幸せの青い鳥と黒い竜
別に進化が目的ということではない。
進化して、強くなり、ノーチェを少しでも楽させてあげることが目的だ。それと、スキルポイントも欲しい。
このあたりの魔物の情報はすでにメイベルから貰っている。
まずは大きく息を吸って、
美味しそうな香り!
スキルを使って口から魔物が喜ぶ香りを出す。
それはすぐにやってきた。
「来た!」
大きさは、大型犬くらいある、黒と黄色の縞模様の魔物。虎ではない、猫だ。
【シングキャット:HP28/28】
狂暴な牙が見えているが猫だ。
このあたりで普通に出てくる魔物らしく、群れで活動する。
正面からゆっくり歩いているシングキャットを見ていた、その時――僕のそれほど長くない尻尾が後ろから襲い掛かってくる別の魔物に強打した。
肩越しに後ろを見ると、別のシングキャットが二匹。前の一匹が囮で、気配を出して近付いてきて、後ろの二匹が気配を消して襲い掛かるつもりだったのだろう。
索敵スキルがなかったら、僕も少し危なかったかもしれないが。
他にも左右の茂みに二匹ずつ、合計7匹のシングキャットがいることは確認済み。
――じゃあ、行くぞ、猫ども!
愛猫家の方がいたらごめんなさい! と思いながらも、駆除対象の魔物のため、僕は遠慮なく彼らを潰していく。
時には尻尾ではたき、時には角で突き刺し、でも基本は土魔法による攻撃か、口から吐くブレス攻撃で。
【経験値9獲得、次レベルまで残り経験値4752】
……しょぼい。まぁ、連携こそやっかいだが、強さは僕が鮫だったころ、ノーチェを襲ったベロウウルフくらいの弱い魔物で、経験値も似たようなものだ。
これらの魔物は先程もいったように駆除対象の魔物であり、右耳を切って持って行けば報奨金が貰える。一匹につき銅貨3枚。
とりあえず塵も積もればということで、右耳を切り取りつつ、倒したシングキャットはアイテムBOXに収納していく。
食べている暇はない。
次から次へとシングキャットは現れた。
30匹くらい倒したところで、
【称号“猫の天敵”を予約取得した】
【スキル“鋭い爪”のレベルが3に上がった】
スキル被りか。さすがに持っているスキルが100を超えると被ることも多くなる。
あと、猫には変身できないようだ。オークの天敵を持っているのにオークにも変身できなかったり、いろいろと細かい条件がありそうだな。
30匹倒したところで、猫が来なくなった。
この付近にいる群れは全て倒したのだろう。
場所を移動し、さらに魔物を呼び寄せる。今度出てきたのは鳥だった。
【チャイルドバード:HP238/240】
少しHPが減っているが、ダチョウのような姿の赤い羽の生えた鳥だった。
チャイルドという名前であるが、僕よりも大きい。
なんでも、このあたりに、大昔生息したマザーバードと呼ばれる鳥の子孫の魔物なんだという。
マザーといえば、マザーアントやマザースネークあたりと戦ったことがある僕だけれども、子供でこの強さなのだとしたら、本体には会いたくない。
チャイルドバードの攻撃は鋭い嘴による攻撃と、大きな翼による攻撃、そして足による踏みつけなどがあるそうだ。
「いくぞ、チャイルドバード! ヴィンデバリスタ!」
超高速での体当たり。僕の角がチャイルドバードの喉に突き刺さる。
血が噴き出て僕の体が返り血に塗れた。
【経験値98獲得、次レベルまで残り経験値4204】
うん、悪くない。が、目当ての魔物はこいつじゃない。
でも、チャイルドバードがここにいるってことは、目当ての魔物もいるだろう。
チャイルドバードは基本、全員が赤い鳥だ。
でも、目撃情報が正しければ、それはいるはず。
僕に幸せを運んでくれる鳥が。
割合でいったら、三パーセントくらいはその鳥らしい。
つまりは三十三羽か三十四羽、チャイルドバードを倒していけばそいつが現れることになる。あくまでも確率の話だ。
でも、確率は常に崩壊する。時にはいい方向に。
【チャイルドバード(蒼):HP442/442】
二羽目で来たっ!
レアモンスターだ!
普通は真っ赤なはずのチャイルドバードが、このチャイルドバードだけは青色。
そして、レアモンスターは必ず経験値が高い!
闘技場以来のレアモンスターの登場に、僕は全力で攻撃した。
「秘技、稀・即・突」
チャイルドバードの特徴はその素早い動きらしいのだが、速度を鍛えた僕の敵ではない。
一瞬で間合いを詰めて僕の角がチャイルドバード(蒼)の首をへし折った。
【経験値1400獲得、次レベルまで残り経験値3804】
おぉ、一気に1000オーバーの経験値が。アルビノ種のサンライオンと同じくらいか。
これを食べたら一気に経験値7000か。ふふふ、うますぎるぜ。
そう思って振り返ったら、もう一羽、青い鳥がいた。
「やっぱり青い鳥は幸せを運んでくるんだな!」
僕はそう叫び、逃げ出そうとするチャイルドバード(蒼)の背中に飛びかかった。
※※※
美味しい匂いにこれ以上魔物が呼び寄せられることを回避するため、倒したチャイルドバードはアイテムBOXに入れ、空を飛び、誰もいない場所に移動。
アイテムBOXから二羽のチャイルドバード(蒼)を取り出し、羽をむしる。
そして、ドラゴンブレスで岩を熱し、その上に丸ごと焼いた。
アイテムBOXから塩を取り出して味付けは完璧。
そして、僕は豪快に、骨ごとかぶりついた。
一口食べるごとに大量の経験値が入って来た。一羽目を三割くらい食べたところでレベルが上がり、
そして、二羽目、残り一口といったところで、
【スキル:“捕食”の効果により経験値370獲得。次レベルまで残り経験値0】
【ヴィンデのレベルが上がった。各種ステータスがアップした。スキルポイントを手に入れた】
【ヴィンデのレベルは最大です。これ以上経験値を取得できません】
【ヴィンデは進化条件を満たしています】
来た……ついに来た。
【進化先を選択してください】
このパターンも、これで何度目だろうか?
最初はブラックリトルシャークにしか進化できず、選択もくそもないだろうと思ったけれどね。
それからはある程度進化先を選ばせてくれた……いや、ブラックタイガーとか入っていた時点で選ばせるつもりはなかったと思う。
でも、本当は海老ルートに入っていれば楽だったそうだが。
さて、今回はどんな進化が僕を待っているのかな?
……………………………………
・B.B.ドラゴン
ブラックベビードラゴンの略。
黒いドラゴンの子供。物凄い潜在能力を秘めている。
黒い鱗は希少な一品。
取得可能スキル:【黒衝撃】【黒い鱗】
……………………………………
……………………………………
・キッズドラゴン
ベビードラゴンが成長し、大人になる準備を始めた。
といってもまだまだ子供。甘えたい年頃。
しかしながらその力は侮ることはできない。
取得可能スキル:【竜の思念】【竜の牙】
……………………………………
なんと、ボケは一切なしの普通の内容だった。
……大きくなるか、黒くなるか、といったところか。でも、僕の鱗、すでに黒いんだけど。鱗の下は赤いから鱗だけが黒い状態だ。
でも、進化回数は同じだってゲノムは言ってたから、いつかは変異種の黒さではなく、種族としての黒さにならないといけないってことか。
まぁ、B.B.ドラゴン一択かな。
ノーチェと一緒に行動する以上、体が大きくなるのはデメリットになる。
もちろん、ノーチェを背に乗せて飛んであげたいという気持ちもあるが、恐らくキッズドラゴンに進化しても、普段はベビードラゴンに変身した状態で過ごすことになるだろう。
【ブラックベビードラゴンに進化します。よろしいですか?】
このメッセージを聞くのも久しぶりだ。もちろん、それでいい。
【選びなおすことはできません。本当によろしいですか?】
YESだ。
【ヴィンデはBBドラゴンに進化した。各種ステータスが変化しました】
【スキル:黒衝撃を取得した】
【スキル;黒い鱗を取得した】
【スキル:人化の術のレベルが2に上がった】
【スキル:竜の血のレベルが3に上がった】
【スキル:竜の魂のレベルが3に上がった】
【スキル:竜の爪を取得した】
【スキル:竜の鱗のレベルが3に上がった】
【スキル:竜の角のレベルが3に上がった】
【スキル:ミニドラゴンブレスのレベルが3に上がった】
【称号:剛腕を予約取得した】
【称号:鉄壁を予約取得した】
【称号:魔砲塔を予約取得した】
【称号:魔障壁を予約取得した】
【ベビードラゴンに変身可能です】
【スキル:変身のレベルが5に上がった】
思ったよりもスキルは増えなかったが、代わりに予約称号が増えた。韋駄天のように基礎ステータスが1000を超えたからだろう。
そして、僕は自分のステータスを見ることにした。
……………………………………
名前:ヴィンデ
種族:B.B.ドラゴン
レベル:1
HP 1136/1136(+922)
MP 1541/1541(+541)
状態:記憶喪失 命の燃焼(-914)
スキルポイント 4
攻撃 1280(+537)
防御 1263(+534)
速度 1579(+639)
魔力 1194(+534)
幸運 61(+10)
経験値補正+40%
スキル:【捕食:Lv7】【言語理解:Lv5】【叡智:Lv5】【ステータス把握:Lv4】【スキル鑑定:Lv7】【索敵:Lv4】【泡:Lv3】【献身:Lv3】【硬い鱗:Lv4】【鋭い歯:Lv5】
【肺呼吸:Lv5】【土魔法:Lv4】【鮫肌:Lv2】【HP自動回復:Lv4】【忠義:Lv2】【毒攻撃:Lv2】【回復魔法:Lv3】【マッピング:Lv3】【嗅覚強化:Lv3】【変身:Lv5】
【擬態:Lv2】【良眠:Lv3】【テイム:Lv3】【君主:Lv3】【称号鑑定:Lv7】【挟力UP:Lv1】【悪食:Lv2】【アイテムBOX:Lv5】【尻尾攻撃:Lv2】【MP自動回復:Lv4】
【水魔法:Lv3】【風魔法:Lv1】【火魔法:Lv1】【美味しそうな香り:Lv2】【火の息:Lv3】【麻痺攻撃:Lv3】【感覚強化:Lv1】【軟着陸:Lv5】 【暗闇攻撃:Lv2】【鑑定:Lv5】
【脱兎:Lv4】【スケープゴート:Lv3】【経験値貯金:Lv2】【毒針:Lv2】【舌攻撃:Lv1】【蜜採取:Lv1】【殻篭り:Lv1】【吸着:Lv1】【体当たり:Lv2】【孤独耐性:Lv1】
【称号変換:Lv2】【消化促進:Lv2】【沈黙攻撃:Lv1】【猛毒攻撃:Lv1】【酸攻撃:Lv1】【錬金術:Lv1】【魔導書記:Lv2】【記憶固定:Lv4】【罠作成:Lv1】【スキル変換:Lv2】
【消臭:Lv1】【火炎の息:Lv1】【猪突猛進:Lv8】【胃拡張:Lv2】【経験値贈与:Lv1】【竜の血:Lv3】【竜の魂:Lv3】【竜の鱗:Lv3】【竜の角:Lv3】【鋭い爪:Lv3】
【飛行補助:Lv2】【角攻撃:Lv2】【息を吸う:Lv2】【ミニドラゴンブレス:Lv3】【暗視:Lv3】【遠見:Lv2】【両替:Lv1】【貨幣貯金:Lv1】【買い物:Lv6】【強者の笑み:Lv1】
【魔商人探知:Lv10】【体力購入:Lv1】【魔力購入:Lv1】【状態購入:Lv1】【魂食い:Lv1】【腐竜の爪:Lv1】【腐竜の息:Lv1】【肉体再生:Lv2】【魔王の祝福:Lv1】【探知魔法:Lv1】
【運搬:Lv1】【斬耐性:Lv1】【殴耐性:Lv1】【突耐性:Lv1】【急浮上:Lv1】【急旋回:Lv1】【急降下:Lv1】【スモーク:Lv1】【寝る:Lv1】【命の燃焼:Lv10】
【水浄化:Lv5】【斧攻撃:Lv1】【早食い:Lv2】【強靭な体:Lv1】【手加減攻撃:Lv2】【ドラゴンブレス:Lv1】【ボディープレス:Lv1】【激励:Lv1】【人化の術:Lv2】【バランス強化:Lv1】
【窮鼠の力:Lv1】【料理:Lv1】【念話:Lv1】【生活魔法:Lv1】【光魔法:Lv1】【補助魔法:Lv1】【神託:Lv1】【警戒緩和:Lv3】【簡易武器装備:Lv1】【光属性付与:Lv1】
【幸運補正:Lv1】【加湿:Lv1】【認識阻害:Lv1】【糸吐き:Lv1】【黒衝撃:Lv1】【黒い鱗:Lv1】【竜の爪:Lv1】
称号:【転生者】【異世界魚】【記憶喪失】【捕食者】【蟹の天敵】【子持ち】【子沢山】【スキル収集家見習い】【魔術師】【出世魚】
【称号収集家見習い】【ハートブレイク】【ネームドモンスター】【毒持ち】【癒し手】【迷宮ウォーカー】【魔王を討伐せし者】【スキル収集家】【共生】【支配者】
【称号収集家】【貝の天敵】【レアアイテムイーター】【異世界有尾類】【レアモンスター】【スキルマニア】【小金持ち】【四大元素魔術師】【レアハンター】【怪人10面相】
【称号マニア】【木登り手習い】【暗闇持ち】【スキル辞書編纂者】【蜂の天敵】【蛙の天敵】【スキル編纂室長】【麻痺持ち】【沈黙持ち】【猛毒持ち】
【称号辞書編纂者】【蟻の天敵】【巣窟破壊】【蒼の守護者】【アルケミスト】【勉強家】【信者】【逃亡者】【大逃亡者】【罠師】
【称号辞書編纂室長】【成長期】【大物食い】【経験値積立人】【異世界竜】【竜族】【スキル大臣】【視力2.0】【金持ち】【ミリオネア】
【大金持ち】【キャッチ名人】【敗北者】【勝ち知らず】【勝利者】【負け知らず】【魔商人の上客】【命の売買】【魂喰らい】【カモ】
【称号大臣】【丈夫な体】【空の曲芸師】【スキル国王】【井戸掘り職人】【オークの天敵】【フードファイター】【無謀な挑戦者】【超進化】【巨大な体】
【進化キャンセラー】【百人隊長】【翼欠け】【燃えカス】【寸止めの達人】【飼い犬】【冒険者】【神の代弁者】【角欠け】【過回復】
【角無し】【バイリンガル】【魔物通訳士】【ゴブリンの天敵】【魔力ミニタンク】【ヴァンパイアハンター】【韋駄天】【ラッキーボーイ】【キノコの天敵】
【蜘蛛の天敵(予)】【称号王(予)】【スパイダーハンター(予)】【猫の天敵(予)】【剛腕(予)】【鉄壁(予)】【魔砲塔(予)】【魔障壁(予)】
……………………………………
思ったより酷いことになっていた。
HPなんて、命の燃焼で900以上減っているのにもう1000を超えている。
スキル変換によるステータス増加も含めて500以上増えてるとか。もうブラックバスだったころの苦労はなんなのか? といった感じだ。
そして、僕はステータスの後にそれを確認することにした。
……………………………………………………
人化の術:Lv2 レア度:★★★
レベルアップ条件:進化する。
効果説明:MPを消費して人になることができるスキル。消費MPはレベルによって異なり、レベル10で消費MPが無くなる。
LV2:MP8000消費、1.5秒につきMP1消費。
入手条件:不明
……………………………………………………
ぐっ、やはり人になるのはまだ先か。
進化来ました!
見た目の変化は一切ありません!
人化もまだまだ先です!
ヴィンデは進化をあと8回残している。




