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強い者と戦う者たち

 女王蟻を残して食べ終えた僕だったが、また罠づくりを再開することにした。

 落とし穴による攻撃は有効のようだ。


 3ヶ所ほど落とし穴を掘ったところで、美味しそうな香りのレベルが上がった。

 さらに2ヶ所の落とし穴を掘り、僕は昨夜掘った穴へと向かった。


 結局、その日、落とし穴に獲物がかかることがなかったのか、経験値取得の報告はなかった。


 そして次の日。


 落とし穴の様子を見に行って、僕は愕然とした。

 落とし穴が全て破壊されていた。そして、地面や落とし穴の側面についた模様を見て確信した。


 ウロコのような模様――クイーンスネークだ。


 このあたりの森はクイーンスネークの縄張りだからな。他の落とし穴を見ても同じ状況だった。

 そして、5つ目の落とし穴に近付いたとき、気配を感じた。

 遠くだが、ほとんど黒い敵の気配。

 クイーンスネークだろう。


 前に出くわしたときは真っ黒だったから、僕が確実に強くなっているのはわかる。

 でも、そんな僕でも、この森の生態系の頂点にいるクイーンスネークにはまだまだ敵わないということか。


 カオ・エポラール――あの巨大鯱にでくわして逃げていた時の自分を思い出す。

 それに、逆立ちしても勝てない奴は他にもいる。


 アルモニー。

 

 調和の魔王を名乗る奴とは、自分を比べる気にもなれない。

 フリーズは、アルモニーに見つかれば瞬殺されるだろうな。


【レシピ:鉄インゴットを入手しました。固定化するか学習取得してください】


 おぉ、ようやく覚えたか。

 MP放出継続条件をMPが最大の時だけにした。

 これで無駄なく学習できている。


【レシピ:鉄インゴットを学習した】


 これで現行入手可能なレシピは全て入手した。


【スキル:魔導書記のレベルが2に上がった】


 よし、レベルアップ来た。

 新たに追加されたレシピの中にもコーラはない。グリーンポーションや解毒ポーションといったポーションからの派生アイテムや、紙、鉛筆といった日用品まで並ぶ。

 あと、魔法書として、キュア、水流操作ハイドロウェーブ落穴ピットが作れるように。

 どうも魔法書は覚えている魔法しか作れないようだ。こっちには期待したらダメだな。


 あ、でもレベル3になる条件は魔法書を5種類作成になっているから、魔法書は作らないといけないのか。


 とりあえず、次は紙を覚えよう。

 紙を作ることができたら、魔法書作成できるしな。あと、魔法書記のレベルを上げることを考えると、多くの魔法を覚えないといけないな。


 ただ、予想通りというか、インゴットを作るには、鉄鉱石や銅鉱石が必要みたいだった。どちらも持っていない僕には縁がないレシピだ。


「と、今のうちに逃げるか。微風ソフトウィンド


 念のために風魔法を使って、僕の位置をクイーンスネークに対して風下にして、遠ざかっていった。

 クイーンスネークが来たら、穴を掘って逃げるから死ぬことはないけど、余計なトラブルは御免だ。


 お、また気配発見。


 色は薄い赤。弱い敵だ。しかも、クイーンスネークとは逆方向か。

 これは倒すっきゃない。


「それにしても雑魚ばっかりだな」

「ん? じゃあ、お前は伝説の巨大蛇と戦いたいのか?」

「伝説の巨大蛇? あー、そんな話聞いたな。どうせジャイアントスネークだろ。楽勝だよ」


 僕が見つけたのは二人の人間だった。

 冒険者風の男二人。

 流石にあれは食べられないな。


【バッファ:HP32/32】

【アリナミ:HP24/24 MP:19/19】


 え? 何こいつら、弱い。

 索敵の色で理解してたんだけど、弱すぎるだろ。


 ブラックバスだったころの僕といい勝負だ。

 本気でこの森に挑むのか?


 暫く離れた位置で様子を見ることにした。

 男達は索敵スキルはないようで、僕がいることには気付いていない。


 男達はしばらくすると、何か乾燥させた植物を取り出した。


……………………………………………………

良香剤(鳥)【雑貨】 レア:★★


乾燥させたハーブを配合して作られた道具。

火をつけると鳥系の魔物を呼び寄せる香りが出る。

……………………………………………………


 おぉ、凄い。便利な道具もあるんだな。


 確かに良い香りがあがった。これって、鳥以外にも効果があるんじゃないだろうか?


 そう思っていたら、おぉー、二人よりも強い鳥たちが近付いてきてる。

 こいつらで勝てるのか?


 しばらくして、昼までも平気で動き回るフクロウたちがやってきた。

 ランチオウルと呼ばれるフクロウだ。


 男達は弓矢を取り出すと、狙いを定めてフクロウを狙い始めた。

 あれは……毒矢か。痺れ毒が塗られている。


 そして、男達は迫ってきたランチオウルに矢を射っていく。

 一撃必中、と言わんばかりの腕前だ。


 そして、落ちたランチオウル達をナイフを使ってとどめをさしていっている。


 凄いな、自分よりも格上の相手なのに、スキルと工夫で倒せるんだ。


「よし、これでクエストクリア。とっとと帰ろうぜ」

「だな」


 30匹のランチオウルを殺して籠に入れて男達が立ち去ろうとした、その時。

 僕の索敵に例のあれがひっかかった。


 ここで助けてやる義理は全くないんだけど、


「おい、逃げろ! クイーンスネークが来る」


 僕はそう叫ぶと、走り去った。


「なんだ、今の声は」


 男達は僕の忠告が届かなかったのか、その場から動こうとしていない。

 そして、2分後、索敵のギリギリの範囲で黒い気配と人間二人の気配が衝突、一つの気配が消え、しばらくしてもう一つの気配が消え、赤黒い気配だけが残った。


 僕は思った。

 どれだけ工夫をしても、知恵をこらしても、勝てない相手には何をしても勝てないんだと。


 死んだ二人の冥福を祈りながら、僕は森を進んだ。

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