあえずHPはヒールで回復し、さらに走って行った。


 森の中はやけに静かだった。前にここに来たときは僕は小さな(といっても今の僕よりは大きな)鮫で、狼にノーチェが襲われていた。マッピングで現在位置とエルフの村の場所を確認しながら、僕はさらに森を進む。


 夜の森はとても薄気味悪い。

 索敵スキルも全開にしているが、狼に見つかって追いかけられるのも面倒だから消臭スキルも作動している。


(妙だな)


 前にここに来たときは索敵スキルはまだ取得していなかったが、でももっと鳥獣の声があったように思える。

 何かあったのか?


 そう思った時だ、索敵スキルに、僕より僅かに弱い敵の気配が一つ、あと僕よりだいぶ弱い敵の気配が三つ、そして青色の気配が一つあった。

 エルフだろうか? それと、青色の気配……もしかして、ノーチェか!?


 風向きを確認するとこちらが風上だった。でも消臭スキルがあるから平気だろうと思い、四本足で慎重に近づいていく。

 暫くすると、灯りが見えた。松明のようなものを持っている。

 やはりエルフか……そう思ったがそうではなかった。


 2メートル50はある身長、人とは違う筋肉質の緑色の肌、黄色い目、そして鋭い牙――あれは人なんかじゃない。


【オーク兵:HP162/192】


 オーク!?

 オークってゲームでもよく出てくる豚の魔物だった気がするが、目の前にいるオークは豚とは似ても似つかぬ、どちらかといえば毛のないゴリラのような魔物だ。

 手には巨大な棍棒を持っている。


 HPが減っているのは、矢が刺さっているからだ。

 他の四つの気配を探る。

 青い気配は少し離れた場所にいるので、ここからだと確認できないが、残り3つの気配の主はすぐに見つかった。

 エルフだ。


 金髪のイケメンエルフが3人。2人が弓矢を、1人が杖を持っている。

 そして、弓矢を持っている2人には見覚えがあった。かつて、僕がエルフの村の前を通ったときに射ってきた2人だ。


 本来なら見捨てても罰が当たらないような関係ともいえるが、ノーチェの仲間であることは変わりないし、なにより、僕はエルフを助けに来たんだ。


 僕は迷わず、こう叫んだ。


「助けに来たぞ! 後は任せろ!」


 そう叫ぶと、エルフたちは僕を見て――顔をひどくゆがめた。


「喋る魔物だと! まさか魔人か」

「くそっ、オークに援軍が来ようとは」


 違う違う、そうじゃない。

 って、こっちに攻撃しようとしている。


「僕はエルフを助けに来た。お前たちの敵じゃない!」


 そう言って僕はすぐに口から炎を吐きだす。


 オークはその炎を浴びながらも、棍棒を振り上げた。

 僕目掛けて棍棒が振り下ろされる。


落穴ピット!」


 咄嗟に、自分の足元に僕が隠れられる穴を作る。

 周囲の土壁に罅が入った。


 落穴ピットで作った壁をここまで壊すとは、なんて馬鹿力だ。

 あんなの喰らったらひとたまりもない。


 ならば、喰らう前に倒す!


土針アースニードル!」


 詳しい位置は見えなくても、匂いと気配、そして棍棒の柄の長さと今の棍棒の位置を頼りに、直感的にオークの位置を割り出し、そこに土の針を生み出した。


「ぐぅぉぉぉぉっ!」


 頭上の棍棒が持ち上げられ、オークのうめき声が聞こえた。

 よし、今がチャンスだ。


 僕にはオークを一撃で倒す必殺技はない。

 でも、こんなことはできる。


 穴から尻尾を出し、敵の位置目掛けて毒針(暗闇攻撃付き)を放つ。


「がうっ!」


 どうやら毒針は命中したようで、目が見えなくなったせいか、オークは我武者羅に棍棒を振り回している。

 だが、いいのか? そんなに歩き回って。


落穴ピット!」

落穴ピット!」

落穴ピット!」

落穴ピット!」


 僕が魔法を唱えた。何が起こったのか、オークはわからないだろう。

 そして、オークが気付いたときにはすでに手遅れ。


 地面に何かが激突する音が聞こえた。

 オークが落とし穴に落ちたのだ。


 だが、それでもまだ生きているとか凄すぎるな。全く。


「オーク兵:HP28/192」


 穴の上から見下ろすと、オークの頭が見事に地面に突き刺さっていた。まるでギャグマンガだ。

 すぐに抜け出せそうだが、それを待っている余裕はない。


「チェックメイトだ」


 そういうと、僕はオークの尻目掛けて、火の息を吹きだした。


【経験値780取得】

【ヴィンデのレベルが上がった。各種ステータスがアップした。スキルポイントを手に入れた】


 おぉ、レベルアップ来た!

 こいつを食べたらさらに経験値が貰えそうだが……食えるのかな?


 せめて豚だったら食欲も出たんだろうが。


「動くな、化け物め!」

「ここから去れ!」


 エルフが弓を構え、杖を握り、こちらを睨み付けてくる。

 またこのパターンか……くそっ。


「待て、僕は知らせに来たんだ! エルフの村が2日後、何者かに襲われるかもしれない」

「何をいうか! 村を襲いに来たのはお前たち魔物だろうが!」

「ひかぬというのなら、この場で殺すぞ!」


 やばい、聞く耳を持ってくれる様子がまるでない。

 こいつらが僕にすぐに攻撃をしかけてこないのは、オークから助けた恩人というよりかは、オークを倒した強敵と見ているからだろう。

 全く、時間がないって言うのに。


「ちょっと待ったぁぁぁぁっ!」


 青い気配が近付いてきて、声を上げた。

 あの声は――


「そのトカゲは私の下僕よ! 危害を加えちゃダメ!」


 だから、トカゲじゃなくてイモリだって言ってるだろ。

 あと下僕になった覚えはまるでない。

 でも助かった。


「久しぶり……ってほどでもないか。助かったよ、フレーズ」

「永遠に感謝しなさい、ヴィンデ」

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