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夢の中でもあなたに会いたい

 僕は今、ホームシックだった。

 鮫に戻り、夜まで休憩すると、HPとMPは全回復した。

 だが、島の上でのサバイバル、命の緊張感から解放された僕に待っていたのは孤独感だった。

 家に帰りたいな。

 いや、日本で僕はどこに住んでいたのかなんて知らないんだけど。


 んー、たぶん、東京かな? いや、横浜かもしれないし大阪かもしれない。

 とりあえず、人口1位~3位の都市を言っておいたから、どこかに入ってたらいいな。

 あ、でも田舎暮らしにも憧れる。


 ……寂しい。

 そうだ、こういう時はあいつの出番だ!

 寂しさを紛らわせるスキルはないか?


【スキルポイントを1支払い、良眠を取得しますか?】


 ……夢で見ろ……と?

 そんなのはいらないんだよ。


 ……はぁ。


【スキル:良眠を取得した】


 うん、覚えた。

 スキル鑑定でスキル効果を見る。


良眠:睡眠中の回復力が上がる。いい夢が見れる。


 あ、いい夢が見れるだけでは……ん……いやいや、うん、予想通りいいものを覚えたな。

 誰に言うでもない言い訳をしながら、僕は寝ることにした。


 できたら、ノーチェの夢を見たいな。

 あ、でも美味しい食事をする夢もみたい。

 生じゃない、きっちり調理された料理を食べたい。


 そんなことを願いながら、僕の意識は闇へと落ちて行った。


   ※※※


 エルフの村には、三つの村がある。

 一つはエルフ女王が纏める、エルフのみが入ることの許される隠れ里。

 そして、一つは川沿いにあるエルフとエルフ以外の人が交易に使うエルフの村。

 最後に、ダークエルフが住むダークエルフの村。


 そのエルフの村に、ノーチェは住んでいた。

 父は、ノーチェが生まれる前に魔物に襲われて死に、母は病気で死んだ。

 一人残されたノーチェは、村のエルフの力を借りて成長した。

 森で木の実を採っているところを狼に襲われた。いつもなら人を襲うことのない狼だが、時期が悪かったようだ。

 後から他のエルフに教えてもらったのだが、あの狼の群れのボス狼をエルフの戦士が討ち取ったため、雄狼同士が次のボスの座を巡って争っていたそうだ。

 そんな中、私を見つけた狼は、気の高ぶりのままノーチェを襲うことにした。

 すでにボスの座は決まっていたのか、それともノーチェを殺したものがボスになるという取り決めがあったのかはしらないが、普段は襲ってこない狼が襲ってきた。


 逃げるノーチェは覚悟を決め、エルフの魂が死した後に行くと言われるマンドスの館に旅立つことを覚悟した。


 だが、そこに現れたのは、狼よりも大きな魚――つまり僕だった。

 僕は狼3匹を殺し、その時に陸へと打ち上げられてしまった。


 何があったのか?

 そう思ったノーチェだったが、さらに彼女にとって信じられないことが起きた。


「あ、あの! 助けてください!」

「え……え!? 誰ですか!」


 突然声が聞こえて、ノーチェは混乱した。


「僕です! ここ、魚! 魚!」

「え、魚さん!」


 ノーチェは僕を見て、信じられない、というように声を上げた。

 人の言葉を解する魔物は魔人と呼ばれ、災いをもたらす存在と信じられていましたから。

 でも、ノーチェは僕のことを信じて、助けることにした。


   ※※※


 ……ノーチェっ! あれ?


 目を覚ますと、そこは夜の海の底だった。

 

 どうやら、夢を見ていたようだ。

 でも、おかしい。夢の中に入ってきたのは、僕とノーチェが出会う前のところから始まっている。

 しかも、知らない情報が頭の中に入ってきた。

 ノーチェの感情もそうだが、エルフの森のこと、狼がノーチェを襲った理由、そしてマンドスの館という言葉。


 僕は夢の中ではただの傍観者であり、自我はほとんどなかった。

 こんな夢の見方は初めてだ。


 もしかして……と僕は思う。


 忠義。使い方も効果もわからないこのスキル。


 これが、良眠と何かリンクして、僕にノーチェの情報を伝えてくれてるのか?


 ……下手しなくてもストーカー御用達スキルコンボになるな。


 でも、これでノーチェの現状がわかるかもしれない。

 僕を庇ったことが原因で村八分状態になっていないだろうか?

 でも、さっきの話だと、そもそも彼女が危険な状態になった原因は他のエルフにあるだろうから、きっちり対応してほしい。


 よし、もう一回寝よう!

 ノーチェの情報がわかるかもしれない!


   ※※※


 僕の前にあったのは、大きなカニチャーハンとエビフライと、たこ焼きだった。

 いただきます!


 人間の姿の僕はカニチャーハンを食べ、エビフライを食べた。

 たこ焼きは……少し熱そうだな。


「ヴィンデさん、私が冷まして上げますね、ふー、ふー」


 横で世界一可愛らしいエルフのノーチェがつまようじでたこ焼きを持ち上げ、吐息で冷ましてくれる。


「あーん」

「ありがとう、あーん」


 うん……味はしないけど、全然熱くないや。さすがノーチェだ。


「じゃあ次はノーチェが食べる?」

「ごめんなさい、私はタコは食べられないので」


 だよね。ノーチェはエルフだ。魚や肉は食べられない。

 そんなことわかりきっている。


「ふふ、そう思って野菜のスープを作っておいたんだ。はい、あーん」

「まぁ、素敵です。あーん」


   ※※※


 普通に良い夢が見れました。

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