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臭いものには蓋をしないと大変なことになる

 流れ星への願いは叶うことなく、僕の狩りは不調だった。

 厄介なことに、渡り鳥の群れがこの海岸に上陸してきた。

 カモメのような外見の鳥が海に飛び込んで漁をし、海岸で糞をしていく。

 糞も海の中でしてくればいいのに。


 しかも、その渡り鳥ときたら、僕の上にまで糞を落としていった。

 くせぇぇっ!


 いや、僕が擬態していたから、鳥には悪気はないんだろうけどさ。


 嗅覚強化のスキルのせいで、僕の嗅覚は強化されているんだぞ。

 しかも、渡り鳥の野郎、あちこちに糞を落としている。

 これはたまらないと、僕は海の中に逃げ込むことにした。


 渡り鳥の群れが遠ざかるのを確認し、僕は砂浜を歩き、打ち寄せる波に揉まれるように進んだ。


 くっ、まだ臭いが抜けない。

 このまま臭いが抜けなければどうすればいいのか。


 いや、さすがに元の姿に戻れば臭いは抜けるよな。

 波に流され海を漂う。


 実はピエールクラブ、そこそこ泳げることが判明。

 足の間に僅かに水かきがあり、むしろ、元人間である僕にとってはこっちのほうが泳いでいる、という感じがする。

 でも、まぁ魚より疲れるので、流されて、獲物を探しているわけだが……やっぱり中型の魚でも僕では厳しいかも。

 赤色になっている。


 暫くさまよった時、何か臭いがきつくなった。

 僕の匂いか? そう思った時、その原因を見つけた。

 索敵により、岩場に白い気配を感じた。


 ……おぉ、あれはまさに僕と同種族、ピエールクラブじゃないか。


【ピエールクラブ:HP1/1】


 石に擬態しているが、ステータス把握スキルのある僕の敵じゃない。


 そうか、あいつらも鳥に糞を落とされて逃げて来たのか。

 糞まみれの同族を食うのは気がひけるが、背に腹はかえられない。


 あいつらを食えば、僕の経験値は一気に上がるだろう。


 僕はあいつらに気付かれないようにゆっくりと忍び足で近付いていく。

 近づけば近づくほどその臭いは強くなっていく。


 よし、もう少しだ! あとはこの大きな岩を登れば――


 ん?


 ウソだろ、おい!

 僕は岩に上るのを諦め、逆に岩の下に入った。


 空から、奴らが落ちてきたから。


 ザバンザバンと水に落ちる音とともに、濃い赤色の気配が水の中に入ってきて、白い気配を連れていく。

 間違いない、空の渡り鳥がピエールクラブを連れて行ったんだ。


 でも、なんで?


 もしかして、奴らもステータス把握を?


 と思った直後、僕の目の前に水しぶきが上がった。

 そして、鋭い嘴が岩の下に伸びてきた。


【ブルガルアペ:42/42】


 危ない!


 もう少しで食われるところだった。


 え? なんで? ここは岩の陰で見つかるはずが……違う!


 そうじゃない、僕は勘違いしていた。

 奴らは見ていない。嗅いでいるんだ。


 僕の身体についた糞のにおいをたよりに、僕たちを追っている。

 糞の匂いと鳥の攻撃を恐れて海に逃げた僕たちの臭い、それを追って攻撃してきている。


 くそっ、それなら死角に隠れようと意味がない。


 できるだけ岩の下に隠れないと――


 そう思った時だった。再び水しぶきが上がり、鋭い嘴が僕の右足を捉えた。

 しまった、下手に足を出したから……うわっ……


 僕の身体は急に持ち上がり、空へと浮き上がった。


 ……その時、僕の目に映ったのは、明らかな死だった。

 高さ20メートルくらいだろうが、僕にとっては上空3000メートルといってもいい。

 ここで暴れて落ちても死ぬだけ。


 ぐっ、何かいいスキルはないか!


 死にたくない……くそっ、何か。


 何かに助けを求める僕は、それを見た。


 昨日見たマウントシェルを。

 その巨大フジツボを。

 様子がおかしい。昨日と違い、口(?)から、潮を吹きだしまくっている。

 もしかして――


【マウントシェル:HP1/99】


 僕の放った秘孔……が効果あったの?

 秘孔という名の……毒攻撃が、ようやく効いてきたってこと?


 毒に耐性があるのか、それとも身体が大きいからか、毒の効きが悪かったようだが、ようやくHPが1になったということか。


 その時だった。


【マウントシェル:HP0/99】

【経験値30取得】

【ヴィンデのレベルが上がった。各種ステータスがアップした。スキルポイントを手に入れた】

【ヴィンデのレベルが上がった。各種ステータスがアップした。スキルポイントを手に入れた】

【ヴィンデのレベルが上がった。各種ステータスがアップした。スキルポイントを手に入れた】

【ヴィンデのレベルは最大です。これ以上経験値を取得できません】

【スキル:擬態を取得した】


 来たぁぁぁっ!

 ステータスを確認している暇はない! 変身!

 ブラックシャーク!


 そう念じた直後、僕の身体が膨らんでいった。

 一番驚いたのは僕を咥えていた鳥――ブルガルアペだっただろうな。


 蟹が急に鮫に変わったんだから。

 嘴が大きく曲がり、僕の巨体に押しつぶされながら海の中に一緒に落下していった。


 水面に叩きつけられた。


 痛ぇぇぇっ! 思いっきり腹打ったよ。

 でも……本当に痛かったのはこいつだろうな。


【ブルガルアペ:12/42】


 僕の巨体に押しつぶされ、30もダメージを受けている。

 で、もちろん……! イタダキマス!

 鳥の断末魔の雄叫びが聞こえた。


【経験値11獲得】

【スキル:“捕食”の効果により経験値22獲得】


 ……うぅん、久しぶりの鳥肉だ。

 今度は焼き鳥を食べたいな。

 にしても、経験値33ももらってレベルが1も上がらないとなると、ブラックシャークから次の進化への道は遠そうだ。


……………………………………

名前:ヴィンデ

種族:ブラックシャーク

レベル:1


HP 15/310

MP 1/68

状態:記憶喪失

スキルポイント20


攻撃 104

防御 81

速度 91

魔力 61

幸運 27

経験値補正+10%


スキル:【捕食:Lv2】【言語理解:Lv1】【叡智:Lv2】【ステータス把握:Lv2】【スキル鑑定:Lv3】【索敵:Lv2】【泡:Lv2】【献身:Lv1】【硬い鱗:Lv1】【鋭い歯:Lv1】【肺呼吸:Lv1】【土魔法:Lv1】【鮫肌:Lv2】【HP自動回復:Lv2】【忠義:Lv1】【毒攻撃:Lv1】【回復魔法:Lv1】【マッピング:Lv2】【嗅覚強化:Lv1】【変身:Lv1】【擬態:Lv1】

称号:【転生者】【異世界魚】【記憶喪失】【捕食者】【蟹の天敵】【子持ち】【子沢山】【スキル収集家見習い】【魔術師】【出世魚】【称号収集家見習い】【ハートブレイク】【ネームドモンスター】【毒持ち】【癒し手】【迷宮ウォーカー】【魔王を討伐せし者】【スキル収集家】

……………………………………


 ……うん、やっと安心できるステータスだが、HPは安心できないな。

 なんか、HPが低いせいか、けがはしていないのにとても疲れた感じがする。

 ってあれ?


 そういえば、ピエールクラブのレベルが2になったときの違和感があった。

 その正体が今、はっきりとわかった。


 ……スキルポイント、今回の騒動で8も増えてる。

 しかも、スキルも獲得できた。いや、変身中ずっとあった擬態なんだけど、ピエールクラブのレベルが5になったときに覚えたのかも。


 ……もしかして、変身スキルを利用したら、ボーナス的なパワーアップができるんじゃないか?


 そんな淡い期待をしていたが、それ以上の懸念材料が一つ。


 やばいなぁ、臭い落ちてないじゃないか。

 僕の身体についた鳥の糞のかぐわしい臭いはまだ残っていた。

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