コンボーナス!
「誰もいないね」
本当に人が住んでいるのだろうか? もしかして、集団引っ越しでもしたのだろうか?
索敵スキルに反応がない。
もしかして……もしかして、既に全員暴れサボテンに襲われて死んでしまったのではないだろうか?
「そのようですね――もしかしたらサボテン畑に行っているのかもしれませんね」
「あぁ、そういう可能性があったんだ」
そうだよね。そう考えるほうが自然だ。
そう思って歩いていくと、急に索敵に白い気配が。
第一村人発見か?
そう思って気配のした方向をみたら、そこにいたのは――
「……サボテンだ」
「……サボテンですね」
サボテンが二本足で歩いている。世の中には赤とか黄色とかのサボテンもあるけれど、オーソドックスな緑のサボテンだ。
【暴れサボテン:HP21/21】
あぁ、こいつが暴れサボテンか。へぇ、可愛いじゃないか。
僕は笑顔で暴れサボテンに近付いていく。
「ヴィンデさん、危ないですよ!」
ノーチェが大きな声をあげて僕に警戒を促した。
「大丈夫だよ。HPも低いし、気配も白いから問題ない」
「いえ、ヴィンデさん! 暴れサボテンに抱き着かれると大変なことに――」
大変なことって、なんだろ?
もしかして、嫉妬するってことかな? だとしたら心配しないで欲しい。こんな風に暴れサボテンに抱き着かれても――ってあれ? なんかこのサボテンが赤くなって――
突如、暴れサボテンが爆発した。
その衝撃に、一瞬天国にいるフォーカスが手を振っているのが見えた気がした。
「ヴィンデさん、大丈夫ですかっ!? ヒールっ!」
「いや、衝撃が凄まじくて死んだかと思ったけど、HPはそれほど減っていない――っていうか、いったいなんだったの!? 自爆? メ〇ンテ?」
「暴れサボテンは、外敵を発見すると抱き着いて爆発する特性があるんです――そして爆発の衝撃で種を飛ばし――」
とノーチェが周囲を見た。僕もつられて周囲を見ると、さっきふきとんだ暴れサボテンの破片の一部から新たな暴れサボテンが誕生していた。その数は十匹程に増えていて、まとまって動いていた。
「これは近付けば厄介だ――炎で攻撃を」
「待ってください、ダメです、ヴィンデさん。炎による攻撃も物理的な攻撃も全て爆発するきっかけになります。倒そうと思えば相手を凍らせるような攻撃をするしかありません」
「凍らせる攻撃……氷属性の魔法か。よし、わかった」
氷系の魔法は覚えていない。
でもスキルポイントは幸い24ポイントもあるし、冷たい飲み物が飲みたいときに便利そうだから覚えておいていいだろう!
【スキルポイントを15支払い、氷魔法を取得しますか?】
【氷結魔法を取得するにはスキルポイントが足りません】
そうだった、氷魔法は結構お高いんだった。
でも、ここで覚えないといつ覚えるっていうんだっ!
【スキル:氷魔法を取得した】
よし、これでいけるっ!
レベル1で使える魔法は――氷礫か。
「氷礫っ!」
僕が魔法を使うと、氷の礫が真っ直ぐ暴れサボテンの群れに飛んでいき、その先端に当たった。
よし、命中だ!
そう思った時――暴れサボテンが爆発した。
しまったっ! 考えてみればこれって普通に鈍器で殴っているのと同じだ!
属性ばかりに気を捕らわれていて、肝心なことを見落としていた。
氷魔法でも氷の中に相手を閉じ込めるような魔法じゃないと意味がないじゃないかっ!
しかも、暴れサボテンたちはその爆発に巻き込まれ、さらに誘爆を繰り返し、合計五匹の暴れサボテンが爆発することになった。
【称号:コンボビギナーを取得した】
【スキル:コンボボーナスを取得した】
【経験値42獲得、次レベルまで残り経験値1969】
【経験値43獲得、次レベルまで残り経験値1926】
【経験値44獲得、次レベルまで残り経験値1882】
【経験値46獲得、次レベルまで残り経験値1836】
【経験値50獲得、次レベルまで残り経験値1786】
なんか変な称号とスキルを覚えた。恐らく暴れサボテンが誘爆した数に応じてコンボが発生し、コンボに応じて経験値が多めに入手できるようになっているのだろう。
というのはわかったんだけど……でも、これってちょっとやばくないか?
さっきの爆発で暴れサボテンはさらにその数を増やす結果に終わってしまった。
めざせフルコンボ!




