ギルド支部長の観察眼
今回はかなり短めです。
なんで、この爺さん、僕が人間の言葉を理解してるって知っているんだ?
「……え? 何を言ってるんですか、支部長。ヴィンデさんはベビードラゴンですよ、人間の言葉がわかるわけないじゃないですか」
ペアトリスが、「とうとうぼけたのか?」という感じでサブさんを少し憐れんだ眼で見た。
「ペアトリスは黙っとれ……ヴィンデ君、私のステータスを見せよう」
【ゴルサーブのステータス閲覧許可が出ました】
……閲覧許可が出された。
てか、ステータス閲覧許可について知ってるってことは、もしかして……
……………………………………
名前:ゴルサーブ
種族:ヒューム
レベル:52
HP 312/312
MP 52/52
状態:老化(小)
スキルポイント102
攻撃 392
防御 551
速度 291
魔力 24
幸運 40
スキル:【ステータス把握:Lv7】【斧攻撃:Lv6】【殿:Lv3】【鉄壁:Lv3】
称号:【斧の達人】【冒険者】【ゴブリンの天敵】【コボルトの天敵】【蜂の天敵】【助っ人枠】【上に立つ者】
……………………………………
ゴルサーブって名前なのか。だからサブさんか。
あれ? 蜂の天敵を持っているのに毒針のスキルがない。
人間だと毒針は使えないのかも。
それと、殿がある、殿。効果はわからないが、なんか偉そうなスキルだ……ってそうじゃない。
ステータス把握Lv7。
これだ、これで僕のスキルを見抜いたのか。
『サブさん、僕のことについて話すから、できれば人払いをしてほしい』
僕が念話を送ると、サブは少し驚いた表情になったが、すぐに、頷いた。
「ペアトリス、ここはワシがやっておくから、受付に戻れ。あと、10時までは訓練場の使用は禁止だ」
「はい、わかりました。でも、ヴィンデさんに変なことしたらダメですよ」
そう言って、ペアトリスは僕にウィンクをすると裏口からギルドの中に入って行った。
それを確認して、僕は口を開く。
「ノーチェ、ごめん。支部長に僕のことだいぶバレた……ステータスレベル7ってどこまでわかるんだ?」
「ステータスと、スキルを30個までじゃな。といっても、スキルは多くて10個がやっと……普通の人間は1個持っていたらいいほうだ。30個以上のスキルを持っている者はそうはおらん」
それはスキルポイントを使ってないだけだろ。
でも、称号が見られていないのは助かった。
転生者なんて見られたら厄介なことになる。
「それで、ブルードラゴンはもしかしたら、アイテムBOXの中ではないのかね? もしそうなら出してほしいんだが」
「……御明察。ここに出していいか?」
「うむ、ワシの部下に持ってこさせたことにしておこう。それで、誰も何も言うまい」
いや、かなり無理があるだろうとは思うが。
ブルードラゴンは食用にはならないからあっても困るだけだし、言われた通りにしよう。
アイテムBOXからブルードラゴンを舞台の上に出す。
「おぉ、これは立派な……じゃが、ちと臭うのぉ」
「これでも臭いはマシな方だ。なぁ、支部長さん」
「ワシのことはサブちゃんで構わん。なんじゃ、ヴィンデ君」
「じゃあ、サブさんでいいか? 僕のスキルのことはみんなに黙っておいてほしい。それと、これはできればでいいんだが、僕を正式に冒険者として登録してくれないか?」
「冒険者の称号が欲しいのか。うむ、よいじゃろ。むろん、君については部外秘としよう。孫娘にも話さんよ」
怪我の功名だな、これでHPが一気に4も増えるし、称号も87個目、残り13個でスキル変換のレベルが2に上がる。
「支部長さん、孫娘さんがいたんですね」
「ワシのことはサブでいい。というか、聞いてないのか? 主らも知っておるじゃろうに」
そして、サブは語った。
まぁ、語らなくても、こういう時って、大体孫娘はあの人なんだよな。
「ワシの孫はペアトリスじゃ」
ノーチェは大層驚いていたが、僕にとっては予想通りすぎた。
それより、今回は結果的にOKだったけど、やっぱり覚えないといけないな。
ステータスを偽装する能力を。
 




