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ノーチェの提案

【ブラウンマッシュ:HP7/7】

 久しぶりにHP1ケタの雑魚魔物だ。

 この後食べることも含めて僕は尻尾で振り払った。

 炎だと焦げてしまうからね。


【経験値1獲得、次レベルまで残り経験値8971】

【経験値1獲得、次レベルまで残り経験値8970】

【経験値1獲得、次レベルまで残り経験値8969】


 このショボさもいろいろと懐かしい。

 と思ったその時だった。

 倒したはずの魔物が、姿を消し、小さな紫色の石と茶色い小さなキノコを残した。

 キノコは鑑定したところマッシュルームらしい。ひとつ食べてみたが、経験値も得られないただのキノコだ。

 そして、紫色の石を鑑定してみる。


「……これが魔石なのか」

「様々な魔道具の燃料として使われるそうです。これ一個でも町の外で買えば銅貨3枚はするはずですよ」

「銅貨3枚? こんな小さな石なのに」


 それは驚きだ。


「この町で売れば1/10の値段にしかならないそうですけどね」

「それも驚きだ。ボッタクリだな」

「そのため、密輸が後を絶たないそうです。最近は魔石チェッカーという魔道具が開発されて密輸も困難になったそうですが」

「そっか……」


 アイテムBOXに入れて逃亡すれば大儲けできるんじゃないかな?

 そういえば、湖から鮫になって脱出したとき通った水路は見張りもいなかった。呼吸を止めて30分くらい泳がないといけない水路なので人間なら使えないが、僕ならいけるんじゃないかな?

 そう思ったが――先ほどのギルド受付嬢の『あまり妙なことをしないでくださいね』という言葉が脳裏をよぎる。


 密輸ダメ、ゼッタイ。


 とりあえず、魔石はノーチェのポーチに入れてもらうことにした。

「そういえば、マッシュルームの採取依頼もありましたよ。3個で銅貨1枚です」

「そっか。じゃあできるだけ集めよう。称号も欲しいし。あと、地図も完成させたい」


 マッピングスキルにより、地図を作ることにした。

 これにより、隠し部屋等の存在もわかるはずだ。


 ちなみに、迷宮の中は上り階段、下り階段までの道案内があちこちにあり、迷いそうない親切設計になっている。

 そのためか、階段と階段とを結ぶ最短距離では魔物は少なく、道を逸れると魔物が多くなる傾向にあるようだ。


 だから、僕たちはわざと道を外れ、索敵スキルを使って魔物を探し当てることにした。

 それにしても、さすがは迷宮。魔物が出てくる出てくる。

 ただし、ほとんどは雑魚の魔物ばかりだ。


 ノーチェの光の矢が二足歩行の犬の魔物コボルトを貫いた。コボルトは光の粒子となって消えていき、コボルトの毛皮と魔石を落とす。


「魔石もだいぶ溜まってきましたね」

「そうだね。それにノーチェの弓の技術も向上していると思う。スキルとしてではなく経験として。動きがスムーズになっているよ」

「……それにしてもコボルトか」


 僕はそう呟いて思い出す。

 この世界に来た日、僕が見つけた魔物。それが今のような二足歩行の犬の姿をした魔物――コボルトだった。

 もしかしたら、僕が目覚めたのもこのあたりなのかもしれない。そして、そこに行けば、神がいうところの僕が堕ちた理由が見つかるかもしれないと思った。


 もちろん、僕がこの世界にいることには何の不満もない。僕がここにいなければノーチェと出会うことができなかったのだから。


 それでも、好奇心として知っておきたいと思った。


「それより、今はキノコ退治だ。もうすぐだと思うんだけどな」

 魔物の種類によっては天敵称号が手に入るまでの数は異なるが、もう70匹くらいブラウンマッシュを倒している。

 そろそろ天敵称号が手に入るのでは?

 と思った時、僕はそれを見つけた。


 ブラウンマッシュの群生地帯だ。

 地面ぎっしりにブラウンマッシュが生えていた。その数、およそ100。


「ノーチェ、ここで待ってて!」


 僕はそう言うと、大きく息を吸い込み、そして吐き出した。

 結果、キノコが炎に包まれ


【経験値1獲得、次レベルまで残り経験値8811】

【経験値1獲得、次レベルまで残り経験値8810】

【経験値1獲得、次レベルまで残り経験値8809】

【経験値1獲得、次レベルまで残り経験値8808】

【経験値1獲得、次レベルまで残り経験値8807】

  ・

  ・

  ・

【経験値1獲得、次レベルまで残り経験値8752】

【称号“キノコの天敵”を取得した】

【ホワイトマッシュに変身可能です】

【スキル“加湿”を取得した】

【経験値1獲得、次レベルまで残り経験値8751】

【経験値1獲得、次レベルまで残り経験値8750】

  ・

  ・

  ・

【経験値1獲得、次レベルまで残り経験値8703】


 ふぅ、撃破完了。

 そして、99個目の称号を取得、さらに加湿という、部屋の湿度を高めるだけのスキルも入手。うん、冬にノーチェが風邪をひかないように湿度を高めるのに使えそうなスキルだ。

 あと称号を1つ入手すれば、おそらく“称号国王”という称号が手に入り、“スキル変換”のレベルが2に上がる。

 そうしたら、一気にステータスが大幅に上昇すること間違いない。何しろ僕は122個のスキルを持っているんだからね。


「ヴィンデさん、どうしたんですか?」


 僕が黙っていたのでノーチェが心配そうに尋ねた。


「あ、うん、99個目の称号を手に入れたからね。あと1個称号を手に入れたら僕が大幅に強くなれるんだけど、どうせなら100個目は何か記念になるような称号がいいなって思って」

「記念になるような称号ですか……」

「うん、称号。いろんなことをしたらもらえるんだよ。例えば、ノーチェに告白して振られた時はハートブレイクって称号も貰ったし」

「あ……そう言えばありましたね。でもあれは振ったわけではなくてですね」

「うんわかってる。ノーチェはいろいろと考えてくれていたんだし、結果的に僕も称号をもらえたわけだし」


 あの時は本当にどん底を味わった気分だったけどね。

 でも称号100個目か。

 思えばいろいろな称号を手に入れた。でも、意図せずに手に入れた称号がほとんどだから、狙って記念になる称号を手に入れるのは難しいかもしれない。

 それこそ、ノーチェと結婚して、“妻帯者”とか“旦那”とか“リア充”とかそういう称号を100個目にするのは悪くないけれど。

 そうが、いっそのこと“ノーチェ命”とタトゥーを彫って、入れ墨持ちみたいな称号はどうだろう? あ、でも僕の場合腕とか細かい鱗で覆われているからタトゥーは無理かもしれない。


「あの、称号が貰えるかどうかはわかりませんけど、試してみたいことがあるんです」

「試してみたいこと?」


 ノーチェからそんな提案があるのは珍しい。何かを試して失敗するのはいつも僕の役目だったのに。

 勿論、ノーチェの提案を断るわけがない。


「婚約式をしませんか?」

 

 ……勿論、ノーチェの提案を僕が断るわけがなかった!

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