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メイベルからの依頼

章題は後日談のままですが、新章開始です

 婚約式が終わってから何日かが過ぎた。

 もう脱皮による後遺症も全く残っていない。一応、今日までは大事を取って戦闘などは控えていたがこの分だと問題ないだろう。

 黒色の翼を羽ばたかせ、軽く飛んでみる。うん、もう落ちることもない。


「だいぶと体が鈍っちゃったなぁ……まぁ、お金は結構稼げたけど」


 もちろん、宿屋にいる間ただ何もせずに遊んでいたわけではない。独り身だったらそれでもよかったかもしれないけど、今はノーチェと一緒だからね。甲斐性なしな男ではないことを証明するためにも働いた。

 主に、蜘蛛の糸を吐き出し、それをメイベルに売って日銭を稼いでいた。

 僕の蜘蛛の糸は「溶岩蜘蛛の糸」と言う糸と同じ性質を持ち、火に非常に強い服が作れるのだという。紡績ギルドに入っていないのが残念だと言っていた。ちなみに、十分間、糸を吐き続け、丁度グレープフルーツくらいの大きさにまで育った糸玉の買い取り価格が銀貨十五枚だった。魔蜘蛛の糸玉に比べたら五枚ほど安いけれども、普通の蜘蛛の糸に比べたら十分高い。

 ちなみに、糸吐きスキルを覚えて理解したんだけど、攻撃として使った糸は時間が経過すれば消えてしまうけど、巣や罠を作るために吐く糸は消えてなくなることはない。また、巣や罠として吐く糸に粘着性は実はない。蜘蛛は粘着性をつけるために粘球と呼ばれる球を糸に等間隔につけている。

 確かに、全部粘着力のある糸だったら自分自身が絡みついてしまうからね。蜘蛛は巣や罠を作るとき、粘球のない糸の上だけを歩いているらしい。

 今回僕が吐いているのは粘球のない糸だった。

 ゆっくり休めたおかげで、命の燃焼のペナルティーも、HP900減にまで落ち着いたし。

「んー……」

 と僕は仰向けに空を飛びながら考えた。

「ヴィンデさん、器用に飛びますね」

 ノーチェが俺を見て感心して言った。

「何か考え事ですか?」

「いや、ちょっとね――明日出発だなって思ってさ」

 明日――僕たちはこの町を出ることになった。といってもこの町を去るわけではなく、仕事のために町を出る。仕事が終わったらラビスシティーに戻ることも可能だ。

「寂しいですか?」

「いや、ノーチェと一緒だからどこに行っても寂しくないよ」

「子供たちに会わなくてもいいのですか?」

「……うん。今更会いにいくつもりはないよ。きっとあの子たちももう僕のことを覚えていないだろうし」

 この町の湖には僕の子供たち――つまりブラックバスがいる。ノーチェが町の人に聞いたところ結構な数が目撃されているそうなので、元気でやっているのだろう。まだ成魚にまではなっていないだろうけど、二年後には孫が誕生しているかもしれないな。孫沢山とかの称号も手に入りそうだ。


「問題は行き先がビル・ブランデってことなんだよな」


 ビル・ブランデ。この町の北にある国だ。

 農業国家で特に目立った産業はないけれども、ひとつ大きな名所がある。ドラゴンバレーと呼ばれる谷に、多種多様なドラゴンが生息している。そして、そのドラゴンバレーから一頭のドラゴンが飛び立った。ブルードラゴン。

 彼は多くの災いとともに南のコースフィールドまで飛び、その国の湖で死んだ。


 ドラゴンバレーで何があったのかはわからないけれど、僕は絶対にその国に近付くまいと決めていた。

 でも、メイベルからの依頼があった。

 ビル・ブランデにいる取り引き先の人にアイテムを届けて欲しいという依頼だ。とても大切なアイテムなので信用のできる相手にしか任せたくないらしい。本来ならクリスティーナに頼む予定だったのだが、彼女は冒険者ギルドからの依頼で南西のリーリウム王国――僕がコーラサラマンダーだったころに闘技場で戦ったりした国だ――に派遣されて期日内には無理そうだった。

 少し悩んだけど、メイベルには世話になったから、結局ぼくたちはその依頼を受けることにした。

 依頼の期日には余裕はあるし、ドラゴンバレーからはかなり遠い場所にあるので問題はないだろう――とは思うんだけど。


「でも、ドラゴンが災いを運んだという情報が広がっていたら、僕が一緒にいたらノーチェに迷惑が掛からないか心配だよ」

「大丈夫ですよ、ヴィンデさん。ヴィンデさんはかわいいですから、きっと新しい町にいっても人気者になります」

「…………あ、ありがとう」

 

 笑顔で言うノーチェに僕はお礼を言った。でも、どうせならカッコいいと言って欲しいよな。赤ん坊だからそれは無理かもしれないけど。


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