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彼女の矢は僕のハートを射止めた

 狼の最期の足掻きで、僕は川辺に打ち上げられた。

 肺呼吸があったから死ぬことがない、と思ったが、ダメだ!

 全然動けない、ぴちぴち跳ねるが水に戻れない。


【経験値7獲得】

【****のレベルが上がった。各種ステータスがアップした。スキルポイントを手に入れた】


 あ、どうやらさっきの狼は絶命したようだ。

 彼女に助けを求めたら……怖がらせてしまう……かもしれないけど、このままだと僕は死ぬ。


「あ、あの! 助けてください!」

「え……え!? 誰ですか!」


 やっぱり、エルフの女の子は怖がっている。とてもかわいらしい声だ。

 でも、僕がしゃべっていると気付いていないのか?


「僕です! ここ、魚! 魚!」

「え、あ魚さん!」


 おぉ! こんな凶暴なフォルムの僕に対して「お魚さん」と呼んでくれるなんて、感激だな。


「お願いです、僕を水の中に戻してください!」


 エルフの少女は、水から上がり、僕にかけよる。


「えっと、どうしたら?」

「押して下さい、水まで」

「わ、わかりました」


 女の子が僕の身体を押してくれる。

 だが……その手の温もりが……、


 熱っ! 人間の温もり熱っ!

 

 でも、文句は言ってられない。


 僕の身体がゆっくりとずれていき、水の感触が僕の腹に伝わった。

 ……そして、


「ありがとう、ここからなら戻れるよ」


 僕は身体をゆすって、水の中に入った。

 そして、僕は水の中から顔を出し、


「助かったよ! て、その手……もしかして僕を押したときに?」

「い、いえ。これは――」


 彼女は慌てて手を後ろに隠した。

 くそっ、僕の身体が鮫肌だって忘れてた。


【ノーチェ:HP12/13】


 あぁ、、やっぱり、HPが減ってる。


 献身!

 僕は自分のHPを彼女に渡した。

 かつて、僕の子供が僕のためにHPを渡したように。


「傷治ったかな?」


 そういいながら、僕は彼女の顔を見る。


「え? あれ、どうやって。回復魔法じゃないですよね」


 驚く彼女。

 美人というよりは可愛いと表現したほうがいい、素朴そうな女の子。

 それでいて神秘的なオーラを感じる。後光がさしているようだ。

 僕が一目惚れするのも無理はない。


「回復魔法じゃないよ……でも覚えたいな」


【回復魔法を取得するにはスキルポイントが足りません】


 うん、足りないみたい。

 こうなると、今消費したHPが自動的に回復できるのか疑問だな。

 宿屋に行ったら回復するとか言われても、宿屋に泊まれないし。

 メダカの学校のような感じでドジョウの寝床があったとしても、鮫だと宿泊拒否されそうだし。

 HP自動回復とか覚えられないかな?


【スキルポイントを5支払い、HP自動回復を取得しますか?】


 あ、こっちは覚えられるか。

 これは絶対に必要だよな。

 ご利用は計画的じゃないといけないスキルでも、取得しておきたい。


【HP自動回復を取得した】


 どのくらいのペースで回復するのか、検証しないといけないな。


「えっと、献身っていうスキルで、自分のHPを相手に渡すスキルなんだけど」

「え、じゃあ魚さんが代わりにけがを?」

「大丈夫、僕はHP自動回復のスキルも持ってるからすぐに回復するよ。それより、ノーチェさんはエルフなの?」

「は、はい。エルフです。え、どうして私の名前を?」


 えっと、ステータス把握スキルってこの世界だと一般的なのかなぁ?

 ウソをつくのはよくないけど、ある程度隠しながら言うかな。


「えっと、それもスキルで見えた」

「そうなのですか。改めて、さっきは狼から助けてくださり、ありがとうございます」

「いやいや、僕も陸に打ち上げられたのを助けてくれたからお互いさまだよ」

「……あの、お魚さんの名前はなんていうんですか?」

「僕の名前? いや、ないみたい」


 たぶん、人間だったときは名前はあったんだけど、記憶喪失だからなぁ。


「お魚さんでいいよ。まぁ、凶暴な姿だけどさ、心は優しいから。肉食だけど」

「え?」

「あ、ごめんごめん! 人間は食べないから怯えないで! 人と話すのが久しぶりだったから、ユーモアを交えようと思っただけなんだよ」


 鮫ジョークって難しいなぁ。

 鮫肌はざらざらだから滑りにくいと思ったんだけど、鮫ジョークは滑りやすいみたいだ。ジョーズジョークとでも言い換えたほうがいいかもしれない。

 うん、ここは僕の誠意を示さないといけない。

 正直に話そう。


「一目ぼれしました! 結婚してください!」

「ごめんなさい」


 ガーン……って、そうじゃないだろ! 僕、なんでいきなり結婚申し込んでるんだよ!

 無理に決まってるじゃないか。


【称号:ハートブレイクを取得した】


 ……うるせい。


……………………………………

名前:****

種族:ブラックリトルシャーク

レベル:3


HP 25/26

MP 19/19

状態:記憶喪失

スキルポイント4


攻撃 24

防御 19

速度 23

魔力 12

幸運 26

経験値補正+10%


スキル:【捕食:Lv1】【言語理解:Lv1】【叡智:Lv1】【ステータス把握:Lv2】【スキル鑑定:Lv2】【索敵:Lv1】【泡:Lv1】【献身:Lv1】【硬い鱗:Lv1】【鋭い歯:Lv1】【肺呼吸:Lv1】【土魔法:Lv1】【鮫肌:Lv1】【HP自動回復:Lv1】

称号:【転生者】【異世界魚】【記憶喪失】【捕食者】【蟹の天敵】【子持ち】【子沢山】【スキル収集家見習い】【魔術師】【出世魚】【称号収集家見習い】【ハートブレイク】

……………………………………


 いつかいいことあるさって意味で幸運が1増えてるんじゃないよ!

 こっちは不幸だよ!


「私、お魚さんとの新婚生活とか想像したら、その……私、お魚さんが食べれるような魚料理とか肉料理とかできなくて。あと、水の中で呼吸もできませんし」


 ノーチェがとても申し訳なさそうに言う。泣きそうな眼をしている。


「想像以上に想像してくれていた! その、いきなり告白した僕が悪いんだから! そ、それより、海ってここから遠いのかな?」

「海ですか、すみません、私はこの森から出たことがなくて。あ、でも長老様ならきっと御存知です。この先の川沿いにエルフの村がありますから」

「あぁ、エルフの村にいったら、みんなを驚かせないかな?」

「大丈夫ですよ、お魚さんは私の命の恩人なんですから! きっとみんな歓迎してくれますよ」


 そうか、歓迎か。

 うれしいな、最近だと自分の子供からも歓迎されなかったから本当にうれしいな。



   ※※※



「魔物め! この村に入ってきたのを己の不幸だと思え!」


 エルフの戦士10人に弓矢を構えられた。

 こんな歓迎は嫌です!

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