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ヴィンデの誤算

「お姉さまを泣かせるなぁぁぁっ! 大事なことなので二度申しましたわ!」


 意味の分からないことを言って現れたのは小柄な妖精種フェアリー……フレーズ?

 見た目はフレーズそっくりだ。だが、彼女じゃない。


【フリーズ:HP:121/121 MP:489/489】


 名前までそっくりだが、フレーズよりもはるかに強い。

 索敵では僕より弱い色だが、MPを見るに魔法タイプなんだろう。油断したら負ける。


「出たわね! フリーズ! ここであったが100年目よ! 今日こそ魔王の座から引きずり降ろしてやるわ!」

「ちょっと待て、これが魔王なのか?」


 僕はフレーズそっくりのフリーズを指さして尋ねた。


「違うは! ()()魔王よ! これからフリーズを倒して私が魔王になるんだから」

「まだ諦めていなかったのですね、お姉さま! いいでしょう、魔王の座をかけて勝負しましょう」


 まさかの急展開。

 フレーズの妹が魔王(自称)で、勝負してたのか。

 ただ、逆に納得できる部分もある。100連敗していながらこうして彼女が無事に生きているのは、姉だから見逃してもらっていたのだろう。

 んー、ただ、HPとMPを見る限り、フレーズには万に一つの勝ち目もない。

 あぁ、だからこそ僕が助っ人に呼ばれたのか。


「勝負方法は何?」


 フレーズが挑発的にそう尋ねた。

 おいおい、どんな勝負だろうとお前に勝ち目はないぞ。


「ババ抜き? 鬼ごっこ? かくれんぼ? ジャンケン? なんなら今日は石取りゲームでもいいわよ」

「っておい! なんだよその勝負内容は」

「何よ、文句ある?」

「そうよ、お姉さまの言うことに対して文句があるとおっしゃるのかしら!」


 姉妹に文句を言われる僕。え、何? このアウェイ感。

 味方は――そうだ、リベルテは……道草を食ってる。寄り道をするという意味ではなく、文字通り道に生えた草を食べている。


「あの、無知な僕に説明を求めたいんだけど、二人は姉妹であってるんだよな?」

「そうよ」「そうですわ」

「で、フリーズさんが魔王で、フレーズは魔王の座が欲しいから、フリーズと戦ってると?」

「違うわ! あれは72回戦、どっちが先に迷宮を攻略して魔王を退治できるか勝負でフリーズがここの迷宮の魔王、ラフレシアンの植物吸収を行い、魔王になっちゃったのよ」


 臭そうな名前のボスだなと思った。蠅が喜びそうな臭いだと思う。嗅覚強化を持っている僕が相手したら3秒KOになるかもしれない。


「植物吸収?」

「妖精魔法の一つよ。レベル8になったら使えてね、植物系の魔物の力を吸収するの」


 ……待て、ツッコミどころが多すぎる。

 ただの姉妹喧嘩に魔王を巻き込むな! 

 そして、姉妹喧嘩に巻き込まれたくらいで負けるなよ、魔王。

 あと妖精魔法レベル8ってフレーズは使えないじゃないか! 勝負を受ける前に気付けよ。

 そもそも僕は何のために呼ばれたんだよ!


「じゃあ、僕は帰っていいか?」

「ダメよ! 思い出したわ! フリーズ、今日は私の弟子が相手になるわ! 私と戦いたければ彼らに勝ってからにするのね」


 誰が弟子だ! 100連敗以上している妖精が言うセリフじゃないぞ、それ。


「いいでしょう! このフリーズ、敵に背を向けたことがありません」


 そりゃそうだろ。いつも背を向けているのはフレーズなんだから。

 てか、本当に帰りたい。


「勝負方法はどうしましょう?」

「じゃあ、普通に勝負しようか。死ぬか、気絶するか、参ったと言ったら負け。それでいいか?」

「ええ、良いでしょう。その勝負でしたら、お二人でどうぞ! お姉さまは安全なところ――あら?」


 フリーズが驚きフレーズを見た。

 彼女は既に大きな花の裏に隠れていた。


「流石はお姉さま。私が言わんとしたことを理解なさるなんて」


 ……この妹、姉を持ち上げすぎだろ。

 フレーズが実力もないのに偉そうにしているのはこいつのせいじゃないだろうか?


 ともあれ、勝負方法は決まったな。


「じゃあ、行くぞ!」

「ええ、どうぞ」


 僕は大きく息を吸い込み、


「よし、まいった! 僕の負けだ!」


 そう宣言した。

 正直、こんな姉妹喧嘩につきあっていられない。

 もう帰るわ。


「ちょっと、何してるのよ、ヴィンデ! リベルテ一人に戦わせるつもり?」

「リベルテ一人ってリベルテも降参すればいいだろ。おおい、リベルテ、降参していいぞ」

「何言ってるのよ。リベルテが喋れるわけないでしょ? 参ったなんて言えないわよ」

「え? でもお前、リベルテの言っていることがわかるって」

「あれがわかるのは私だけよ。フリーズはわからないわ」


 ……え?


「ちょっと待て、リベルテも降参だから勝負は終わり終わり」

「何をおっしゃるの、このスライムはやる気満々のようですわよ!」


 え?


 確かに、リベルテが燃えていた。なんだ、あのやる気のオーラ。

 まるで本当に燃えているみたいで。


 って本当に燃えてるだろ! あれ!


「あ……リベルテったら火炎草食べたのね」


 フレーズが落ち着いた様子でそう告げた。

 あれ、このパターン……どこかで見た気がするんだが。


……………………………………

名前:リベルテ

種族:ファイヤースライム(ダブル)

レベル:1

忠誠度:86


HP 52/52

MP 30/30

状態:燃焼

スキルポイント8


攻撃 40

防御 32

速度 29

魔力 50

幸運 20

経験値補正+20%


スキル:【感覚強化:Lv4】【体当たり:Lv2】【暴食:Lv6】【胃拡張:Lv4】【消化促進:Lv3】【毒攻撃:Lv1】【麻痺攻撃:Lv1】【混乱攻撃:Lv1】【暗闇持ち:Lv1】【睡眠攻撃:Lv1】【忠義:Lv1】【味覚強化:Lv1】【胞子飛ばし:Lv2】【苗床:Lv1】【酸攻撃:Lv1】【燃える体:Lv1】


称号:【レアモンスター】【食王】【毒持ち】【麻痺持ち】【暗闇持ち】【混乱持ち】【夢魔持ち】【スキル収集家見習い】【ネームドモンスター】【キャッチ名人】【称号収集家見習い】【キノコマイスター】【特殊進化体】【新種モンスター】【進化キャンセラー】【蟻の天敵】

……………………………………


 やっぱり進化してやがる!

 しかも僕と属性被ってる!

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