そして陸へ上がる
考えないといけない。
あれからいろいろとあった。
タコを食べてからは、地道にレベル上げをつづけた。
といっても、スキルでいえば鋭い歯と索敵のスキルレベルが3になり、良眠のスキルレベルが2に上がった程度。
称号も一つも増えていない。
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名前:ヴィンデ
種族:ブラックシャーク
レベル:15
HP 380/380
MP 99/99
状態:記憶喪失
スキルポイント40
攻撃 154
防御 123
速度 132
魔力 91
幸運 27
経験値補正+10%
スキル:【捕食:Lv4】【言語理解:Lv1】【叡智:Lv2】【ステータス把握:Lv3】【スキル鑑定:Lv3】【索敵:Lv3】【泡:Lv3】【献身:Lv1】【硬い鱗:Lv1】【鋭い歯:Lv3】【肺呼吸:Lv1】【土魔法:Lv3】【鮫肌:Lv2】【HP自動回復:Lv2】【忠義:Lv2】【毒攻撃:Lv2】【回復魔法:Lv3】【マッピング:Lv2】【嗅覚強化:Lv1】【変身:Lv2】【擬態:Lv2】【良眠:Lv2】【テイム:Lv1】【君主:Lv2】【称号鑑定:Lv3】【挟力UP:Lv1】【悪食:Lv2】【アイテムBOX:Lv5】
称号:【転生者】【異世界魚】【記憶喪失】【捕食者】【蟹の天敵】【子持ち】【子沢山】【スキル収集家見習い】【魔術師】【出世魚】【称号収集家見習い】【ハートブレイク】【ネームドモンスター】【毒持ち】【癒し手】【迷宮ウォーカー】【魔王を討伐せし者】【スキル収集家】【共生】【支配者】【称号収集家】【貝の天敵】【レアアイテムイーター】
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一応、ここまでは強くなれた。
強くなったのだが、望んでいた、そしてどこかで恐れていた事態が起きた。
【ヴィンデのレベルは最大です。これ以上経験値を取得できません】
【ヴィンデは進化条件を満たしています】
いわゆる、選択の時間。
どこかで、ブラックバスの時はレベル10、ブラックリトルシャークの時はレベル15だったから、ブラックシャークはレベル20だろうと思っていた。
だが、思ったよりも早く進化の時が訪れた。
そして、今回。僕に与えられた選択肢は3つだった。
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・ブラックビッグシャーク
超巨大なサメ。海の殺戮者とも言われる。
その一噛みは大型帆船をもかみ砕く。
取得可能スキル:【船食い】
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通常の進化なのだろうか?
帆船をかみ砕くって、かなりの大きさだと思う。
これなら、もしかしたらあの巨大鯱とも勝負できるかもしれない。
でも、それ以上に船食いとかスキルの名前がすでに恐ろしい。
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・コーラサラマンダー(メラニスティック種)
コーラ地方に生息する小さなサラマンダー。
陸上に生息する。乾燥した地域は苦手。
取得可能スキル:【尻尾攻撃】
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サラマンダー? サラマンダーって火の精霊だったよな?
いきなり精霊になれるってこと?
ただし、これに進化したら、僕は水の中に戻れなくなる。
つまり、アロエとはここでお別れということになる。
あと、初めてブラックという名前のつかない種族だ。
メラニスティック種というのがよくわからないが。
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・ブラックタイガーβ
ブラックタイガーの進化形。
性能は従来の二倍
取得可能スキル:【海老反りΩ】
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どうやら、僕の選択肢は二つだったようだ。
つまり、海の中にいるか、海から出るか。
巨大鮫になるか、サラマンダーになるか。
いや、違うな。
僕がいま泳いでいるこの状況、それはもう決意の表れだった。
そもそも、レベル14になった時点で、レベル15になったら進化できるという保証もないし、何に進化できるかもわからないのにあそこに向かっていたんだから、僕の意志はもう決まっていたんだろうな。
僕がたどり着いたのは、海底都市だった。
アロエと同じ、メディシンフィッシュ、そしてアロエの進化前のクリーンフィッシュが多く生息するビル群。
僕はここで、アロエに伝えなければいけない。
……思えば、アロエとの出会いはいきなりだった。共生という称号を取得し、索敵に青色の気配が感じられるようになってからしばらくして気付いた。
最初はボーっとしているし、ボードみたいな形だからボーちゃんと名付けた。
アロエが毒になったとき、その回復手段を見つけるために右往左往し、最終的にアロエをテイム、つまり僕の配下にすることでことなきをえた。
その時にアロエという名前を付けた。
それからも一緒に旅を続け、一匹の魚を分け合い、一緒にスキルのレベルを上げ、一緒に寝て、一緒に起き、孤独な海の中を彷徨っていた。
正直、アロエがいなかったら寂しくて死んでいたかもしれない。
でも……アロエ、ここでさよならだ。
アロエ、命令だ。ここで生きろ。
お前にとって一番の家族を作り、生きるんだ。
僕がそう心で念じると、アロエは僕の腹から離れた。アロエは少しこちらを見てきたが、テイム状態のアロエは僕の命令に逆らうことができず、海底都市の中へ消えていった。
……大丈夫、例え離れていても、忠義と君主、二つのスキルで繋がっているからな。
僕とノーチェのように。
……別れは、その瞬間は終わってみればあっけない。
余韻だけが長く続く。
僕はその余韻から逃げるように、陸地を目指した。
河口付近の浅瀬を見つけて、僕は念じることにした。
ブラックビッグシャークじゃない。生物の進化として、僕は今日、火の精霊になる。
まず、ロッシュクラブに変身して、陸地へ上がった。
砂浜で周囲に誰もいないことを確認し、変身を解除、打ち上げられた鮫になる。
そして――僕は念じた。
【コーラサラマンダー(メラニスティック種)に進化します。よろしいですか?】
あぁ、いい。
【選びなおすことはできません。本当によろしいですか?】
一瞬、ほんの一瞬だが、僕は背後の海を見て、ため息を漏らす。
そして、はいと選択。
【ヴィンデはコーラサラマンダー(メラニスティック種)に進化した。各種ステータスが変化しました】
【スキル:尻尾攻撃を取得した】
【肺呼吸のレベルが2に上がった】
【称号:異世界有尾類を取得した】
【捕食レベルが5に上がった】
【称号:レアモンスターを入手した】
世界がだんだん大きくなっていく……いや、僕が小さくなっていく。
そりゃ、10メートル近くある両生類なんて陸上じゃ見ないものな。
それにしてもいろいろとスキルや称号を貰えたな。
捕食レベルも5になったのは大きい。確か、捕食レベル5だと捕食の経験値が5倍だったっけ?
なんて思いながら……暫く待っていると……さらに世界は大きくなり、気が付けば僕の身体は1割以下の大きさになっていた。
体長30センチメートル程度。この種族にしては大きい方だろう。
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名前:ヴィンデ
種族:コーラサラマンダー(メラニスティック種)
レベル:1
HP 42/42
MP 31/31
状態:記憶喪失
スキルポイント40
攻撃 34
防御 29
速度 41
魔力 39
幸運 27
経験値補正+20%
スキル:【捕食:Lv5】【言語理解:Lv1】【叡智:Lv2】【ステータス把握:Lv3】【スキル鑑定:Lv3】【索敵:Lv3】【泡:Lv3】【献身:Lv1】【硬い鱗:Lv1】【鋭い歯:Lv3】【肺呼吸:Lv2】【土魔法:Lv3】【鮫肌:Lv2】【HP自動回復:Lv2】【忠義:Lv2】【毒攻撃:Lv2】【回復魔法:Lv3】【マッピング:Lv2】【嗅覚強化:Lv1】【変身:Lv2】【擬態:Lv2】【良眠:Lv2】【テイム:Lv1】【君主:Lv2】【称号鑑定:Lv3】【挟力UP:Lv1】【悪食:Lv2】【アイテムBOX:Lv5】【尻尾攻撃:Lv1】
称号:【転生者】【異世界魚】【記憶喪失】【捕食者】【蟹の天敵】【子持ち】【子沢山】【スキル収集家見習い】【魔術師】【出世魚】【称号収集家見習い】【ハートブレイク】【ネームドモンスター】【毒持ち】【癒し手】【迷宮ウォーカー】【魔王を討伐せし者】【スキル収集家】【共生】【支配者】【称号収集家】【貝の天敵】【レアアイテムイーター】【異世界有尾類】【レアモンスター】
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僕は弱くなっていた。進化したら強くなると思っていただけにこれは辛い。
いや、まぁピエールクラブやブラックバスのころよりは強いんだけど。
それでも弱い。
そして、僕の姿は――あくまでも予想だが、自分の身体を見る限り……黒いイモリだった。
そういえば、本当に今思い出したんだが、サラマンダーって、尻尾のある両生類のことを言うんだっけか?
ウーパールーパーも、本当の名前は、アホロートル、もしくはメキシコサラマンダーって呼ばれるくらいだし。
普通にファンタジーのサラマンダー=火の精霊と思い込んでいた自分が恥ずかしい。
ま、まぁ、大丈夫だよな。
捕食レベルも増えたし、経験値補正も増えてる。なら、すぐにレベルが上がるよな。あぁ、きっとレアモンスターの称号のおかげだな、経験値補正が20%になったのは。
【レアモンスター:皆から命を狙われる存在:経験値補正+10%】
……いやぁぁぁぁぁっ! 狙われるぅぅぅっ!
アロエがいなくなって、僕の幸運値はだだ下がりのようだ。
さよなら、アロエ。
いよいよ両生類編スタートです。




