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貝にはなりたくない

 砂の中は意外と居心地がよかったけれど、一晩経っても僕の毒状態は回復しない。

 自然回復しないのは、ここまできたら認めるしかないだろう。


 むしろ、状態異常が毒でよかったというべきか。

 これが、石化や麻痺なら一大事だ。

 ここで正しい対処法を知ることで、今後正しい対策ができるようになる。


 なんて思ってみるけど、一晩、砂の中で怯えながら考えても何も思い浮かばなかった。

 そもそも、スキル鑑定が1ポイントなのに、なんで鑑定が5ポイントなのか、と文句を言いたいよ。

 他に1ポイントでもらえるスキルって何があるんだろ?


【スキルポイントを1支払い、耐寒を取得しますか?】

【スキルポイントを1支払い、暗算力を取得しますか?】

【スキルポイントを1支払い、記憶力を取得しますか?】

【スキルポイントを1支払い、体当たりを取得しますか?】

【スキルポイントを1支払い、眠るを取得しますか?】

【スキルポイントを1支払い、称号鑑定を取得しますか?】

【スキルポイントを1支払い、マッピングを取得しますか?】

【スキルポイントを1支払い、良眠を取得しますか?】

    ・

    ・

    ・


 ストップストップ!

 一気に情報が溢れてきた。

 50個はあったな。

 でも、戦闘力が上がりそうなのは「体当たり」くらいだった。

 コイキ○グでも使える技だからなぁ。

 次に、スキルポイント2を見る。こっちも攻撃系は少ない。

 3ポイントになったら、そこそこいいものが出てきた。

 情報が頭の中に溢れて、正直辛い。

 で、4ポイント、5ポイントと見ていく。

 7ポイントになれば、


【麻痺攻撃を取得するにはスキルポイントが足りません】

【命の燃焼を取得するにはスキルポイントが足りません】

【氷の息を取得するにはスキルポイントが足りません】

【美味しそうな香りを取得するにはスキルポイントが足りません】

【殿を取得するにはスキルポイントが足りません】


 と出た。殿?


 でも、これで、全てのスキルポイントでもらえるスキルを見ることができる。

 現実的に考えて、10ポイントまで見てみたい。


 そして、10ポイントで回復魔法が覚えられることがわかった。

 ううん、でも、神様も言ってたよな。どんな進化をしても、最終的にはブラックドラゴンになれるって。

 ならば、まずは10ポイントの回復魔法だな。


 ちなみに、神の言うことを疑うわけではないが、例のことも調べてみた。


【天変地異を取得するにはスキルポイントが足りません】

【人化の術を取得するにはスキルポイントが足りません】


 50万ポイントで覚えられるスキル……と思ってみた。

 天変地異と人化の術が同じっておかしいだろ!


 絶対に神の陰謀だ。チクショウ。

 この調子だと、不死とか手に入れるのにどれだけポイントが必要なのか。

 まぁ、夢は見ないでおこう。


 現在、レベルが1上がれば、スキルポイントが2上がる。

 ならば、レベルが2上がれば、回復魔法を覚えるスキルが溜まる計算だ。


 とりあえず、昨日と一緒で、エイを優先的に、獲物を食べながら経験値を貯めよう。

 漠然と強くなるんじゃなくて、目標を持ってレベル上げをするのはいいよな。


 暫く海の中を漂い、ウニのような獲物を見つけた。

 今更だけど、ウニって偉いよな。人間だったらトングで捕まえて、割って食べるけど、鮫の僕からしたら食べたくないもん。

 だからウニは無視。

 お、砂の中にいた。


【ギフトエイ HP:13/13】


 昨日のエイより少しHPが高い。あと、今思い出したんだけど、ギフトって、フランスかドイツかの言葉で、毒って意味だった。

 毒を贈られたってわけだ。全く、エイは日本語なのに、ギフトが外国の言葉ってどうなのよ。どうなってるんだよ、この世界の言葉は。

 いや、悪いのは言語理解のほうかもしれないけど。

 毒エイか。そのまんまじゃないか。

 さて、ここで心配が一つある。


 アカエイに2回刺されると、アナフィラキシーショックで死ぬ、と聞いたことがある。

 体内の免疫が過剰反応して最悪死に至る、というやつだ。

 ギフトエイに2回刺されても、同じことが起こるんじゃないのか?


 そう思ったけど、その心配はないか。

 自然回復しない毒なんだから、免疫ができていないんだろう。おなかすいたなぁ。

 でも、100%ではないしなぁ。やっぱり安全に回復魔法を覚えるか、エイを食べるか、おなかがすいたのか。

 うーん、どうしたらいいのかなぁ。いたっ、でもおいしいなぁ。


【経験値6獲得】

【スキル:“捕食”の効果により経験値9獲得】


 ……僕は自分の食欲に忠実に、エイを食べていた。しかも毒針に刺された。

 ま、大丈夫だろう。


 結果、30分経ってもアナフィラキシーショックは起きなかった。助かった。

 ただ、HPが「28/29」と「27/29」を増減するようになった。

 やっぱり、毒とHP自動回復によるHP変動はプラスマイナス0のようだ。


 このままでは、ジリ貧だな。

 でも、エイの経験値は意外と高いからな。レベルが上がればHPも回復するし、それまで頑張ろう。

 よし、また獲物を見つけた。


【索敵レベルが2にあがった】


 ん!?

 おぉ、索敵レベルが上がった。

 索敵範囲が上がったのか、少し遠くの、いままで感じ取れなかった獲物の位置をわかるようになった。

 これは助かる。


 ちなみに、さっき見つけた獲物の色は薄い赤。

 いたのは、昨日食べた貝だった。糞不味いんだよな。


【ミュルシェル:HP7/7】


 んー、スキルレベルが上がったのを見て思ったんだけど。他のスキルも上げたいな。

 だいたい、スキルっていうのは使えば上がるものだろ?

 スキル鑑定レベルが2になってから、さらに覚えたスキル。


【肺呼吸:肺呼吸ができるようになる】

【土魔法:土魔法を使うことができるようになる】

【鮫肌:触れられると相手にダメージを与えることができる】

【HP自動回復:自然治癒力が上がる】

【忠義:主人への忠義の証】

【毒攻撃:攻撃をしたときに、毒を付与することができる】


 忠義の効果がわからない。もしかして、ノーチェに名前を付けてもらったことにより、ノーチェを主人として認めたってことなのかな?

 でも、ノーチェと結婚したら、僕が主人で、ノーチェが妻、という呼び名になるのに。


 さて、僕が今、使うことでレベルを上げれそうなものは3つ。

 泡・土魔法・毒攻撃だ。


 泡と土魔法は使ったことがあるので、今日は毒攻撃を使ってみよう。

 毒のつらさは、僕にはよくわかるからな。


 ということで、ミュルシェルに体当たり攻撃! 毒攻撃をイメージ!


 ミュルシェルに頭を打ちつけた。


【ミュルシェル:HP7/7】


 ダメージがない。噛みついたら簡単に倒せるけれど、体当たりだとダメージはないなぁ。

 ただし、僕のMPは2減っている。

 毒になったのかな?


 ……1分後、変化があった。


【ミュルシェル:HP6/7】


 おぉ、HPが減っている!

 毒になっているようだ。

 こういう攻撃って、確率で毒になるものだから、運がよかったのかもしれない。

 100%毒になる可能性もあるが。


 なら、あと6分でミュルシェルは死ぬだろうな。

 ミュルシェルはゆっくり動き出した。

 逃げるのか?


 ミュルシェルは3分ほど歩いたところで、海草の根元で止まった。

 あぁ、海草を食べて体力を回復しようとしているのか。

 ふん、そんなもんでHPが回復するなら苦労しないよ。

 実際、ミュルシェルのHPは1も回復していない。

 あと3分したら、こいつは死んでしまう。

 憐れな奴だ。生まれ変わってもこんな貝にはなりたくない。

 弱者をもてあそぶつもりはないが、毒で殺すことがスキルレベルアップの条件かもしれないから、待たせてもらおう。


 ……と思ったが、おかしい。ミュルシェルのHPの変化がない。

 どういうことだ?


 ……もしかして!


 僕はある可能性に気付き、ミュルシェルがさっき食べた海草を一口食べて、ステータスを確認した。

……………………………………

名前:ヴィンデ

種族:ブラックリトルシャーク

レベル:4


HP 28/29

MP 22/22

状態:記憶喪失

スキルポイント6


攻撃 27

防御 22

速度 26

魔力 14

幸運 27

経験値補正+10%


スキル:【捕食:Lv2】【言語理解:Lv1】【叡智:Lv2】【ステータス把握:Lv2】【スキル鑑定:Lv2】【索敵:Lv1】【泡:Lv1】【献身:Lv1】【硬い鱗:Lv1】【鋭い歯:Lv1】【肺呼吸:Lv1】【土魔法:Lv1】【鮫肌:Lv1】【HP自動回復:Lv1】【忠義:Lv1】【毒攻撃:Lv1】


称号:【転生者】【異世界魚】【記憶喪失】【捕食者】【蟹の天敵】【子持ち】【子沢山】【スキル収集家見習い】【魔術師】【出世魚】【称号収集家見習い】【ハートブレイク】【ネームドモンスター】【毒持ち】

……………………………………


 毒が消えていた。

 間違いない、この海草は解毒効果のある海草だったんだ。

 ミュルシェルもこの海草を食べて毒を消したということか。


 ……やるな、ミュルシェル。


 野生の知識というやつか。

 助かったよ。感謝する。


 僕は献身でミュルシェルのHPを全回復させてやり、尾びれを動かして泳いでいった。

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