ターゲット捕捉! お前をいつか倒してやる!
とりあえず、僕は縦穴の底で落ちてくる石蟹を食べていた。
上で岩蟹が暴れているのだろう、石蟹がどんどん落ちてくる。
それにしても、あいつの強さはどのくらいなんだろうか?
相手のステータスを見るスキルってあるのかな?
覚えられるか?
【“ステータス把握”はすでに取得済みです】
……ん? もしかして、ステータス把握で敵のステータスを見れるのか?
とりあえず、落ちてくる石蟹を一匹そのままにして、ステータスが見れないか凝視してみる。
……うん、無理だ。パク、ボリ、ボリ。
【経験値1獲得】
【スキル:“捕食”の効果により経験値1獲得】
【****のレベルが上がった。各種ステータスがアップした。スキルポイントを手に入れた】
よし、レベル6になった!
……………………………………
名前:****
種族:ブラックバス
レベル:6
HP 10/10
MP 3/3
状態:記憶喪失
スキルポイント8
攻撃 9
防御 6
速度 7
魔力 2
幸運 20
スキル:【捕食:Lv1】【言語理解:Lv1】【叡智:Lv1】【ステータス把握:Lv1】【スキル鑑定:Lv1】【索敵:Lv1】【泡:Lv1】
称号:【転生者】【異世界魚】【記憶喪失】【捕食者】【蟹の天敵】
……………………………………
【ステータス把握レベルが2に上がった】
ん?
……………………………………
名前:****
種族:ブラックバス
レベル:6
HP 10/10
MP 3/3
状態:記憶喪失
スキルポイント8
攻撃 9
防御 6
速度 7
魔力 2
幸運 20
スキル:【捕食:Lv1】【言語理解:Lv1】【叡智:Lv1】【ステータス把握:Lv2】【スキル鑑定:Lv1】【索敵:Lv1】【泡:Lv1】
称号:【転生者】【異世界魚】【記憶喪失】【捕食者】【蟹の天敵】
……………………………………
おぉ、スキルレベルが上がっていた。
ただし、なんの変化もない。
でも、なんで上がったんだ?
……あ、もしかしてステータスを表示した回数でレベルが上がったのかな。
これなら……
次に落ちてくる石蟹を凝視。
【ピエールクラブ:HP1/1】
おぉ、種族名とHPがわかるようになった。
ピエールか。なんかどこかの騎士みたいな名前だな。
いただきます。むしゃむしゃ。
【経験値1獲得】
【スキル:“捕食”の効果により経験値1獲得】
ピエールというと、なんだか上品な味に思えてくるな。
うん、蟹は高級料理だしな。
さて、スキルポイントも8あるんだし、何かスキルを覚えようか。
あの岩蟹に見つからないように進むために、「忍び足」みたいなスキルを覚えるか?
【足がないため、忍び足は取得できません】
……うん、そうだよね。じゃあ、剣術みたいな攻撃系スキルでも……
【手がないため、剣術は取得できません】
わかってますよ。冗談です。
やっぱり魔法かなぁ。でも、水の中だと火は使えないし、雷だと僕も感電する。氷なんて使ったら冬眠してしまうな。
となれば――土魔法かな?
【声が出ないため、土魔法は取得できません】
……なんで僕、魚に転生したんだよ。
ま、暫くは食事にも困らないからスキルに関してはゆっくり考えたい。
でも、本当は時間はあまりないんだよな。
あれから三日が経った。
時間がない理由がここにあった。
……卵が、僕の子供が孵化した。
【称号:子持ちを取得した】
【スキル:献身を取得した】
あぁ、やっぱり僕の子だったのか。あと、スキルも手に入った。
300はあった卵のうち、4割が孵化した。
ブラックバスの稚魚が次々と卵から出て来た。
【称号:子沢山を取得した】
6割は……卵のまま残っているが、これから孵化するのか、それともこのままなのか。
本当に……時間がない。
……………………………………
名前:****
種族:ブラックバス
レベル:8
HP 15/15
MP 5/5
状態:記憶喪失
スキルポイント12
攻撃 11
防御 8
速度 9
魔力 4
幸運 20
スキル:【捕食:Lv1】【言語理解:Lv1】【叡智:Lv1】【ステータス把握:Lv2】【スキル鑑定:Lv1】【索敵:Lv1】【泡:Lv1】【献身:Lv1】
称号:【転生者】【異世界魚】【記憶喪失】【捕食者】【蟹の天敵】【子持ち】【子沢山】
……………………………………
どうして時間がないか?
その理由は、稚魚の巣立ちだ。
稚魚が独り立ちしたら、確実にピエールクラブの巣に行くことになる。すると、どうなるのか?
もちろん、稚魚が岩蟹に食べられてしまう。わかりきっている。
かといえ、じっとここにいるわけにもいかない。餌も場所も有限なんだ。
こんな狭い空間にブラックバスを閉じ込めてみろ。自然の摂理に反するこの過密さのせいで、共食いが始まってしまう。
子供同士が食べ合うのを見るのも、子供に襲われるのも御免被る。
ならば、手段は二つ。
子供たちとともに、幾匹か、下手したら数十匹の子供の犠牲を覚悟してピエールクラブの巣を通過する。
もしくは、あの岩蟹をぶっ殺す。
僕は後者を選びたい。
そのために僕は力を得ないといけない。
【スキルポイントを3支払い、硬い鱗を取得しますか?】
まずは防御UP。
【スキル:硬い鱗を取得した】
すると、思った通り、防御が一気に5も増えた。
【スキルポイントを3支払い、鋭い歯を取得しますか?】
次に攻撃UP。
【スキル:鋭い歯を取得した】
【称号:スキル収集家見習いを取得した】
【スキル鑑定レベルが2に上がった】
お、スキルを10個覚えたためか、称号を覚え、スキル鑑定のレベルが2に上がった。
あと、攻撃が5増えた。
スキル鑑定レベル2では、スキルの効果説明がわかるようだ。
【捕食:倒した相手を食べることで経験値を取得する】
【言語理解:様々な言語で会話、筆談ができるようになる】
【叡智:システムメッセージを聞くことができる】
【ステータス把握:ステータスを見ることができる】
【スキル鑑定:スキルを調べることができる】
【索敵:敵の位置がわかるようになる】
【泡:MPを消費して泡を出す】
【献身:HPを消費して、対象のHPかMPを回復させる】
【硬い鱗:防御力が上がる】
【鋭い歯:攻撃力が上がる】
簡単な情報しかわからないな。スキルレベルが上がれば、もっと詳しい情報を手に入れられるのだろうか?
叡智が言うシステムメッセージとは、【経験値を~】とか【スキルポイントを支払~】とかのメッセージのことなのか?
もしそうなら、記憶喪失でよかった。叡智がなかったらスキルポイントの使い方とかわからなかったよ。
とりあえず、攻撃と防御の手段は手に入れた。というか強化しただけだけど。
行くか。
僕は恐る恐る、縦穴の真下にたどり着く。
途中でピエールクラブを食べて、登っていく。
そして、空間に出た。
奥に、あいつがいるんだろうな。
今日は様子見だ。あいつが来るまでに、まずは――
うん、いただきます。
僕は床にこびりついていたピエールクラブを食べた。
食べに食べに食べまくった。
【経験値1獲得】
【スキル:“捕食”の効果により経験値1獲得】
【経験値1獲得】
【スキル:“捕食”の効果により経験値1獲得】
【経験値1獲得】
【スキル:“捕食”の効果により経験値1獲得】
【経験値1獲得】
【スキル:“捕食”の効果により経験値1獲得】
【経験値1獲得】
【スキル:“捕食”の効果により経験値1獲得】
【経験値1獲得】
【スキル:“捕食”の効果により経験値1獲得】
レベルは未だ上がらない!
【経験値1獲得】
【スキル:“捕食”の効果により経験値1獲得】
【経験値1獲得】
【スキル:“捕食”の効果により経験値1獲得】
でも、歯が鋭くなったためか、前まで硬い煎餅を食べていたような気分の石蟹が、麩菓子をたべているみたいにさくさく食べれる。
【経験値1獲得】
【スキル:“捕食”の効果により経験値1獲得】
【****のレベルが上がった。各種ステータスがアップした。スキルポイントを手に入れた】
よし、レベルアップきた!
でもまだ食べ続け――られない!
来た、あの巨大な岩蟹が!
【ロッシュクラブ:HP50/50】
やばい、HPが僕の倍以上はある!
僕は身体を回転させ、近くにいたピエールクラブを穴の中に落としてから自分も穴の中に入っていった。
今日はこのくらいにしておいてやる!
でも、見ていろ、ロッシュクラブ! お前の名前とHPは覚えたからな!
とりあえず、僕が落としたピエールクラブを食べながら、奴を倒すための手段を模索した。
げぷっ……でも今日はお腹いっぱいだから帰る。
流石に食べすぎた。
残りのピエールクラブはかみ砕いて、子供たちの餌にしよう。
……もう、あの手段しかないか。