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バイモンとの戦い

『目くらましのつもりですか? 影が丸見えですよ』


 僕のスモークレベルは1。煙といっても濃い霧くらいなものだ。たしかに影は丸見えだろうな。


『ドラゴンの血、どんな味がするか楽しみだ』


 そう言ったバイモンが何をしたのかは僕にはわからない。が、その後穴の中まで響いてきた爆音から想像はつく。

 ――僕のスケープゴートに噛みついたのだろう。そして爆発した。


 煙を出すと同時に落穴ピットで穴を掘り、土壁ストーンウォールで穴を塞ぎ、その壁の上にスケープゴートを置いた。マトモに見たらただのぬいぐるみで騙すことなんてできないが、煙の中だとどうやらひっかかったようだ。

 吸血鬼だから僕に噛みつきに来ると思ったが、本当に来たよ。


落穴ピット落穴ピット!」


 横穴、縦穴を掘り脱出!

 もくもくと上がる煙――そして、その中からバイモンは現れた。

 口の横に血を流し、口周りは火傷でただれている。


【バイモン:HP1051/1240】


 思ったより減っていない。スケープゴートのレベルが低いからか。


『……なかなか面白いことをしてくれますね』

『こっちは面白くないよ……僕を逃がすつもりはないってことでいいんだね。さっきの攻撃も僕に対して攻撃してこなかったら不発に終わる物だったんだし』

『当然。あなたのようなレアな魔物の血、飲まずにいられますか』

『バイモン侯爵が望むなら、注射器で吸いとった血を渡すことも可能だけど』

『それも魅力的な提案ですが、あなたには私の大事な手駒を殺されてしまいましたからね。あなたには彼らの代わりをするために、眷属になってもらわないといけません』

『僕の血を吸って、僕を吸血鬼にするっていうのか?』


 そして、こいつの言葉を聞く限り、僕が吸血鬼になった場合、こいつの言いなりになってしまうのだろう。

 そんなこと許せるわけない。


 考えろ、僕。

 相手は吸血鬼。苦手な物は何だ?

 にんにく、十字架、光、銀の弾丸――そうか、銀の弾丸か。


「アイテムBOX! くらえ! 銀の弾丸!」


 僕はアイテムBOXからそれを取り出して放り投げた。


『銀貨ですか、ありがとうございます』


 僕が放り投げた銀貨をバイモンは受け取る。

 あぁ、やっぱり効かないっ! そうだ、光魔法なら!


「光魔法、明かり(ライト)!」


 部屋の中に光の球が浮かび上がった。


「明るいですね。これで戦いやすくなります」


 光魔法レベルが低すぎる!


『ならば、正攻法で攻めるっ!』


 僕は吸血鬼の言葉でそう言うと、空を飛んで突撃――するふりして、


「とみせかけてスモーク!」


 僕は口から煙を噴き出して後ろにとんだ。


『また目眩ましですか! こんなもの風の魔法で――ぐっ』


 煙の中でバイモンがうめき声をもらした。


風障壁(ウィンドバリア)


 風が僕の吐き出した煙を吹き払う。


『貴様、一体何をした!』

「別に。ただスモークと嘘をついて腐竜の息を吐き出しただけだよ。それなりの効果はあったみたいだね」


 僕は別に魔法以外でスキルを使う時、スキルの名前を言う必要はない。だが、スケープゴートを使う時以外は全てスキル名を使っていた。

 全てはこの時の嘘のため。


 だが――


【バイモン:HP998/1240】


 やっぱり致命打には程遠い。

 腐竜の息はせいぜい猛毒や麻痺毒といった複数の毒状態にさせるだけの攻撃。

 相手の動きを封じることはできるだけ。


「……私を怒らせましたね……あなたはいい眷属になれると思ったのに残念です」


 そう言うと、バイモンは杖を取り出した。

 青い宝石のはまった杖だ。


闇王玉ダークマスターボール


 杖の先から現れたのは、巨大な闇の球だった。

 その迫力に僕は気圧された。

 これを喰らったらヤバイ。そう思った。

 その時だった。


 二本の光る矢が飛んできて、一本は闇の球に、一本はバイモンの手の甲に刺さる。

 闇の球は一瞬で霧散し、バイモンの手は青い炎に包まれた。

 なんて威力だ。


「ヴィンデさん! 大丈夫ですか!?」


 そう言ったのは、ノーチェだった。手には光の弓を持っていた。


「ノーチェ! どうしてここに!?」

「村の人がヴィンデさんがここに入っていくのを見たそうなんです! 急いで追いかけてきて」


 くそっ、なんで――いや、助かった。

 光属性の武器はここでは役立つ。


「私の闇王玉ダークマスターボールを破壊するとは――その弓の力ですか――」

「ノーチェ、気をつけろ! こいつは吸血鬼だ」

「吸血鬼ですか!? わ、わかりました! 動かないでください、動けば射ます!」


 杖を取ろうとするバイモンにノーチェが警告した。

 するとバイモンは観念したようで、


「なるほど、これは分が悪い――とでも言うと思ったか!」


 バイモンはそう言うと、ノーチェに対して襲い掛かった。

 ノーチェが矢を射た。光の矢がバイモンに突き刺さり、青い炎に包まれる。

 だが、バイモンは止まらない。そのままノーチェを襲い掛かろうとしたが――


「ノーチェに手を出すな!」


 ――ヴィンデジェットエンジン!

 口からドラゴンブレスを噴き出し、その反動で体当たり。

 しかも、今の僕は早足ファーストのおかげでその速度は上がっている。


 角が完全に生えきっていないので攻撃力が落ちている分をこれでフォローする。


 僕の渾身の体当たりが、バイモンを吹き飛ばした。

 壁に叩きつけられるバイモン。

 さらに、その体にノーチェの矢がさらに三本突き刺さる。


「……まさか、そんな隠しワザがあったとは……子供のドラゴンだと思って……」

「いいからお前は倒れろ! ドラゴンブレス!」


 僕の放ったドラゴンブレスを浴びたバイモンのHPが0になる。


「……ダークマスター様……お許しを……」


 その言葉を最期に、バイモンの体が灰へと変わり、そのまま崩れた。

 炎で灰になったのではなく、死ねば灰になるのだろう。

 あれはもう食べられそうにない。 


【経験値14000獲得、次レベルまで残り経験値0】

【ヴィンデのレベルが上がった。各種ステータスがアップした。スキルポイントを手に入れた】

【ヴィンデのレベルが上がった。各種ステータスがアップした。スキルポイントを手に入れた】


 レベルが15まで上がった。

 さらに、


【称号“ヴァンパイアハンター”を取得した】

【スキル“光属性付与”を取得した】

【称号“韋駄天”を取得した】


 称号、スキルもGET。 

 韋駄天は速度1000オーバー記念か。

 称号の効果でさらに速度が10も上がるらしい。


 さらに嬉しいことに、ノーチェもヴァンパイアハンターの称号と、光属性付与のスキルを手に入れていた。


「ノーチェ、ありがとう。助かったよ」

「ヴィンデさんのお役に立ててよかったです。でも、今度からは私に黙っていなくならないでくださいね」


 そう言ってノーチェは僕を抱きしめた。僕の事を心配してくれていたらしい。


「ありがとう、ノーチェ。うん、今度からはちゃんと話してから行くよ」


 僕はノーチェの胸の中で言うのだった。

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