そして○○に進化しました
僕はこれから、重大な選択をする。
何に進化するか? というものだ。
前回は、ブラックリトルシャークにしか進化できなかったわけだが、神が言うには、今回からは枝分かれ。
つまり進化の分岐があるという。
最終的にはどんな進化を辿ってもブラックドラゴンに行きつくように設定されているらしい。
だが、それでも近道か遠回りか、くらいの差はある。
例え進化の回数が同じでも、レベルを上げやすいか? 生き延びやすいか?
安全な遠回りか、危険な近道か?
そんな選択肢がきっとあるはずだ。
よし、進化するぞ……ってあれ?
あ、そうか、叡智がOFFになっていた。
【進化先を選択してください】
よし、ONに切り替えることでメッセージが聞こえる。
本当に、このスキルがなかったら僕は進化もできなかったんじゃないだろうか?
……………………………………
・ブラックシャーク
黒い鮫。淡水でも海水でも生存可能。
とても凶暴で、食いついた獲物は逃がさない。
取得可能スキル:【鮫肌】【嗅覚強化】
……………………………………
あぁ、やっぱりか。リトルが抜けた鮫。
これが安定した進化先だとは思う。
だが、これでいいのだろうか?
大きな体というのは、陸での繁栄には不向きじゃないのか?
特に両生類は、僕の知る限り大きい生物ではない。
世界一大きな両生類のオオサンショウウオでさえ、全長2メートルはなかったはずだ。
これ以上大きくなって、これからの進化に影響しないだろうか?
ここは慎重に、次の選択肢を見るべきだ。
幸いというか、不幸というか、今回の選択肢は二つのようで、比べるのは楽だろう。
……………………………………
・ブラックタイガー
長いひげを持つ大型の黒みがかった海老。
フライにしてもよし、焼いてもよし。
取得可能スキル:【海老反り】
……………………………………
【ブラックシャークに進化します。よろしいですか?】
はい。
【選びなおすことはできません。本当によろしいですか?】
はい。
【ヴィンデはブラックシャークに進化した。各種ステータスが変化しました】
【スキル:嗅覚強化を取得した】
【鮫肌のレベルが2に上がった】
【HP自動回復のレベルが2に上がった】
身体が大きくなった。あと、HP自動回復のレベルが高くなったのは素直にうれしい。
10メートルはあるんじゃないだろうか?
もう少し小さいか。
比較できるのがあまりないからな。
大雑把に10倍くらいになってしまった、というイメージしかない。でかすぎるだろ。月を見たサイ○ジンみたいな変化だ。
……ってか、神は本当に大馬鹿だろ!
なんでブラックタイガーなんだよ!
進化論無視か! 絶対ネタだよな!
ブラックが付けばなんでもいいと思ってるだろ!
とまぁ、怒鳴り終えたところで、自分のステータスを確認。
……………………………………
名前:ヴィンデ
種族:ブラックシャーク
レベル:1
HP 310/310
MP 68/68
状態:記憶喪失
スキルポイント22
攻撃 104
防御 81
速度 91
魔力 61
幸運 27
経験値補正+10%
スキル:【捕食:Lv2】【言語理解:Lv1】【叡智:Lv2】【ステータス把握:Lv2】【スキル鑑定:Lv2】【索敵:Lv2】【泡:Lv2】【献身:Lv1】【硬い鱗:Lv1】【鋭い歯:Lv1】【肺呼吸:Lv1】【土魔法:Lv1】【鮫肌:Lv2】【HP自動回復:Lv1】【忠義:Lv1】【毒攻撃:Lv1】【回復魔法:Lv1】【マッピング:Lv2】【嗅覚強化:Lv1】
称号:【転生者】【異世界魚】【記憶喪失】【捕食者】【蟹の天敵】【子持ち】【子沢山】【スキル収集家見習い】【魔術師】【出世魚】【称号収集家見習い】【ハートブレイク】【ネームドモンスター】【毒持ち】【癒し手】【迷宮ウォーカー】【魔王を討伐せし者】
……………………………………
レベルは下がったが、ステータスは大幅に強化されている。
だいぶ強くなったなぁ。
これだと、ロッシュクラブが20匹来ても問題ない。
あと、スキルポイントも5も増えてる。
ただ、身体が大きい。こんなにでかければあの巨大鯱から逃げるのが難しくなる。
残念ながら、今の僕ではあいつにはまだ敵わない。
【スキルポイントを12支払い、変身を取得しますか?】
やっぱり、これかな。
少なくともブラックバスには変身できるのは確かだし。
【スキル:変身を取得した】
【称号:スキル収集家を取得した】
【スキル鑑定のレベルが3に上がった】
おぉっ! スキル鑑定がレベル3になった。
試しに捕食を鑑定する。
レベル2になるための条件が追加されていた。捕食により一定数の経験値を得る。
あぁ、それであの時レベルが2に上がったのか。
ちなみに、僕の持っているスキルのレベル2に上がるための条件を全て見たところ、
……………………………………
言語理解:3種の言語で会話する。
叡智:不明。
ステータス把握:一定回数ステータスを確認する。
スキル鑑定:スキルを10種取得する。
索敵:一定数獲物を見つける。
泡:一定回数泡を使う。
献身:一定回数献身を使う。
硬い鱗:一定ダメージ、身体に物理攻撃を受ける。
鋭い歯:一定ダメージの物理攻撃を与える。
肺呼吸:陸上で100時間生活する。
土魔法:一定回数土魔法を使う。
鮫肌:一定ダメージを鮫肌で与える。
HP自動回復:最大HPが100になる。
忠義:主人の主君のレベルが2になる。
毒攻撃:一定回数毒攻撃をする。
回復魔法:一定回数ヒールを行う。
マッピング:1ヶ所、ダンジョンを完全制覇する。
嗅覚強化:10種の花の香りを間近で嗅ぐ。
変身:変身可能な種族が5種になる。
……………………………………
となった。
あぁ、なるほど。HP自動回復のレベルが上がったのはこのためか。
だいたいは予想通りのレベルの上げ方だ。
ただ、新しく覚えたスキルのレベルの上げ方が面白いなぁ。
花の香か……はは、海の中でどうやれと?
まぁいい。
スキル鑑定は偶然の産物だ。
今回の目的は、あくまでも変身だからな。
変身! と念じる。
……………………………………
ブラックバス 10/10
ピエールクラブ 1/5
ブラックリトルシャーク 15/15
……………………………………
3種の名前と、数字が脳内に現れる。
ん? ブラックバスに戻れるから、ブラックリトルシャークになれるとは思っていたが。
ピエールクラブに変身できるの?
やっぱり人間には変身できない。残念だ。
で、ピエールクラブに変身できる理由を考えた。
……蟹の天敵。
ピエールクラブを食べまくって覚えた称号だ。
これのおかげじゃないだろうか?
もしかしたら、人を食べまくって、人類の天敵を覚えたら、人に変身できるんじゃないだろうか?
って、もちろんそんなことはしない。
そんなことをしたら、ノーチェに顔向けできないから。
……でも、盗賊とか悪人だけを食べる……とかなら……って、ダメだ。
僕の倫理観からしたら、やっぱり人は食べられない。
ヘタレでごめんよ、ノーチェ。
でも、必ずブラックドラゴンになるから、待っていてくれ。
※~1時間後~※
ノーチェごめん……なんか、すごい遠回りをすることになった。
ていうか、本当にどうしよ。
僕は困っていた。
自分がバカだった。
僕は……今現在、ピエールクラブになっています。
そして、元に戻れなくなりました。




