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冒険者ギルドのお偉いさん

 お使いと力仕事の依頼を終えた僕達は、特例扱いでサブに、ノーチェのランクをFにしてもらった。

 ちなみに、僕はランクGとして秘密裏に登録してもらった。


 ランクFからは魔物の討伐依頼がある。

 ノーチェにとって初めての実戦だ。


 そのため、僕は慎重に慎重を重ね、彼女にぴったりの任務を見繕った。


   ※※※


 ノーチェの光の矢が、大型の猪――カームボアの脳天に命中し、絶命させた。


「お疲れ様、ノーチェ。だいぶ弓矢の扱いうまくなったね」

「はい。弓の性能に助けられている部分も大きいですけど」


 ノーチェは謙遜してそう言うと、倒れたカームボアの背中を撫で、祈りをささげた。

 今回の依頼は、ただ魔物を殺すことが目的ではない。


 カームボアは、凶暴な外見ではあるが、自ら人を襲うことはない。

 だが、稀に大量発生してしまうため、そうなったら、間引いてやらないとこのあたりの草を全て食べてしまう。


 そういう時は冒険者に討伐依頼が出される。

 今回の魔物討伐依頼のように。


 これがノーチェの初実戦となるわけだ。カームボア達のための間引き作業でもあるのだが、やはり優しい彼女はそう簡単に割り切れるものではないのだろう。

 大人しい魔物だからなおさらだ。


 でも、そのおかげでノーチェのレベルも3上がったし、弓術レベルも上がった。


……………………………………

名前:ノーチェ

種族:エルフ

レベル:11


HP 72/72

MP 61/61

状態:通常

スキルポイント18


攻撃 31

防御 39

速度 29

魔力 41

幸運 30


スキル:【弓術:Lv2】【風魔法:Lv1】【君主:Lv2】【回復魔法:Lv3】


称号:【魔術師】【支配者】【癒し手】【冒険者】

……………………………………


 とりあえず、猪の間引き作業はこの程度でいいだろう。

 依頼にあった12頭は完了した。


「じゃあ、解体作業をするか」


 安全な場所に移動し、短剣を持って解体を始めることにした。

 まずは猪の牙を絶対に取らないといけない。これはギルドの買い取り商品であるとともに、討伐証明のアイテムでもある。

 だが、先に毛皮を剥ぐことにする。

 牙を根元から斬るには顔を大きく傷つけないといけない。そうすると血が飛び散り、毛皮に汚れが付く。

 せっかく、ノーチェが最小限の致命傷だけでとどめをさしてくれたのに、僕がここで汚して毛皮の買い取り価格を下げるのは忍びない。

 血抜きをし、毛皮を剥ぎとったら、内臓や肉を部位ごとに分ける。


 ヒレやロース、モモ肉などはギルドに買い取ってもらう。

 残りの肉は僕が食べる。

 実は、ノーチェが倒した魔物であっても、僕が食べたときに捕食が発動することがわかった。


 おそらく、主君と配下という間柄が関係しているのだろう。


 顔の部分の肉もそぎ取り、残った頭蓋骨、そこから生える牙を根元から切り取る。


 解体には時間がかかるが、こうしたほうが買い取り価格が上がるからな。


「ヴィンデさん、やはり私も手伝った方が……」

「いや、これ、結構力がいるし、それに僕の場合は料理スキルによる補正があるから、肉が美味しくなるんだよ」

「でも、ヴィンデさんが一人ですると時間がかかりますよ」

「それはそうなんだけど……ううん。解体スキルを覚えたら楽になるんだろうけど、あれってスキルポイント5ポイントも必要だしな」


 僕の現在のスキルポイントは3ポイントしかない。生活魔法、光魔法、補助魔法を覚えたからだ。


「あの、私が覚えられませんか? 解体スキル」

「え? いや、覚えられないことはないと思うけど、スキルポイントって一度使ったら無くなっちゃうから、簡単に決めていい物じゃないと思うよ」

「ですが、冒険者を続けるなら、あった方がいいと思うんです」


 ……確かに、解体スキルは冒険者にはあったほうがいいスキルだろう。

 ギルドでは常に解体スキルを持っている人材のパートを募集している(しかも時給が高い)ので、戦闘が嫌になっても仕事に困ることはない。

 まぁ、そうなる頃には僕が人間になって、ノーチェには専業主婦として家庭に入ってもらいたいと思っているんだけど。あぁ、でももちろん、ノーチェの気持ちを一番に考えるけどね。


「わかった。じゃあ、覚えようか。覚え方はわかる?」

「いえ、わかりません」

「えっと、僕はいつも、こんなスキルを覚えたいなぁ、と念じたら叡智スキルによるシステムメッセージの補助があるんだけどさ」


 でも、アロエに命令をしてスキルを覚えさせることができたし、リベルテは自分で勝手にスキルを覚えていた。

 だから可能なはずだ。


 ただ、唯一気がかりなのは、ギルド支部長のサブのスキルポイントだ。あれ、多分一度もスキルポイントを使っていないと思う。

 もしかして、スキルポイントを使ってのスキルの覚え方は一般的ではないのだろうか?


 このあたりも、ギルドランクが上がって資料の閲覧許可が出たら見てみよう。

 とにかく、今はノーチェの解体スキル取得が先だ。


「今回は僕が叡智の代わりをするよ。まず、解体スキルを覚えたい、と念じてみて」

「わかりました」

「すると、こう言われるんだ。スキルポイントを5支払い、解体を取得しますか?」


 ノーチェのステータスを確認しながら叡智さんが出してくれるシステムメッセージを真似して言う。


「はい、取得します」


 ノーチェがそう言った、直後だった。


……………………………………

名前:ノーチェ

種族:エルフ

レベル:11


HP 72/72

MP 61/61

状態:通常

スキルポイント13


攻撃 31

防御 39

速度 29

魔力 41

幸運 30


スキル:【弓術:Lv2】【風魔法:Lv1】【君主:Lv2】【回復魔法:Lv3】【解体:Lv1】


称号:【魔術師】【支配者】【癒し手】【冒険者】

…………………………………… 


 うん、解体スキルを覚えるのに成功していた。


【称号:世界の代弁者を取得した】

【スキル:叡智のレベルが5に上がった】

【スキル:神託を取得した】


 なるほど、叡智のメッセージを代弁したらもらえる称号らしい。

 称号の効果は叡智のレベルアップ。

 叡智のレベルが5に上がり、それに伴い神託を取得した。

 神託はMPを消費することで、使用者がトランス状態に入り、対象のシステムメッセージを口頭で伝えることができるスキルらしい。

 その間は無防備になるうえ、僕の記憶にも残らないというので、使うことはまずないだろう。

 ちなみに、入手条件は叡智レベル5だという。


 今のところ必要のないスキルと称号だが、それでもスキル変換、称号変換のおかげでステータスが3ずつ上がる。


「ヴィンデさん、凄いです! 解体したいと思ったら身体が勝手に動いて――」


 ノーチェは楽々と猪を解体していく。解体スキルの性能はレベル1でも結構高いようだ。


 僕が30分かかった解体を、彼女は僅か5分で終わらせた。

 それから30分かけて、残り9頭の解体を二人で終わらせ、一度“浄化クリーン”で僕とノーチェの身体を洗浄し、グレッス町へと戻った。


 グレッスの冒険者ギルドで、毛皮の査定を行ってもらう。


「ノーチェさん、解体スキルを覚えたんですか?」

「え? わかるんですか?」

「はい、途中から毛皮の品質が格段によくなっています。魔物を解体しているとき、1万回に1回くらいの確率で覚えることがあるそうですが、運がいいですね」


 とペアトリスが「ギルドでは解体スキルを持っている人材をいつでも募集していますから、暇なときは言ってくださいね」と声をかけてくれた。

 その後、毛皮の代金、銀貨5枚、肉の代金、銀貨2枚、そして依頼料は銀貨3枚。計銀貨10枚の収入だ。

 1日で銀貨10枚は、Fランクの冒険者としては破格らしい。


 どうしてノーチェがそんな大金を稼げたのか。理由が三つある。


 一番目は解体スキルによるボーナス査定がある。本来なら毛皮の代金は一頭につき銅貨30枚が相場だが、銅貨50枚まで上がった。


 次に、依頼の難易度だ。

 カームボアは自ら人を襲わないが、襲われたら襲い返す、防衛型の魔物だ。

 光の弓というチートアイテムがあるから楽に倒せたため、弱い魔物のように思えるが、本来は6人パーティーで30分くらい時間をかけて倒す魔物らしい。


 そして、最後に。


「本当に便利ですね、アイテムバッグって。盗まれないようにしてくださいね」

「はい、ありがとうございます」


 ノーチェは普通の鞄の中に、銀貨を入れ、そして中に入った銀貨を僕がアイテムBOXに収納した。


 カームボアは、とても大きな魔物だ。毛皮だけでも一頭につき十キロの重さがある。

 そんな重い魔物、十頭も運ぶとなるとかなり骨が折れる。


 アイテムBOXがあれば楽に運べるが、それだと取り出す時にばれてしまう。


 そこで、僕達は、ただの鞄をアイテムバッグとして偽ることにした。アイテムバッグとは、北にあるラビスシティーで発売されたとても高い鞄の名前で、鞄の中に数百キロ、数千キロのアイテムを保存し、その重さを感じさせることなく運ぶことができるという。もちろん、重量制限はあるそうだが。


 そのアイテムの噂はこの町まで伝わっていたので、ただの鞄を購入し、ノーチェが鞄の中に手を入れると、彼女が出そうとしているアイテムをその鞄の中に出現させて取り出す、という偽アイテムバッグ作戦を思いついた。


「それと、ノーチェさん、支部長が用があるそうです。ブルードラゴンの査定が終わったそうです。これから時間はございますでしょうか?」

「はい……あの、ペアトリスさん」

「どうしました?」

「いえ、何かギルドの雰囲気がいつもと違うようなんですけれど」


 ノーチェが訊ねる。確かに、このギルドは、どことなくアットホームな感じで、和気あいあいとしていた感じなんだが、今日は全員やる気に満ちているというか、かしこまっている感じだ。


「あぁ、実はお偉いさんが用事で来ているんですよ。今は支部長が相手をしていますが、今日はこの調子でしょうね」

「そうなんですか……サブさんが相手? なら私が今行ったら迷惑では?」

「いえ、実はその用事というのがブルードラゴンに関することでして」


 なるほど、僕達も関係あるってことか。

 堅苦しいのは嫌なんだけどな。

 でも、行かないわけにはいかないか。


「では、こちらにどうぞ」


 僕達は奥の応接間に案内された。

 そして、そこにいたのは――黒く長い髪の30歳くらいの男と、その背の上に乗る7、8歳くらいの赤いショートヘアの女の子だった。

 これがギルドのお偉いさんか。

 そっと、ステータス把握スキルを使って、その男と女の子を見てみる。


【ユーリ:HP3920/3920】

【ルル:HP620/620】


 ……とんでもない化け物がそこにいた。

 てか、女の子ですら、HPがサブの倍はあるんだが。

この二人の正体は!?

次回、とりあえず男の職業はわかります。

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