表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/171

食べ物を求め彷徨うも……

 僕がピエールクラブになった日は、プラージュクラブの巣で寝ることになった。

 海の音を聞きながら寝る。水の中以外での初めての睡眠。

 夜になり、穴からゆっくり外に出てみると、僕の目に映ったのは満天の星空と、流星群だった。

 星々が空から降りては消えるその光景。


 まるで、空に星が多すぎて、そのせいで零れ落ちている……そんな風に思う。


 その光景に、複眼を輝かせた……まぁ、どういうわけか、蟹になって複眼になっているはずなのに視界は一つしか見えない。

 ただし、その範囲はとても広い。脳内補正しているのかな?

 おかげで、星空の大パノラマを人間以上に満喫できた。


 流れ星と聞いて、日本人の9割以上が知るはずの伝承を思い出す。

 つまりは願い事を3回言ったらいいと。


 これだけながれぼしがあるんだ、一つくらい僕の願い事をかなえてくれるだろう。


「ノーチェとまた会えますように。ノーチェと結婚できますように。ノーチェと幸せな家庭を築けますように」


 僕は爪を合わせて祈り、暫しその光景を見入った。


   ※※※


 翌朝。僕のサバイバルクラブ二日目。

 ……サバイバルクラブというと、なんか学校の部活みたいで面白いよね?

 でも、クラブは“crab()”であって、“club(部活)”じゃないんだけどね。

 僕は敵、もしくは獲物の気配を探りながら、海辺を進んでいた。

 とりあえず、今の目標は動かない敵。フジツボ。

 もしくは……うん、諦めよう……もしくは、フナムシだ。

 ブラックバスの時、小さな虫を食べても経験値は得られなかったが、大きな虫なら経験値ももらえるだろう。

 

 正直、ダンゴムシやフナムシは苦手なんだが、僕は蟹なんだ。

 食べられるものは食べないと。


 ん? ヤバい、強敵の気配。

 僕が進もうとしている方角の砂の下に何かがいて、上がってきている。


 僕は砂を掘って身体のほとんどを埋め、石に擬態した。

 弱くなってしまった僕の唯一の身の守り方だ。


 そして、それは砂の中から現れた。

 甲羅の陰からこっそりその姿を見た。


 巨大な虫……その名前は、


【エグジル:HP190/190】


 全長3メートルはあろうかという虫。

 そして、見た目はどう見ても……巨大なフナムシだ。


 さて、ここでツッコミを入れよう。


 どこのオー○だよっ!

 砂の下に帰れ! ここはお前の住む世界じゃない!


 僕の願いが通じたのか、エグジルは砂の中へと戻っていき、僕の索敵の範囲から消えた。

 擬態を解除し、穴を見下ろす。

 そこには闇が続いていて、どこまで続くかわからない。

 しかも、穴のせいでこのあたりが崩れそうだ。


 早く逃げるか。


 うん、フナムシを食べるのは諦めて、今日はフジツボ探しをしよう。


 僕は海岸を進む。


 途中で、巨大鳥(トンビっぽい鳥)の襲撃、ガ○ラ(ウミガメっぽい亀)の襲撃などもあったが、なんとか見つけることができた。

 フジツボの群生を。


 フジツボって、富士山状の形をしているから、フジツボという名前だと聞いたことがある。

 でもさ――


【マウントシェル:HP99/99】


 でかすぎるだろ。

 高さ5メートルはあるし、僕の大きさからしたら、その大きさはまさに巨大な山だ。

 ブラックシャークなら食べれるだろうけど……


 僕は爪でその硬い身体を叩いてみる。

 うーん……一応、あれをやっておこうか。


 MPを込めて、マウントシェルの秘孔をついた。


「お前はもう……死んでいる……」


 5秒数えてみる。

 何も起きない。

 1分待つ。何も起きない。

 ……5分待っても何も起きない。

 ……もう一度MPを込めて攻撃を……って無駄か。


 いやぁ、動かない相手だから、もしかしたら、って思ったけど。

 でも、今の僕だと無理のようだ。


 他に食べれるものはないだろうか?

 そう思いながら、帰っていく。


 途中でワカメを拾って、それを今夜の晩御飯にした。

 明日は何か食べれそうなものを探せたらいいな。


    ※※※


 夜になり、東の空から月がゆっくり昇ってくる。

 そんな中、僕は星空を眺めた。

 今日も満天の星空。

 ……そして、流れ落ちる星々。


 昨日と同様、僕は祈った。


「弱い獲物! 食べ物! 経験値!」


 ノーチェに会うのは、僕がブラックドラゴンになってからだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ