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初めての相棒の出現

 妙だ。

 妙におかしい。

 最近、身体がとても気持ちいい。

 良眠のおかげなのか? と思ったがそれだけではない気がする。

 例えば、最近好物になってきているタイのような魚がいるんだが、そいつを食べたときのことだ。


【経験値6獲得】

【スキル:“捕食”の効果により経験値8獲得】


 今まで、捕食の効果は、(基礎経験値×1.5)×1.1

 ただし、各計算において小数点以下切り下げ、だった。

 なのに、少し減っているんだ。

 僅かではあるが、経験値が減っている。


 原因がまるでわからない。



 ごめん、嘘です


 原因には心当たりしかない。


 君の仕業だろ?


 僕は腹の下にぴったりくっついてる平べったい青色の魚、ボーちゃんに声をかけた。

 まぁ、声に出していないので、ボーちゃんには届いていないだろう。


 でも、ボーちゃんを最初に発見したときは驚いたな。


 いやぁ、普段自分の腹なんてあんまり見ないけど、最近食べ過ぎて太ってないかな?

 なんて思って見てみたら、いつの間にか平べったい魚が僕の腹にくっついていたんだもん。


 最初は気味悪くて追い払おうとしたんだけど、僕の腹や肩をマッサージしてくれてとてもいいやつ。

 鮫肌なのにダメージも受けていない様子だし、一人で寂しかったから一緒に行動することにした。


 たぶん、腹の痒みがなくなったのも、ボーちゃんがくっついてからだから、何かしてくれたんだろう。

 思えば青い気配の正体であるボーちゃんを感じたときから腹の痒みはなくなってたし。


 ちなみに、ボーちゃんというのは、ボードみたいで、ボーっとしてる時間が多いから名付けた。


 正式な名前ではない。

 ステータス把握によると、


【クリーンフィッシュ:HP19/19】


 後から思ったんだが……僕の名付け親がノーチェで本当によかったと思う。

 僕の名付け親が僕自身だったら、僕の名前はひどいことになっていたな。


 うん、たぶん「クロ」。オシャレに言ったとしてもフランス語で黒を意味する「ノワール」程度しか名付けなかっただろう。

 実際、ちょっと考えたこともあった。

 この先進化して、白いワニとかになったときに、「え? お前、白いのにノワールって名前なの? ださ!」とか思われるところだった。 


 と、今回の話はボーちゃんだ。


 たぶん、ボーちゃんは、コバンザメのような魚だと僕は勝手に思っている。

 コバンザメって鮫とか鯨とか大きな魚のおなかにくっついて、排泄物や寄生虫などを食べる魚だったはずだ。

 最近、僕が気持ちいいのも、僕が出した糞を食べてくれたり、僕にくっついた寄生虫を食べてくれているからだろう。


 それだけじゃない。こいつの凄いところ。

 僕は大きな亀を見つけたときのことだ。


 色は、少し薄い赤。僕より弱い。

 この時は僕はボーちゃんとは信頼関係があまりなかったので、彼のことを構わずに攻撃していた。

 噛みつき攻撃で右頬に一発いいのをもらったが、鮫肌のせいで噛みつき続けることができなかったようだ。

 その間に僕は亀の腹をかみ砕いた。


 そこで奇跡が起こった。

 僕の顔の傷がみるみる塞がっていく。


 その原因は、ボーちゃんにあった。


【クリーンフィッシュ:HP16/19】


 ちょうど僕の減っていたHPと同じだ。

 ボーちゃん、僕のために献身を使って治療してくれたんだ。


 ……その時、僕は初めて、「共生」の称号の意味を知った。


 なんて素晴らしいんだ、共生って!


 人は同じ人間同士で殺し合っているのに、違う種族の僕とボーちゃんが、こうして手と手を取り合って……もとい腹と背中を寄せ合って生きていけるなんて!


 ということで、その時から、僕はわざと食べ物を多めにたべこぼし、ボーちゃんに食べさせていた。

 捕食による経験値が減ったのは、その分ボーちゃんに流れているのかもしれないな。


 ちなみに、ボーちゃんは僕よりHPの回復が遅いので、気が付いたら“ヒール”で回復させている。

 回復魔法のスキルレベルのための経験値稼ぎにもなって一石二鳥だ。


 最愛の妻になるのはノーチェだが、仕事のパートナーはこのボーちゃんだな。

 僕がブラックシャークである間だけの付き合いだけど、一緒に頑張ろうな、ボーちゃん。


『やっほぉ! 神様だよ!』


 またスパムメッセージが。削除が大変だな。


『またまたぁ、日本語聞けて、本当はちょっとうれしいとか思ってるんでしょ?』


 確かに、前までは文句を言いながらも、寂しさを紛らわせることが少しあった、ということはある。

 でも、今は違う。

 

 ……僕はこれから、ボーちゃんと一緒に生きる決意表明をしたんだ。邪魔しないでほしい。


『ボーちゃん? クレヨ――』


 それ以上言うな! 何も言うな!

 絶対に言うなよ!


『あぁ、ボーちゃんってその魚の名前か……名前の由来は……なるほど……君、壊滅的に名前のセンスないね』


 僕の心を勝手に読むなよ……あと、他人に名前のセンスをとやかく言われると腹が立つな。


『文句言わないでよ。これでも、君のためにそっちの世界についていろいろと調べてるんだからさ』


 調べてる?

 神様なのに調べないとわからないのか?


『言ったでしょ、僕は地球の神であって、そっちの世界とは無関係……とはいえないけど、あまり情報を持ってないんだよ』


 神なのに全知スキル持ってないのか?

 そりゃ大変だな。


『その、クリーンフィッシュについても調べたよ。絶対こいつ裏切るよ、とか期待している人がいるかもしれないけどさ、そいつはとても宿主思いの魚で、宿主のために命がけで頑張る良い魚だよ。って、これ、ネタバレかな』


 誰もそんなこと期待していないし、思ってもいないよ。 

 ネタバレって誰に対するネタバレだよ、本当に意味のわからないことを言うなよ。


『いや、でも本当に君が蟹のままでなくてよかったよ。てっきり――あぁ、なんでもない』


 てっきり、なんなんだ?


『本当になんでもない。あ、ビデオ予約するの忘れてた、早く家に帰らないと! またね!』


 ちょ――って、もういなくなったのか?

 今時ビデオって……レンタルビデオ店ですらビデオをレンタルしてる店はないぞ。


 ていうか、あいつ、本当に神様なのか?


 とりあえず、僕は獲物を求めて海を進むことにした。  

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