リベルテの漁法
海を目指して、僕とリベルテは歩いていた。
海に着いたら、貝とか食べられるぞと言ったら、リベルテは喜んでいた。たぶん。
ただし、僕もリベルテも、火属性があり、水属性は得意ではない。水魔法を使える僕でも水耐性は0。
リベルテはマイナスかもしれないが、まぁ水の中に入らなければどうってことはないだろう。
魚肉や貝肉だけではない、うまくいけば鳥肉も食べられるからな。
マッピングスキルを使い、僕は、かつてピエールクラブに変身したときに上陸した場所が島ではなく、この大陸と地続きになっていること、さらにここから結構近い距離にあることを確認し、そこを目指していた。
敵になる魔物がいたら、巨大フナムシのエグジルくらいだろう。
それも、今のボクなら負ける気はしない。
HPは僕の方が下だったけどな。
そして、歩き続けること1時間。
「うーみだぁぁぁぁぁっ!」
とりあえず、叫んでおきました。
懐かしいなぁ。海。
母なる海。
ん? 横でリベルテがプルプルと何か抗議をしている。
あぁ、早く海産物を食わせろって言うんだな。わかったよ。
「じゃあ、早速食べに行くか」
ただ、見る限り、空を優雅に舞う、糞を落とす鳥――ブルガルアペたちの姿は見えない。北の国に渡ったのか、それとも南の国に渡ったのか、ただ餌場を変えただけかは知らない。
あいつらにはひどい目にあわされたが、あの肉は結構おいしかった。今回のメインディッシュの一つだったのになぁ。
でも、まだまだ食べれるものはある。
索敵全開!
んー、地下深くに、赤色――僕と互角の強さの相手がいる。
あれは、エグジルだろう。
それ以外は弱い敵ばかりだ。
そして、群生地がある。
あれこそ、僕の今回の狙い――マウントシェルだ!
HP99、硬い甲羅に覆われた貝だ。
結局、前は倒したけど、食べられないままだったからな。
「よし、行くぞ! ついてこい、リベルテ」
突撃ぃぃぃっ!
僕はリベルテとともに、マウントシェルの群生地に到着。
巨大なふじつぼが僕の前にいた。
あの時僕が倒したマウントシェルの死骸は当然だがそこにはない。
波にさらわれたのか、他の魔物に食べられたのかはわからない。
あの時は固くて倒せなかった敵だが、今回はあれがある。
大きく息を吸い込み、
火の息!
口から火の息を吹いてマウントシェルの一体に吹き付ける。
動く気配のないマウントシェルを熱し続ける。
暫く熱すると、接着面から煙が上がる。
【マウントシェル:HP24/99】
これでもまだ生きているのは流石だな。
でも、その無防備な状態で僕に勝てるわけないだろ!
実際、炎を止めても、マウントシェルのHPは沸騰した自分の体液によって熱せられていき、HPが減っていく。
そして、
【経験値32取得】
よし、一匹目倒した。
ふじつぼはころりと転がり、
「これはリベルテが食べていいぞ! 僕は次のを――あぁ、必要ないか」
リベルテの戦いは僕よりひどかった。
マウントシェルの僅かな隙間にキノコの胞子を流し込む。
状態異常キノコになった後で、今度は燃える体で熱していた。
内側からキノコに、外側から火にやられてマウントシェルは絶命していた。
ついでに、リベルテのレベルが上がっていた。
あれなら放っておいても大丈夫だろうと、僕はマウントシェルの中に顔を入れて中を食べる。
【スキル:“捕食”の効果により経験値160獲得】
うーん、そこそこおいしい。
醤油が欲しくなるなぁ。
マウントシェルはまだまだいる。
しかも、奴らは動く気配がまるでない。
「よし、今日は貝パーティーだ」
リベルテは最初からそのつもりのようで――すでに2匹目を完食していた。
そしてリベルテは、何を思ったのか、海へと向かう。
「おい、リベルテ! 海の水は飲めないぞ! 喉が渇いたのなら僕が水球の魔法を使うから……」
だが、リベルテは言うことを聞かず、海へと向かい――
「え?」
リベルテが海に溶けた。
「えぇぇぇっ! リベルテ! おい、リベルテっ!!!」
え? 海に溶けた?
ナメクジみたいに?
それとも火でできてるから沈火したの?
「リベルテぇぇぇぇっ!」
そう叫んだら、波が打ち寄せてきた――そうじゃない、海が盛り上がった。
十メートルも、二十メートルもの大きさの海が――
……………………………………
名前:リベルテ
種族:オーシャンスライム(ダブル)
レベル:2
忠誠度:86
HP 999/999
MP 130/130
状態:水
スキルポイント6
攻撃 60
防御 80
速度 90
魔力 91
幸運 20
経験値補正+20%
スキル:【感覚強化:Lv4】【体当たり:Lv2】【暴食:Lv7】【胃拡張:Lv4】【消化促進:Lv3】【毒攻撃:Lv1】【麻痺攻撃:Lv1】【混乱攻撃:Lv1】【暗闇持ち:Lv1】【睡眠攻撃:Lv1】【忠義:Lv1】【味覚強化:Lv1】【胞子飛ばし:Lv2】【苗床:Lv1】【酸攻撃:Lv1】【燃える体:Lv1】【分裂:Lv1】【ボディープレス:Lv1】
称号:【レアモンスター】【食王】【毒持ち】【麻痺持ち】【暗闇持ち】【混乱持ち】【夢魔持ち】【スキル収集家見習い】【ネームドモンスター】【キャッチ名人】【称号収集家見習い】【キノコマイスター】【特殊進化体】【新種モンスター】【進化キャンセラー】【蟻の天敵】【巨大な体】
……………………………………
え?
えぇぇぇっ!
リベルテが――海と同化していた。
さらに、暴食のレベルが上がり、ボディープレスを覚え、巨大な体の称号を獲得していた。
そんなのありかぁぁぁっ!
と思ったら、口から水を吐き出しみるみる縮んでいった。
吹きだされたのは水だけではなく――魚やタコ、海草といった海の幸は海とは逆方向に飛ばされた。
あぁ、レベルが2に上がったのは魚などを倒したからか。
ていうか、魚を取るためにオーシャンスライムになったのか。
そして、リベルテは気が付けば、もとのファイヤースライムに戻っていた。
それでも、【巨大な体】の称号と、【ボディープレス:Lv1】のスキルは残ったままだった。
……常識ってなんだっけ?




