走竜賊との戦い
久しぶりの戦闘だ。
空を飛ぶ僕に矢が大量に飛んできたが、全部アイテムBOXに収納させてもらう。
さっきはちょっとミスしたが、矢の回収はお手の物だ。
走竜に乗り、布で顔を隠した走竜賊たちは、矢で僕を仕留められないと悟るや、剣を抜いて此方に向かって走ってきた。
おぉ、シミターだ! それとも青竜刀か? ここは元日本人として三日月刀と呼ぶことにしよう。ということで、三日月刀を抜いた走竜賊達がこちらに迫ってきた。
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シャムシール レア:★★
刀身が曲線状に曲がった、片刃の剣。
相手を断ち切るためにこのような形状になった。
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鑑定結果が告げたのは、まさかの第四の答えだった。
ぐっ、シャムシールがあったか。
三つも選択肢を出しておいて、全部ハズレだったとは恥ずかしい。
この恥を払拭すべく――じゃない、相手を牽制をするために、火の息を放った。
ただの火の息――ドラゴンブレスだと威力がありすぎるし、ここは草原だから燃え広がったら大変だ。
火の息で牽制し、ドラゴンブレスを上空へと放つ。
どうだ――弱いんだからどこかに行け!
と思ったが、走竜賊たちは俺を取り囲もうと布陣を変えてきた。
あぁ、もう面倒だ。
全員気絶させて、縛り上げて冒険者ギルドに連れて行ってもらうか。
死なないように頑張れよ!
僕は上空に跳びあがり、
――カウンター技「矢の返却雨」
アイテムBOXから矢を全て返却してやった。
その矢を走竜賊達は盾を使って防ぐが、乗っている竜達までは守れないようだ。
痺れ薬が塗られていることは――しかも、地竜にも効く強力な薬を塗られていることは知っている。
矢に少しでも掠めた走竜はすぐに立っていられなくなり、倒れてしまった。
よし、これで相手の足を奪った。
あとは地竜に戻ろう。
もうノーチェが治療を終えている頃だろう。
そう思って――後方を見たら……僕の愚かさを悔いた。
急いで地竜のところに戻った。
「ヴィンデさん! ヴィンデさんだけでも逃げて下さい!」
『そんなことができるわけないだろ』
そう念を送り、僕は竜車の上に立った。
「お前は黙っていろ」
御者の男はそう言うと、ノーチェの口を猿ぐつわで縛り上げた。
「一緒に来てもらおうか?」
「……まさか、あんたも走竜賊の仲間だったとは。ノーチェには乱暴するなよ」
御者の男が、ノーチェの首に短剣を押し当てていた。そして、僕が喋ったことに、男の顔色が驚きに染まったが、
「喋れる竜とは珍しいが、都合がいい。言っておくが、妙なことをしないことだ。俺達と一緒に来れば殺すことはしない。悪い扱いもしない、約束しよう」
「あんた達の狙いはなんだ? 金なら払う」
「君が金を持っているとは思えないが……我々の求めているのは金ではない」
御者の男の命令で地竜が動き出す。
もう痺れ薬の効果が切れたのだろう。
そして、その走る先は、先ほど僕が足止めをしておいた走竜賊の元だった。
「……我々のアジトに来てもらおう。話はそれからだ。おい!」
「はい」
走竜賊の男が、僕のことを鎖で縛り、ノーチェのことを縄で縛った。
体に巻き付けられた鎖は装備として認識されるのか、アイテムBOXに入れることはできない。
ノーチェの縄も一緒だ。
【スキル:縄抜けを取得するにはスキルポイントが足りません】
ちっ。スキルポイント3だけだとやっぱり無理か。
まぁ、入手できたからって、鎖から抜けられるとは限らないか……低レベルだと麻の縄からのみ抜けられるとかかもしれないが。
「おい、暴れるな! この女がどうなってもいいのか?」
「ノーチェに何かしてみろ、僕ごと全部焼き払うぞ」
「安心しろ、全て終わったら女は解放してやる」
ノーチェは解放してくれる?
ということは、狙いは僕のほうか……しかし、一体、なんで。
僕は善良なベビードラゴンなのに。
見世物小屋に売り払うのか?
いや、金は要らないって言ってたし。
ますます意味がわからない。
竜車は僕達を乗せて平原を進み、夜になったときに、灯りが見えてきた。
あそこが走竜賊の村か。
さて――僕の攻撃方法は限られている。
この状況をどう切り抜け、ノーチェを助けるか。
絶対に、絶対にノーチェだけは助ける。




