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そして、約束は守られた

「あなたは……喋る魔物ですか?」


 アルモニーが僕を見下ろす。 

 えっと、もしかして、僕のこと今まで全く眼中になかった?


「俺の友だ。彼女を送り届ける協力をしてもらった」


 フォーカスがそう言うと、アルモニーはゆっくりと翼を羽ばたかせ、水の上に降り立った。


「そうですか。ふむ、珍しい。魔人……ではなさそうですが」


 美しい顔だが、本当に生きているのだろうか? まるで造りものの美しさ、人形みたいなその容姿には人の温かみなどまるでない。

 僕をじっと見つめる瞳。笑ってはいるが、その目には感情というものが感じられない。

 どこまでも暗く深い瞳に、僕は吸い込まれそうになる。

 怖い怖い怖い怖い怖い怖い……怖いんだけど。


「あ、あの、フォーカスさんを処刑ってどういう意味ですか?」

「言葉の通りです。彼には死んでもらいます」


 死……なんで?

 なんで殺すんだ?


「フォーカスさん、あざらしみたいな恰好してますけど、あざらしじゃないから、食べても美味しくないと思いますよ!」


 僕がそう教えると、アルモニーは淡々と、


「いえ、食べるためじゃありませんよ」

「え? 食べる以外で、見るからに最強のあなたが命を奪う理由が思い浮かばないんですが」

「調和のためです」


 調和?

 何が調和?


「言っただろ。俺の迷宮は異常なのだと。真迷宮以外の場所に迷宮を作ることは許されない」

「どうして? 誰にも迷惑はかけてないだろ!」


 フォーカスは迷宮の奥でアネモネと一緒に幸せそうに暮らしていただけだ。


「そう言う問題じゃないんだ」


 フォーカスは僕に言いきり、


「調和の魔王アルモニーよ! 早く裁きの光を! それと、約束してくれ! こいつには手を出すな!」

「ええ、構いませんよ。それでは――」


 や……やめろぉぉぉっ!


 僕の叫びは、天からの轟雷に打ち消された。

 同時に、僕の周りに光の膜が現れる。


 一体、誰が?

 アルモニーだ。僕に手を出さない、という約束を果たすためにこんなことをしたのだろう。

 もしもこれがなかったら、僕は確実にあの雷の力により感電死していた。


 そして、雷が消えたとき、僕の目に映ったのは、瀕死のフォーカスだった。

 あれを喰らって、まだ生きているのか?


 凄い、そんなに強いなら逃げられるんじゃないか?


「なるほど、スキルですか」

「ああ。最大HPを超えるダメージを与えられた時、HP1残すスキルだ」


【フォーカス:HP1/1800】


 本当だ。フォーカスは……ぐっ。


「待ってろ! すぐに回復魔法を……」


 そして、フォーカスはゆっくりと泳ぎ、僕の前に来ると、僕の頭を触った。


「約束だ。お前のレベル上げを手伝うと」


 な、フォーカス……一体、何を……僕の頭を撫でるな! なんのつもりだ!

 体温で火傷するだろ。

 それに、そんなことをしたら、お前……ウソだろ!


【フォーカス:HP0/1800】


【経験値50000獲得】

【ヴィンデのレベルが上がった。各種ステータスがアップした。スキルポイントを手に入れた】

【ヴィンデのレベルが上がった。各種ステータスがアップした。スキルポイントを手に入れた】

【ヴィンデのレベルが上がった。各種ステータスがアップした。スキルポイントを手に入れた】

【ヴィンデのレベルが上がった。各種ステータスがアップした。スキルポイントを手に入れた】

【ヴィンデのレベルが上がった。各種ステータスがアップした。スキルポイントを手に入れた】

【ヴィンデのレベルが上がった。各種ステータスがアップした。スキルポイントを手に入れた】

【ヴィンデのレベルが上がった。各種ステータスがアップした。スキルポイントを手に入れた】

【ヴィンデのレベルが上がった。各種ステータスがアップした。スキルポイントを手に入れた】

【ヴィンデのレベルは最大です。これ以上経験値を取得できません】

【ヴィンデは進化条件を満たしています】

【称号:魔王を討伐せし者を取得した】



 ……な……なんで。

 なんで、フォーカス、お前……。


 そんなの僕は望んでいない!

 お前を犠牲にしてレベルを上げて、アネモネになんて説明したらいいんだよ!


 チクショーっ!


「鮫肌……鮫系の魔物のユニークスキルでしたね。私に殺されるくらいなら友に殺される道を選んだのですか」

「うるさい! お前がいなければ、フォーカスは死ななかった! なんでお前が……」


 こいつを殺したい。

 僕ははじめて、ただ単純に誰かを殺したいと思った。

 こいつを殺す力を僕に!


【呪殺を取得するにはスキルポイントが足りません】


 くそっ!

 

 僕はもうヤケクソ気味に体当たりをした。

 毒効果を付与した攻撃を、アルモニーはさらりとかわし、空に飛びあがった。


「彼との約束です。あなたには手を出しません。ただし、今日だけです。今度会った時はどうするかわかりませんよ」


 アルモニーはそう言って、飛び去った。

 僕は結局、無力だった。

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