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走竜賊の村

 村の中心には松明が灯されており、狭い広場をうっすらと照らす。

 井戸が中心になっているらしい。


 周囲には折りたためるような簡易の家があるが、中からは気配をほとんど感じない。

 何人かはいるみたいだが、恐らく、これら家の住人であろう人々の多くは、奥の大きな建物の中にいるようだ。


 夜も遅いのに、何か仕事でもしているのだろうか?


 走竜賊って、盗賊みたいな仕事だよな?

 一体、何をしているのか。


「……降りるぞ」


 簀巻きにされた僕は、男にそう言われて、抱きかかえられた。

 今、炎を吐き出せば、村を大火事にできる――僕は炎の耐性は高いから、炎の中で縄を焼き切って――そのためにはノーチェの身の安全が先決か。


 僕が妙なことをしないか警戒しているのだろう。

 ノーチェも一緒についてきている。

 ただし、彼女の口には猿ぐつわが噛まされている。


「……僕に一体何をさせるつもりだ?」

「お前はただじっとしていればいい。そうすれば彼女は解放する」

「……いい加減に話せ。何が目的なんだよ」


 僕が男に訊ねたが、「全てを見せてから話そう」と言って聞かなかった。

 全てってなんだ?

 盗賊稼業の家計簿でも見せてくれるのか?

 全然興味がないんだけど。


 僕達が向かったのは、一番多くの人がいると思われる大きな家だった。

 全てを見せるってのは、走竜賊の全員を紹介するってことだったのか?


 それも興味ない。

 そう思った。


 だが、そうも言っていたれないことになった。


「……凄い匂いがするんだが」


 嗅覚強化を持つため匂いには敏感な僕にとって、この臭いは劇薬にも等しい。

 嘔吐しそうになるのをこらえる。

 見たくないものは目を閉じれば耐えられるが嗅ぎたくなくても一人で鼻を閉じることはできないのがつらい。

 鼻栓でもあればいいのに。


 という愚痴が、その臭いの元となるものがあるであろう扉が開いたとき、決して言えなくなった。


 そこは、病床だった。

 老若男女問わず多くの者が横になっている。


 それだけではない、皮膚の一部が紫色に変色している。

 ……まるで……湖で見たブルードラゴンみたいだ。


「原因はわからないが、空を巨大な竜が通り過ぎたのを子供が見たらしい。その日から、仲間が倒れ始めた。今では、その時に村を出ていた俺達を含め数えるほどしか動けない状態だ」

「連れてくる相手を間違えたんじゃないか? 僕達は医者じゃないぞ?」

「あぁ、医者には見せた。治療法がまるでわからないそうだ。だが、竜の毒には、竜の角が効くという伝承があるとだけ教えてもらった」

「まさか、それで僕を誘拐したのか? 竜の角なら、お前たちの走竜ステップドラゴンがいるじゃないか。まさか家族だから角を使えな……ってあれ?」


 そういえば、走竜ステップドラゴンって……


「あぁ、走竜ステップドラゴンには角はない」

「なんていう盲点……てか、本当に僕の角で治るのか?」

「やってみないとわからない……頼む、力を貸してほしい」

「頼むって、無理やり誘拐しておいてそれはないだろ」

「時間がなかったのだ」


 ……はぁ。

 とりあえず、警戒は続けるが、今すぐ僕達をどうかするつもりはないようだ。


「病気になってる人の中で、まだ意識がはっきりとしている人っているか?」

「どうしてだ?」

「僕には相手の症状を見る力がある。まずは病気の症状を見て、そこから治療法を考えたい。角は最後の手段だ」


 肉体再生があるとはいえ、角を削られると完全に再生するまで、攻撃力が大きく下がりそうだ。

 ヴィンデバリスタも使えなくなる。


「わかった、案内しよう」

「その前に、ノーチェの猿ぐつわを解け。最高級のもてなしを頼むぞ」

「言われた通りにしろ」


 男が言うと、ノーチェの猿ぐつわが外された。


「ヴィンデさん」

「ノーチェ、大丈夫だ。ぱぱっと治療法を確認してまた旅を続けよう」


 僕はノーチェにそう言うと、ノーチェは「はい、ヴィンデさん以外の人と一緒に旅なんてできませんから、絶対に帰ってきてくださいね」と言ってくれた。ありがたい話だ。


「てか、この病気、感染はしないよな?」

「その心配はないだろう。感染するようなら、俺達も罹患している」

「それもそうか……」


 案内されたのは、一人の30歳くらいの女性が眠る寝室だった。頬のところに紫色の斑点のようなものがある。


「レイ、今帰った。ドラゴン様を連れてきた」

「……あなた、お帰りなさい」


 男が話しかけると女性は笑顔で言った。

 無理をしているのはわかる。HPも大きく減っているからな、いつ意識を失ってもおかしくないと思う。


「早速いいか?」


 僕が喋ったことで、レイと呼ばれた彼女が驚愕した。


「……!?」

「レイ、驚くのはわかるが、今はこのドラゴン様の話を聞いてくれ」

「あなたの症状を見たい。状態だけでもいいから、僕にステータス閲覧許可を出す、そう念じてくれ」

「わ、わかりました」


【レイヤのステータス閲覧許可が一部出ました】


……………………………………

名前:レイヤ

種族:ヒューム

レベル:13


HP 12/31

MP 19/19

状態:竜毒

スキルポイント24

……………………………………


 本当に一部しか出ていないが、これでわかった。

 竜毒――これが彼女の症状だ。


 次に叡智さんの出番だ。

 竜毒を治したい、そのためのスキルを用意してくれ!


 そう願ったら、


【回復魔法は既に取得済みです】


 と出た。回復魔法で治せるのか。

 よし、これならいけるか。


「解毒魔法を使ってみるぞ? キュア!」


 そう唱えた。淡い光がレイヤを包み込む。

 だが――


……………………………………

名前:レイヤ

種族:ヒューム

レベル:13


HP 12/31

MP 19/19

状態:竜毒

スキルポイント24

……………………………………


 ……治っていない。

 キュアでは無理なのか。


 でも、回復魔法で治療できることは間違いない。

 レベルが足りないのだ。


 他に竜毒を治す方法はないか?


「なぁ、最初は、僕の角を使うのは少しだけ――本当に症状が重い人に使ってくれ。効果があるかどうかわからないのに、角全部持っていかれたら困る」

「……了解した。ただし、効果があるとわかったら全ての角を削り取らせてもらう。安心しろ、竜の角には神経はない、切っても痛くはない」

「わかったよ」


 最初に角の欠片を削り取られた。

 でも、正直、僕の角がここまで効果が出るか保証はないし、これだけの人数の薬を用意できるとも思えない。

 なら、他の治療法を探らないといけない。


 そして、それは結果的にノーチェの身の安全につながるからな。

更新遅くなってすみません。

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