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進化への決意

 夜の空を進む。認識阻害を使っているから見つかることはないとは思うけれどやっぱり不安になる。

 そして、僕はそのままフリーマーケットに行った。もう店は閉まっているようだが、フリーマーケット裏の窓から光が漏れていた。

 窓ガラスをノックする。

 すると、思ってもいないことが起きた。


「なんでこんなところにドラゴンがいるんだ? ヒック、飲み過ぎちまったかな?」


 酔っ払いに見つかった。窓ガラスを軽く叩いただけなのに。

 どうやら、認識阻害、軽く音を立てただけでも効果が切れてしまうようだ。そういえばノーチェに声をかけたときもすぐに認識阻害は解除されたし。


 幸い、酔っ払いは幻覚でも見ているのだろうと自己完結させて、千鳥足で歩き去った。

 そして、メイベルが窓を開けた。


「ヴィンデさん。ようこそ。アイテムの査定は終わっていますよ」

「ごめん、メイベルさん。こんな時間に。えっと、この杖のことで相談があるんだけど……中に入っていいかな?」


 メイベルに迎え入れられた僕は、杖の効果と、ノーチェの身に起きたことを話した。

 たぶん、MPがマイナスになったのは、杖が原因だと思う。

 今までは、単純に便利なアイテムと思って使っていたけれど、やはり常に使うものだとしっかりと調べないと。

 僕はアイテムバッグから杖を取り出した。


「それで、これ、たぶん貴重な杖なんだと思うけど、また前オーナーさんに調べてもらってもいいかな?」

「はい、きっと前オーナーも喜ぶと思います。あの方はこういう珍しいアイテムを見るのが大好きな方ですから」

「よかった。それと、この杖は、もしもノーチェが取りに来ても渡さないでほしいんだ」

「どうしてでしょうか?」

「この杖を使って蘇生リザレクションを使えばノーチェは倒れる。でも、もしも傷ついて倒れている人がいたら、ノーチェは自分の体よりもその人を助けてしまうと思うんだ。少なくとも、この杖の効果がわかるまではノーチェにこの杖を持たせられない。今回は僕がいたからすぐに治療できたけど、魔力枯渇の状態がずっと続けばどうなるかわからないから」

「そういうことでしたら、承りました」


 メイベルは杖を受け取って頷いた。

 そして、査定の話に入る。

 結果だけを言えば、金貨250枚と思ったより多くなった。

 どうしてかと尋ねたら、


「ヴィンデ様が持ってきた宝石類の中にポードレッタイトという名前の宝石がありまして、前オーナーが初めて見る宝石だから相場の倍で買うと金貨100枚を置いていきました」

「……前オーナーに足を向けて寝られないくらいお世話になっているな」

「前オーナーもそれは同じですよ。貴重なアイテムを見ることができてうれしいって仰っていましたから。お金にはあまり興味はない方なんで」

「そっか。うん、わかった。じゃあ、僕はノーチェが心配だから宿に帰るよ。夜遅くにごめんね」


 そう言って僕は窓から出て行った。


   ※※※


 翌朝。といっても昼の十一時くらいになってノーチェはようやく目を覚ました。


「そうですか……杖について調べるためにメイベルに預けたんですね」

「うん。これからも使うものだし、きっちりと効果は調べておかないと。それと、これ。僕からのプレゼント」


 昨日、ようやく完成した魔法書をノーチェに渡した。

 着火ファイヤの魔法書。

 これがあればノーチェは火魔法のスキルを取得できる。

 そして、土魔法を覚えれば四大元素魔術師の称号が手に入り、最大MPが10上がる。

 それと、ノーチェのステータスを見て気付いたのだが、ノーチェ、ちょっとおもしろい称号を手に入れていた。


【死神を退けし者】という称号と【即死耐性:Lv1】というスキルだ。

 おそらく、死神を退けし者は、蘇生リザレクションを使える者が手に入る称号なんだろう。

 そして、それに伴い得たらしいスキル、【即死耐性:Lv1】は、最大HPを越えるダメージの攻撃を受けた時、HPを1だけ残して生き延びることができるスキルなんだとか。ただし、一度スキルが発動すると24時間スキルは発動できないらしい。


「ありがとうございます……すみません、話を聞く限りだと、もしもヴィンデさんが蘇生《リザレクションを使えたら、魔力枯渇なんて起きなかったんでしょうね」

「それは気に病むことじゃないよ。じゃあ、今日は休んで、明日からもう一回迷宮に潜ろうか。僕はちょっとラビスシティーの外で魔物を狩ってくるね」

「え? 危ないんじゃないですか?」

「大丈夫大丈夫。認識阻害もあるし、ちょっとお腹が空いてね」

「あ、すみません。ヴィンデさんの食事、私に合わせて野菜ばかりでしたね」

「いいんだよ、野菜も嫌いじゃないから。でもちょっと消化吸収が早すぎるみたい、僕には。直ぐに戻るからね」

「晩御飯までには帰ってきてくださいね」


 ノーチェに見送られ、僕は大空へと羽ばたく。

 そして、ラビスシティーの壁を越えて森の中に降り立った。


 魔物の気配はまんべんなく広がっている。

 猶予は晩御飯まで。

 それまでに、僕は――進化をしてみせる!

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