病気を治すために
~前回までのあらすじ~
ノーチェとともに誘拐された僕達。どうも盗賊の狙いは僕の角で薬を作り、村人の病気を治すことのようだ。
竜の角の先を切り取られたせいで、攻撃が少し下がった。
状態も、角欠損状態になっている。
肉体再生のスキルがあるから、いつかは角も再生されるだろう。それに、悪いことだけではなかった。
【称号:“角欠け”を取得した】
【スキル:“警戒緩和”を取得した】
翼欠けの称号があるからもしかしたらと思っていたが、やっぱりあったか。角欠け。
称号変換、スキル変換のおかげでステータスの各値も3増えた。
それと、警戒緩和のスキルは、使用すると、MPを常時消費するが、相手から警戒されにくくなるスキルである。僕はさっそくそのスキルを利用することにした。
「なぁ、おっちゃん、ちょっと頼みがあるんだが、いいか?」
僕達を誘拐してきた――僕のことをドラゴン様と呼ぶ男に提案をすることにした。
「なんだ?」
「さっきの皆の竜毒は、回復魔法のレベルを上げれば治せるそうなんだ。そのレベルを上げるために、できる限りノーチェと一緒にいたい。見張りがいてもかまわないから手配してくれるか?」
「わかった。ドラゴン様には既に角を提供していただいている。出来る限りのことはさせてもらおう。ただし、俺が見張らせてもらう」
「あの……それと、もう一つ。私の友達がラビスシティーでお店をしているのですが、最近、解毒ポーションという商品を扱っているそうなので、それを取り寄せてもらえないでしょうか? 手紙を書きますから、きっと数を揃えてくれると思います」
そういえば、ラビスシティーにエルフの友達がいるって言ってたな。
そちらの手段も検討してもらおう。
「……そうしたいのはやまやまだが、薬を買うお金がすでに尽きかけている。病気にかかったものは日に日に体力が減少していくから、体力を回復させるポーションを買うだけで手いっぱいなのだ」
「大丈夫……だと思います。メイ――彼女には必ず私がお金を返すからと書いておきますから」
ここが盗賊のアジトじゃなかったら、僕がお金を出して解決という手段もとれるんだが、お金に関してはここはノーチェに任せておこう。
最後に、僕は気になったことを男に尋ねた。
「なぁ、おっちゃん、あのレイヤって女性、もしかしておっちゃんの奥さんか?」
「……そうだ。長年アタックし続けて去年結婚したばかりだ」
「そうか……助けてあげないとな」
妻を失う苦しみは俺は知らないし、知りたくもない。
だが、妻を失いたくないという思いは、ノーチェという最愛の人がいる僕には痛いほどわかる。
それだけでも、僕が本気を出すには十分すぎる理由となる。
「それと、おっちゃん、もう一つ。これも重要なことなんだけど、お願いできるかな?」
「村と妻を救うためなら、何でも言ってくれ」
頼もしいな。
僕の頼みをおっちゃんは理由も聞かずに受け入れてくれて、すぐに部下らしき男に指示を出す。
おっちゃんがこれほど優しくしてくれるのは、警戒緩和のスキルのおかげか、それとももともとの性格かはわからない。
そして、僕達は空き家に案内された。
「ノーチェ、僕達がすることはわかるな?」
「はい。私の回復魔法のレベルを上げるんですね」
そうだ。ノーチェの回復魔法のレベルは3。
ヒール、ヒールフォルテ、キュアが使える。
それは僕と変わらない。
そして、回復魔法のスキルは使えば使うほどレベルが上がる。
だから、ノーチェにはこれからヒールを使い続けてもらう。
僕の献身とノーチェの回復魔法のコンボで。
「行くぞ、ノーチェ!」
「はい、ヴィンデさん!」
そして、僕とノーチェは献身、回復魔法のコンボを夜中まで続けた。
だが、ノーチェの回復魔法のレベルは結局3のまま上がることはなかった。
MPが完全に回復しているとはいえ、ノーチェに疲労の色が見えてきたのであと一回でやめることにした。
そして、最後の一回を使ったその時だった。
ノーチェではなく、僕に変化があった。
【称号:“過回復”を取得した】
90個目の称号来た。
HPがあまり減っていないのに回復魔法をかけ続けられたためだろう。
そして――
【肉体再生のレベルが2に上がった】
おぉ、肉体再生のレベルが上がった。これで角が再生される速度があがるかもしれないな。
素直にそう喜んだ。
だが、幸運はさらに続く。
その日の夜、ノーチェと僕は別の部屋で寝た。
ノーチェに男性を近づけさせないという条件で。
翌朝、目を覚ましたとき、僕のステータスに小さな変化があったのだ。
昨日、寝る前に確認した僕のHPは62だった。それは間違いない。
なのに、朝起きたとき、僕のHPが64まで上がっていた。
何か称号が増えたのかと思ったが、そうではない。
命の燃焼で減ったはずのHPが回復してきているのだと、僕は悟った。
そして、昨日の男が僕を迎えに来た時、男は言った。
「頼まれていたものを用意しています」
「本当か?」
僕は言われて、外に出た。
そして、僕は村の広場でそれらを見た。
村の中央に、瀕死の魔物が大量に並べられていた。
よし、これだけの魔物がいれば、経験値が大量に入るのは間違いないな。
更新おそくなってすみません。
最後まで頑張ります。




