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神からの干渉

 次の日、目を覚ましたらノーチェがいなかった。

 急いでノーチェの居場所を探したところ、やはり病棟にいた。

「――リヒール」

 ノーチェが額に汗を浮かべながら、患者に魔法をかけていた。

 病人は常に体力が減り続けている。そのため、常に回復し続けるリヒールは、ヒールをかけてもらったりポーションを飲むよりは効果的だと思ったのだろう。実際、リヒールをかけてもらった人の表情が僅かに和らいでいた。が――

「ノーチェっ!」

 僕はふらつき倒れそうになるノーチェの背後にまわり、そっと背中で支えた。

 そして、献身を使い、ノーチェの枯渇しつつあるMPを回復させてあげた。

「……すみません、ヴィンデさん。ありがとうございます」

『無理をするな』

 僕が喋れることは一部の人しか知らないため、念話でノーチェに言った。そして、

「もう少しですから」

 というと、他の患者にリヒールをかけ続けたのだった。

 ノーチェが回復魔法をかけ終えた後、僕は献身をさらに使い、彼女のMPを完全回復させ、ベッドで休ませた。

「ドラゴン様、少しよろしいでしょうか?」

 そう言って来たのは、僕たちを誘拐してきた男だった。

 扉は開いたままだったので、ノックをせずにこちらを見ている。

「……あぁ」

 僕は眠るノーチェを一瞥し、男についていった。


   ※※※


 部屋を出て、家の外に出た僕に、男はとんでもないことを言った。

「ドラゴン様とノーチェ様をラビススティーにご案内いたします」

「……理由は?」

「ドラゴン様からは角をいただきました。ノーチェ様の献身的な看護で里の者たちは大分救われました。自分たちで攫っておいてなんですが、もうこれで十分でございます」

 その男は朗らかに笑った。

 彼の奥さんがまだ病に伏せているというのに、どうしてそんな笑顔ができるんだというくらいの笑顔だった。

「ドラゴン様とノーチェ様が回復魔法の訓練をしているのは存じています。が、それならこの里でなくても可能でしょう。今まで通り旅を続けられ、もしも我々を治療できる回復魔法を手に入れられたならば、その時にこの里を訪れてくださったら……と思います」

「……そうか」

 結果的に、ノーチェの献身的なその姿勢はこの人たちを動かしたということか。

 ならば、それに逆らう理由はない。

 彼の言う通り、回復魔法のレベル上げなら旅をしながらでもできるんだし、そもそも僕たちは攫われてここに来たんだ。彼らに対し仇はあっても恩はない。


 ……なんて言えるわけないだろ。

 そんなことで「はい、そうですか。それではさようなら」なんてノーチェが言えるわけがない。もしかしたら僕に気を使って里を去る決意をするかもしれないが、陰で悲しむに決まっている。

 この里を出るとすれば、全てが解決して、ノーチェの笑顔が戻った時だ。

 僕は男にそう伝え、ありがたい言葉を辞退したのだった。


   ※※※


 命の燃焼によりほぼ1000のHPが減っていた僕だが、現在は少し回復し、970減っている状態だ。

 しかし、この状態で変身をした場合、最大HPが970を下回っていたら、もしかしたら即死するかもしれない。それを回避するには、命の燃焼の回復を待つか、称号とスキルを集めて変身後の最大HPの確保が必要となる。

 現在、スキル変換スキル、称号変換スキルのおかげで、スキルは118個、称号は91個であり、スキル1つにつきHPが1ポイント、称号1つにつきHPが2ポイント上がる状態だ。

 そのため、HPはふたつのスキルを含め300嵩上げされている。ここでもし、称号が残り9個増えたら、いっきにHPは136増える。

 それでもようやく目標の半分。他にも子沢山やネームドモンスター、癒し手なんかの称号でHPは上がっているため、変身してもこれらは有効だが、それも誤差の範囲内だ。

 果たして、僕は称号とスキルを上げてHPを嵩上げする方法を諦めた。

『なら、HPを上げるスキルを覚えたらいいんじゃない?』

 そんな都合のいいスキルがあれば苦労しないよ。称号ならHPが上がるものもあるけど、あれだって最大でも10とかだし、称号の入手法なんてわからないし。

『でも、硬い鱗なら防御力アップとかあったんだし、HPが上がるスキルもあるんじゃないのかな?』

 そう言われてみればそうだな。

 でもHPを上げるスキルを取るって言っても、スキルポイントはあまり使いたくないんだよな。

 そもそも、変身したい理由は、変身してスキルポイントを荒稼ぎして、それを元に、ノーチェを成長させるスキルを入手することなんだよ。

【家庭教師を取得するにはスキルポイントが足りません】

 何ポイント必要かわからないけど、叡智さんによると、これがあればノーチェのスキル成長能力が上がるらしいんだよ。

 ――って、何急に話しかけて来てるんだよ! ゲノム!

 本当に神出鬼没だな。

『神様だからね。それに、最近出番が少なかったから』

 お前、買い物スキルを使っても出てこなかったくせに何偉そうなこと言ってるんだよ! 出て来たいのなら、病人を救う薬を出してくれよ。

『それはできないよ。さすがに全員分の薬なんて私は持っていないし、この世界の人間を助けることもできない。神の他の世界への過干渉はあまりよくないんだよ』

 僕には干渉しまくってるくせに。

『それは君が僕の世界の住人だからだね。だから君になら干渉できる。いいことを教えるよ。君のいる山の中腹に、昔このあたりいた部族が、祭壇として使っていた大きな洞窟があるんだよ。そこにゴブリンが100匹は集まっている』

 ゴブリン?

『もうすぐゴブリン王が生まれるらしくてね。そのために部隊を編成しているらしいんだけど、君、そこに行ってゴブリンを倒して来たら? ゴブリンを30匹くらい倒したらゴブリンの天敵の称号が手に入るよ』

 いや、いらないって、そんな称号。ゴブリンに変身しても気持ち悪いだけだし、そもそも変身できないし。

『まぁ、そうなんだけどさ。でも倒しに行ったら? もしもゴブリンに里が襲われたら大変なことになるよね? 病人だらけのこの里が』

 ……ぐっ、そう言われてみればそうだな。

 山の中腹の洞窟ってどこだ?

『うん、案内するよ』

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