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愛の価値はプライスレス

 金が全てだと言い放つこの男。

 サイモンにとって金こそが全てであり、寿命さえも金で買えると言ったこの男が、信じられないことを言った。

 愛は金で買えないと。

 こいつなら、こいつのことならば、


「愛か、そんなくだらないもの金で買う価値すらないものでも、端金で買える。いや、むしろ金がないと買えないものだ。何故なら愛情を育むために何を使う? 何をするにも金が必要なのがこの社会だ」


 と言い切ってもおかしくないこの男が、愛は金では買えないこの男が、愛は金で買えないと言った。

 衝撃だ。


「金目当てに集まる人間がいたとしたら、金で満たせる欲があるとすれば、それは愛欲ではなく金欲に過ぎない」

「……そ、そうだよな。僕、サイモンのこと少し見直し――」

「そもそも、愛などというものは存在しないのだからな。存在しないものは金では買えない」


 なんてとんでもないことを言い出し、僕は心の底で、少し安心してしまった。

 皮肉でもなんでもなく、あぁ、やっぱりサイモンはサイモンなんだと安心してしまった。

 ここで否定しても平行線を辿るのは目に見えているが、それでも言っておかないといけない。


「いや、愛はあるだろ!」


 歩くサイモンを見上げて僕は叫んだ。


「ない。そもそも、愛とは幻想に過ぎない。子孫を残すという本能的思考を、自分達は人間であり高等生物であるという傲慢さ故に、男女の愛や母性愛、父性愛などに置き換えて誤魔化しているに過ぎない」

「幻想って……」

「冷めない愛などない。なぜなら、愛と呼ばれる不確かなものは、どれだけ燃え上がろうとも2年か3年経てば冷めてしまう。何故だと思う? それは多くの異性と交わり子を作るほうが、子孫を残せる可能性が上がるからだ。本能的にそれは決まっている。そんな不確かなものを愛と呼べるお前の方がおかしい」

「いやいや、冷めない愛はあるよ! 僕のこの気持ちは1000年経っても46億年経っても変わらない自信がある!」

「イモリのくせに人間のようなことを語るな」

「僕は人間だ。今はこんな姿だけど……」

「ウソでもばれるウソとばれないウソがあるぞ」

「本当だよ! あと、それを言うなら、ついていいウソとついたらいけないウソだろ!」

「何間違ったことを堂々と言っているんだ、お前は。ついていいウソなんてあるわけないだろ。ウソほど醜いものはないぞ。恥を知れ」


 ……やばい、殺したい。

 確かにウソはいけないことだが、お前にだけは言われたくない。

 まぁ、僕が人間であることを深く言っても仕方ない。


土針アースニードル!」


 グリラットという野鼠がいたので土魔法で仕留めた。


【経験値4獲得】


 土針から引き外し、サイモンを見上げ、


「やらないからな」


 言ってやった。そうしたら、


「鼠なんか食うわけないだろ」


 と言われた。正論だ。僕が人間の時ならば鼠の肉なんて絶対食べない。


【スキル:“捕食”の効果により経験値24獲得】

【ヴィンデのレベルが上がった。各種ステータスがアップした。スキルポイントを手に入れた】


 おぉ、ようやくレベルが上がったか。捕食の5倍と、経験値補正の20%UP。どっちも大きいな。実質6倍の経験値になる。最初の経験値を含めたら7倍だ。

 でも、なんか物足りないな。


「なぁ、サイモン。これから行くところは村なのか?」

「いや、村というよりかは町だな。人が多い。お前は……肩に乗せて運ぶか、首輪をつけて連れて歩くか」


 肩に乗せて歩いてほしい。流石に首輪は嫌だ。

 僕の体長は50センチほどだが、尻尾の長さが20センチはあるので、それほど重くはない。せいぜい20キロ程度だろう。

 でも、そう頼むと絶対にこいつは断るだろうからな。


「首輪でいい。お前の肩にのるのはまっぴらだ」


 そう言った。これなら、こいつは「首輪代をお前が払うならそうしてやろう」と言うはずだ。

 すかさず、「嫌だよ」と言って、なし崩し的にこいつの肩に乗れるというわけだ。


「そうか、ちょうど首輪があったんだ」


 そう言って、サイモンは俺に首輪をつけた。

 ……こいつの裏をかくことなんてできないんじゃないだろうか?


「……なぁ、サイモン。町についたら、俺の持ってるアイテムを換金してほしいんだが」

「換金か。いいだろう。ただし――」

「手数料は1割だ。無理なら別にいい。その手数料の中に、俺の買い物に付き合う手間を含めてな」

「お前の小間使いのようで嫌な気分だが、まぁいいだろう。ただし、換金合計が金貨1枚以上の場合のみだ。1枚以下の場合は銀貨10枚を払ってもらう。いいな」


 金貨? 銀貨?

 あぁ、金なんて持ってないから知らなかったけど、〇〇円とか〇〇ドルじゃないんだ。

 金貨1枚ってどのくらいの価値があるんだ? 1万円か?

 金貨1枚の1割が銀貨10枚だとしたら、銀貨100枚で金貨1枚なのかな。


「ちなみに、銀貨10枚ってどのくらい価値があるんだ?」

「……そんなことも知らずに、よく元が人だと言えたな……まぁ、銀貨10枚で俺の一日分の食費ってところか」


 1日分の食費。こいつ、金使い荒らそうだが、こんな森の中にいるくらいだしな。金はあんまり持っていないかもしれない。

 最高貨幣が金貨だとしたら、最高貨幣が10万円も20万円もの価値があるわけないしな。あっても5万円か。

 だとしたら、5000円くらいか?


 5000円の手数料は結構痛いが、でも、それで買い物も手伝ってくれるのならいいか。


「わかった。それでいい」

「いいだろう。どうせ俺もお前から貰ったプラチナリングと金のブレスレットを換金して、買い物をしないといけなかったからな」

「ついでかよっ!」


 道理で簡単に了承してくれると思った。

 でも、まぁ、これでほしい物がいろいろと買えそうだ。

サイモンが出てきたとたん、会話文が多い。

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